7 農園のスタート
新たに開拓した場所を農園とし、野菜の栽培をスタートした。
拠点の自宅を置いたエリアの、約3倍ほどの広さだ。そのエリアを3つに分けて根菜類、葉菜類、果菜類に分けた。ソラの説明によると、収穫までの日数は葉菜類で1日、根菜類で3日、果菜類で5日ほどかかるらしい。もちろん例外はあるが…。だから西側に根菜類、中央に葉菜類、東側に果菜類と分類訳をする。
ちなみに根菜類は大根や人参、じゃがいもやサツマイモといった野菜。葉菜類はキャベツやレタス、玉ねぎやブロッコリーといった野菜。果菜類はトマトやきゅうり、なすやかぼちゃといった野菜である。
また、大豆や小豆、そら豆などの豆類は7日くらい。米や麦などは10日くらいかかるらしいが、これは今のところ栽培する予定はない。
とりあえず今回は根菜類エリアにじゃがいもと人参、大根。葉菜類エリアに玉ねぎとキャベツ、レタス。果菜類エリアにトマトときゅうり、かぼちゃを植えてみた。
午前中に農園をクワで耕し、午後に苗や種をまいて水をまく。
「水源が自宅と周りを流れる川にしかないのがちょっとネックよね。まあ、重さもほとんど感じないし、水量もこの規模だったら十分だけどね」
「そうですね…。今の規模であれば特に問題はありませんが、農園を拡大していくのであれば水場の建築を考えた方がいいでしょうね」
「水場って作れるの?」
「クラフトで建築可能ですが、材料として石材が必要です」
「石材?」
「はい。初日に渡したハンマーで採掘すれば、石材のもととなる石や鉄などの鉱物が手に入りますよ」
「そうなんだ。で、その発掘場所はここから近いの?」
「いえ、紗英様が管理するエリア外の場所にあります」
「歩いて行ける距離?」
「歩いて行ける距離ではありますが、道中に魔物が出るので危険です」
「魔物?」
「はい。この世界には獣と魔物が存在します」
「獣と魔物…」
「獣は紗英様がいた地球でも存在した犬猫や熊、牛、豚と言った生き物ですね。家畜にすることが出来ます」
「うんうん」
「ですが魔物は家畜にすることは出来ませんし、我々に牙をむいて襲ってきます」
「それは私たち人間が魔物にとってエサという認識なの?」
「いまだすべてが解明されているわけではありませんが、おそらくは襲う対象の何かを目的としているのでしょう。もちろん捕食されますので、襲われたらひとたまりもありません」
「なるほどねー。っていうかここ、やっぱ地球じゃないんだね」
「ええ。しっかりと説明が出来ず申し訳ありません。ここは、まだ解明されていない時間枠の世界なのです。よって紗英様のように管理者を雇い、調査をしています」
「でも、一般人に調査させるよりも専門家に調査させた方が効率的じゃないの?」
「ここに来ることが出来る人材が、限られているのです。限定的なある条件を満たしたものだけが、この世界に移転できます」
「条件?」
「その条件も未だ解明できておりません」
「そうなの?」
「分かっていることは、そのスマートウォッチを使いこなせる人間ということだけです」
「え…、でも私はここに来てからこのスマートウォッチを使っているのよ」
「面接のときに、そのスマートウォッチが紗英様を持ち主として認識したのです。ですから、紗英様の管理者に選ばれました」
「でも私、魔物と戦ったりとか、この世界の調査なんて出来ないと思うけど…」
「それは大丈夫です。この世界に滞在し、紗英様がこの地で生活してくださるだけでいいのです」
「そうなの?」
「はい。紗英様がなるべく不便な生活を送ることのないように、自動学習型AIのボクがサポーターとして一緒にいるのですから」
「そうなんだ。じゃあ、これからもよろしくね」
「はい!」
そう言って笑いあった後、自宅のログハウスに戻る。
いつものように夕食を作り、洗濯をして、入浴を済ませる。テレビはないけれど、ソラとおしゃべりをしながら夕食を済ませ、明日の予定を立てる。
現代で働いていた頃では考えられないくらい、穏やかな日々を送っている。智也のことも由香のことも、そして母親のことも考えなくて済む今の環境がすごくありがたかった。




