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強い意志

 元親の動きを探り、少しずつその真意に迫っているものの、まだ完全にその全貌は見えていなかった。商人から得た情報をもとに、俺たちはさらに細かい調査を始め、元親の周囲を密かに監視し続けていた。しかし、今の段階では何も具体的な証拠を得ることができず、ただ時間だけが無駄に過ぎていくような気がしていた。


「このままじゃいけない…。」慎之助がぼやく。


「わかっている。」俺は答えながら、改めて周囲の状況を確認する。元親の動きは慎重そのもので、目立たないようにしているが、どうしてもその動きが怪しく感じられる。彼の目的が何なのか、知っている者は少ないだろうが、確実に何か大きな力を手に入れようとしているのは間違いない。


「どうする?」慎之助が質問を投げかける。


「もう少し待つか、それとも動きがあった時に素早く反応するか。」俺は考え込む。どちらにしても、慎重に進めなければならないことに変わりはなかった。


 だが、突然、慎之助が背後を振り返り、鋭く息を呑む。「あれ…、何だ?」


 俺もその視線を追った。闇の中からひょっこり現れたのは、元親の部下らしき武士たちだった。どうやら、元親の手勢が近くで動いているようだ。俺たちは気づかれないように、すぐに身を隠す。


「どうする?」慎之助が低く聞く。


「近づいてみるか。」俺は静かに答え、慎之助とともにその武士たちを追い始める。


 彼らは何も気づいていないようで、足早に歩きながら目的地へ向かっている様子だった。俺たちはできるだけ音を立てずに追い、元親の手勢がどこへ向かっているのか、探ることにした。


 しばらくして、彼らは集会所のような場所に到着した。そこは、商人たちの集まる場所ではなく、兵士たちが集結している場所だった。どうやら、何か重要な会議が開かれているらしい。俺たちはその近くに身をひそめ、耳を澄ませて話の内容を聞き取ろうとした。


「元親が、ついに動き出すらしいな。」一人の武士が言った。


「そうだな。四国統一に向けての一歩だ。これで他の勢力にも一気に圧力をかけられるだろう。」別の武士が応じる。


「でも、問題はあの外部勢力との接触だ。あの者たち、どうやらただの商人じゃないらしいぞ。」


「うーん、だが元親の指示だ。信じるしかない。」別の武士がそう言いながら、少し不安そうな表情を浮かべた。


 商人の話を聞いて、俺の中で確信が深まった。元親が目指しているのは、四国の統一にとどまらず、もっと広範囲での支配を企てているということだ。外部勢力との接触を強化し、何か「力」を手に入れようとしている。その「力」が何なのか、未だに見当がつかないが、それを知るためにはもっと情報を集め、元親の動きを追い続けるしかない。


「慎之助、今後の動きについてだが…。」俺は商人の家を後にしながら慎之助に話しかけた。


 慎之助は歩きながら静かに頷く。「元親が手に入れようとしているもの、それが何なのか、俺も気になる。だが、それが分かるまで簡単に手を出すべきじゃない。」


「そうだな。だが、動かなければ何も分からない。まずは外部勢力との接触をつかむべきだ。」俺は歩を早めながら言った。


 慎之助は考え込むように黙ったままだ。元親の計画に巻き込まれないようにするためには、まず情報を集める必要がある。そして、慎之助の言う通り、無闇に動くことがリスクになりかねないことも理解していた。


「どうやって接触を探る?」慎之助がようやく口を開いた。


「商人の情報をもとに動くしかない。元親の手下に近づく方法を考えるべきだ。直接接触するのは危険だが、何らかの方法で彼らの動きを探り、情報を引き出さなければならない。」俺はその場で立ち止まり、慎之助に向き直った。


 慎之助も立ち止まり、俺の顔を真剣に見つめる。「それができれば一番いいが、俺たち二人でやれることには限界がある。周囲にも気をつけろよ。」


 俺は短く頷く。確かに、慎之助の言う通りだ。今の俺たちだけでは限られた情報しか得られない。しかし、誰かを巻き込んだり、無駄に動き回ることで、元親に気づかれてしまうかもしれない。それは絶対に避けなければならない。


「とりあえず、明日は元親の部下がよく集まる場所に行ってみる。」俺は再び歩き出し、慎之助もそれに従う。


 翌日、俺たちは慎重に元親の部下が集まると言われる集会場に足を運んだ。そこは商業地帯の片隅に位置しており、人々が集まり、情報交換や取引が行われている場所だった。俺たちは他の商人や村人に紛れ込み、少しずつ元親に関わる者たちと接触する機会を伺う。


「元親の周りには、思った以上に多くの人物がいるな。」慎之助が低い声で言った。


「そうだ。だが、この中に情報を持っている者が必ずいるはずだ。」俺は周囲を見渡しながら言った。


 数時間後、ようやく一人の男が目に留まった。彼は、元親の部下として知られる人物で、情報通として評判だった。名前は「坂田」というらしい。俺は慎之助に目で合図し、二人でその男に近づいた。


「坂田さん、少しお話ができませんか?」慎之助が声をかけると、坂田は警戒の色を見せたものの、すぐに俺たちを見つめ直し、少しだけ態度を緩めた。


「お前ら、何だ?こんな場所で。」坂田は冷たく言ったが、俺たちの目をじっと見つめている。


「ただの商人さ。情報を探している。」俺が答えると、坂田は少し黙り込み、状況を見極めるように周囲を見渡す。


「お前ら、元親のことを知りたいのか?」坂田が低い声で言った。


「元親の計画について、詳しく知りたくてね。」慎之助が答える。


 坂田は一瞬驚いた様子を見せたが、すぐに顔を引き締めて言った。「元親の計画を知ることは簡単じゃない。それに、俺はお前らに情報を渡すつもりはない。だが、話を聞いてやることはできる。」


「それで十分だ。」俺は静かに答えた。


 坂田はため息をつき、周囲の状況を再度確認した後、静かに話し始めた。「元親が目指しているのは、ただの統一じゃない。彼が手に入れようとしているのは、四国の支配を越えて、東国までの支配権だ。しかし、そのためには、外部勢力と手を組む必要がある。」


「外部勢力…?」慎之助が繰り返す。


 坂田は頷いた。「そうだ。その勢力がどこかは分からないが、元親は必ずや、その力を手に入れようとしている。だが、元親がどんな力を求めているのか、それを知っている者はほとんどいない。」


 その言葉を聞いて、俺の中で一つの疑問が浮かんだ。元親の目指す力とは一体何なのか。そして、その力を手に入れることで、どんな世界が待っているのか。坂田が言うように、それは四国の支配を超えて、東国までの影響力を持つ力だという。しかし、その詳細を知るためには、まだ足りない情報が多すぎる。


「それで、どうすればその情報を手に入れられる?」俺は坂田に尋ねた。


 坂田はしばらく黙ってから言った。「それは、元親の側近に近づくしかない。だが、その道は険しい。元親の信頼を得なければ、近づくことすらできない。」


 俺は一度、深く考え込む。元親の側近に近づくことが、俺たちの次の手になるのだろう。しかし、坂田の言う通り、その道は簡単ではない。それに、元親が求める「力」を手に入れるために、どんな犠牲を払うことになるのか、想像もつかない。


「わかった。お前の話、よく聞いた。」俺は坂田に向かって一歩踏み出す。


 坂田は冷ややかな目で俺を見つめながら、「忘れるな。お前らも危険な道を歩んでいる。」と言い残して、その場を去って行った。


 その後、俺と慎之助は再び集会場を後にし、次の行動を決めるために頭を冷やしながら歩き続けた。元親が求める「力」、それが一体何なのか。


 その会話を聞いて、俺は心の中で確信を得た。元親が求めている「力」は、どうやら外部勢力と結びついている。外部勢力との接触が進んでいることは確かだ。その力を手に入れるために、元親がどんな手段を取るのか、ますます興味が湧いた。


 だが、その時、突然、場所の外から大きな音が響いた。


「何だ?」慎之助が目を丸くして振り向く。


 その音は、集会所の中に響くものではなく、外から聞こえたものだった。俺たちはすぐに顔を見合わせ、何が起こったのかを確認するために、その方向に歩き始めた。


「急げ。」俺が低く言うと、慎之助も黙ってうなずき、足音を速めた。


 集会所を抜け出すと、道の向こうに何かが見えた。それは、一団の兵士たちが戦闘を繰り広げている光景だった。元親の手勢と思われる兵士たちと、他の勢力の兵士が激しく交戦しているようだ。


「これ、戦闘だ。」慎之助が呟く。


「そうだな。」俺は素早く状況を確認し、戦闘に巻き込まれないように周囲の動きを観察する。


 戦闘は一気に激しさを増していた。元親の手勢が劣勢に立たされているわけではなく、むしろ優位に立っているようだが、状況は一刻一刻と変わっている。兵士たちの間を縫って、俺は慎之助とともに戦闘の間隙を突こうと動く。


 だが、そのとき、一人の兵士が俺たちに気づいた。


「お前ら、何者だ?」その兵士は刀を抜きながら、俺たちに迫ってきた。


「逃げろ。」慎之助が俺に言うと、俺は瞬時に反応して後ろに飛び退く。


 その兵士は、俺たちが逃げようとする前に刀を振りかぶった。俺はすぐに腰の刀を抜き、兵士の振りかぶった刀を受け止める。その衝撃で、刃が鈍く響き、俺の腕が震えたが、何とか受け流すことができた。


「くそ…。」兵士はさらに強く振り下ろしてきたが、俺はそれを避け、すぐに反撃の体勢に入る。慎之助もすぐにその兵士に接近し、横から攻撃を加えようとする。


「今だ!」俺が叫ぶと、慎之助は素早く刀を振り、兵士の脇腹に突き刺した。兵士はそのまま膝をつき、刀を手放した。


「危なかったな。」俺は息をついて、慎之助に言った。


 慎之助はあっさりと答える。「俺たちがここで倒されるわけにはいかない。」


 その後、すぐに戦闘は収束したが、俺たちにとっては、この戦闘が思った以上に重要だった。元親の手勢が外部勢力と関わっているのは確かだが、それを知るためには、さらに一歩踏み込んでいかなければならない。戦闘を避けて生き残ることができたが、この先、どれだけの危険が待ち受けているのか、全く予測がつかない。


 だが、俺は引き下がるつもりはなかった。元親が目指している「力」について、もっと深く掴んでいく必要がある。それが何であれ、俺たちの未来を左右するものに違いないのだ。

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