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28 冬のスタート

午前中に約束した通り、午後からは北東、南東、北西、北東の4エリアの伐採に行くことになった。途中家畜エリアで潰したこっこの回収、農園エリアで作物の回収とコンテナの補充を行う。その後、北西エリアの木々の伐採に取り掛かる。


「このオノ、すっごい楽に伐採できるようになったよね!」

「最初に比べれば、ものすごい進化速度ですね…」


ロトは他のエリアの見回りに、ヴァイスはこの辺りの野生の植物を確認している。

私はソラと一緒にまずは木の伐採に取り掛かる。はじめの頃は何度も木を叩いて伐採していたのだが、今では2度ほど木に根元の当てるだけで木が倒れて自動収納される。根っこも上を一度叩けば回収される。1時間もすれば広大なこのエリアもすっかり丸裸である。次にスキで地面をなぞれば、生えている植物の一斉回収と切株でぼこぼこだったはずの地面がなだらかになる。


「原木もそうだけど、薬草や雑草も増えたよね?」

「まあ、暖炉の薪位にしか使用することがないですからね」

「だよねー。それに変な薬草もたまに収納されてるし」

「変な薬草ですか?」

「うん。下級ポーションってさ、薬草2本で出来るじゃない?」

「そうですね」

「で、中級ポーションは薬草と青草で出来る」

「はい」

「最近、シソの葉みたいな【赤草】ってのが自動収納されるんだよね」

「なんと!それは上級ポーションの材料ですよ?」

「え、そうなの?」

「ええ、そうです!販売価格500000Gの中々出回らないポーションです!」

「マジか?」

「ええ、そうですよ!せっかくですし、帰ったらクラフトで作ってみましょう!」

「うーん。でも、使う予定ないよ?」

「数があるなら売却して、もうもうを購入したらいいじゃないですか!」

「あ!それいいかも。上級ポーション1本で、もうもう1頭が買える!」

「そうですよ!もうもうが来たら新鮮なミルクやバター、チーズが!」

「念願の乳製品!…あ…、でも冬の間は環境が過酷だから、春に購入しようかな…」


実際に冬を迎えてから家畜たちの元気があまりないし、こっこに至っては卵の収穫量がいつもより少ない。

やはり冬の寒さはこのエリアでは緩和されているとはいえ、家畜たちにも厳しいものなのだろう…。


「ま、ポーションは帰ってから考えるとして、とりあえずこのエリアの作業は終了だね」

「あ、そうですね…」


結局3時間くらいで作業は終了。スキの幅がもう少し大きければもっと作業効率が上がったかもしれないが、こればかりは仕方ない。後々ソラと一緒に改良しようと思う。


「君、同族の匂いがする…」

「え?」


隣の北東のエリアに居たヴァイスが、こちらに来て呟く。目線は南西のエリアの先の街道の方を見ている。嗅覚の違いがありすぎて、私には何も匂わないけれどヴァイスにははっきりと分かるのだろう。


「おーい!」


しばらく街道につつく石畳の通路を眺めていると、ロトがすごい勢いでこちらに向かって走ってきた。


「どうしたの?ロト。そんなに慌てて」

「ねぇ、お願い!」

「え?」

「シュバルツがっ…!」


ロトの言葉を最後まで聞かず、すごい勢いでヴァイスが走り去った。


「え、何?」

「とにかく、一緒に来て!」

「っうお!」


急に手を引かれて走り出す。だがコンパスの差もあって、ロトの走るスピードについて行けない私は足が縺れてしまう。


「ごめん、サエ!」

「っひえ!」


ロトは私を横抱きに抱え、走るスピードを加速する。口を開けると舌を噛みそうになるし、走っているせいで揺れて不安定になる恐怖で必死にロトにしがみつく。ヴァイスもロトも華奢な体つきに見えて、筋肉はついているようで体幹がしっかりしている。思わずロトの首に両手をまわしてしがみ付くと、体の揺れが軽減された。しばらくすると真っ黒い大きな塊が見えて、その横にヴァイスがしゃがんでいる。


「ヴァイス!シュバルツは?」

「息はあるが、かなり衰弱している。この寒さのせいもあるが、かなり痩せているな…。おそらく人型はおろか獣型でも消耗が激しいだろう…」


よく見ると黒い塊は大きな犬のようで、見た目はバカでかいシベリアンハスキーに見える。


「シベリアンハスキーのワンちゃん…?」

「いや、こいつは俺たちの仲間のシュバルツだ」

「じゃあ、幻狼族ってこと?っていうか、呼吸も浅いんだけど大丈夫なの?」

「別れてから3ヶ月ほど経つ。あれからまともに食べていないのなら、あまりいい状態とは言えない…」

「とりあえず、ログハウスに連れて行きましょう?」

「いいのか…?」


ヴァイスが困ったような、そして泣きそうな表情をしてこちらを見る。


「私、大型犬好きなのよ。それに、このままじゃ死んじゃうわよ。早くログハウスに運んで!」

「っああ!」


わたしの声にヴァイスが反応して、シベリアンハスキーを抱えて走り出した。一度地面におろされた私は再びロトに横抱きにされてログハウスまで運ばれる。恐怖のジェットコースター再来である。



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