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8 果樹園のスタート

農園を開拓して2週間ほどが経った。3つのエリアに順番に野菜を栽培、収穫し、種を回収する。そしてスマートウォッチの鑑定アプリでより品質の良い種を選別して、再び栽培、収穫、種の回収を繰り返す。すると収穫した野菜は味もよく、収穫数も増えて行った。

午前中のルーティンを無事に終えて、今はランチタイムだ。本日のメニューは、クリームシチューとバターロール。それから農園で取れた野菜を使った、温野菜サラダだ。食器も憧れだったアカシアの木製食器とカトラリー。ちょっとした贅沢気分を味わっている。


「う~ん…」

「紗英様、どうしたのですか?」

「農園で自家栽培した野菜はとっても新鮮でおいしいんだけど…」

「だけど…?」

「たまには甘い果物も食べたいなーって思って…」

「それでは東側の土地を開拓して、果樹園を作られたらどうですか?」

「果樹園か…」

「はい!ここでは樹木も2週間ほどで育ち実を付けます。収穫時期の間は土地に栄養があれば、再度収穫も十分可能ですし。それに収穫時期がずれれば自然と樹木は休眠期に入り、次の実りの時期まで栄養をためることが出来ますよ」

「いいわね!」

「苗木はネットショップで購入可能ですよ」


ソラに言われて、ネットショップのアイコンをタップする。カテゴリーを苗木(果物)で検索すると、今購入できるリストと果物の説明が書いてあった。オーソドックスなりんごやみかんから、プルーンやラフランスなどの果樹もリストに載っていた。


「意外と種類が多いのね」

「今は地球で栽培されていて尚且つこの地でも順応可能なものが載っていますが、この世界の固定種の果樹を見つけて育ててみるのもいいかもしれませんね」

「それも面白いかもね!時間はたっぷりあるもの」

「ええ」

「それじゃ今日は、東側のエリアを開拓しようかな」


そう言って立ち上がり、食器を持ってキッチンに向かう。木製食器は基本的には付け置きが出来ないため、すぐに洗うのがいいとされている。付け置きすると、水分が食器の中に侵食しカビが生えやすくなる。さらに、食洗器でもNGである。急激な温度変化によって、ひび割れや変形の原因になるからだ。けれど、私が使っているこの食器は特別性である。この木製食器にはすべて汚れ防止の特殊加工が施されており、付け置きも食洗器も対応出来るのだ。

私は食器を軽くお湯で流して大部分の汚れを流したら、さっと洗剤で洗って食器乾燥機の中に入れる。今の季節は温かいので電源を入れずに、自然乾燥で対応だ。

そのままいつも持ち歩いているトートバッグに水筒とおやつ、タオルを入れて東の未開拓の孤島を目指す。


「まずは農園の領地を広げたように、橋を架けましょう」

「うん」


最初に領地を広げた時と同じように丸太の橋を東側のエリアに架ける。

すると、領地を開拓したときと同じようにメッセージを知らせる着信が聞こえる。


《第3領地開拓・おめでとうございます!

新たな領地の開拓、おめでとうございます。

領地拡大のお祝い・30万円を送金致します。

昇給・おめでとうございます。

基本給が40万円から50万円にベースアップしました》


ネットショップの残高を確認すると、お祝金の¥300000が振り込まれていた。

まだ一度もお給料をもらっていないのに、すでに2回のベースアップ…。苦笑しながらスマートウォッチから目をはなし、インベントリからオノを取り出す。

持ってきたトートバッグは橋の傍に置き、木の伐採を始める。最初は1本を伐採するのに5分くらい掛かっていたが、今では3分くらいで伐採できるようになった。1時間ほどで20本くらい伐採が出来る。それでもこのエリアを伐採し終えるのに午後の時間をすべて費やしてしまった。150本以上の木々を、一人で伐採した。

木々がなくって視界が開けると、この孤島は自宅の孤島の5倍くらいの広さがあった。地図のアプリを確認すると、長さ400m奥行き100mくらいの広さだった。冬の時の収穫作業を考えて南側を冬の果樹、北側を春の果樹、中央を春、夏の果樹にして4つ区分けする。

翌日、午前中を草刈りに費やし午後からネットショップで購入した苗木を植えていく。りんご、オレンジ、びわ、うめ、もも、プルーン、さくらんぼ、ブルーベリー、ぶどう、みかん。とりあえず10種類3本ずつ、計30本を植える。東の奥側から植えて行ったので、西側の橋を架けた場所にはまだまだ場所に余裕がある。だが、しっかり育つかどうかまだわからないので、場所はまだ空けたままにしておく。


「一週間後にまた見に来ようかな」

「そうですね。実がなるまで2週間ほどかかります。1週間後にはずいぶん大きく育っているはずです」

「うん、そうだね」





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