強力な協力者
俺たちが倉庫から引き上げてから数日が経ち、まだ余韻が残る中で次の手を考えていた。慎之助と共に調べた情報を元に、元親が関わっている計画の全貌を掴むためには、まず彼が何を求め、どこに向かっているのかを見極めなければならない。しかし、元親の計画は容易に解明できるものではない。事が大きすぎるのだ。
「元親の動きが完全に掴めていない。あれだけの規模で動いてるなら、動きが大きくなる前に手を打たないといけない。」俺は自分に言い聞かせるように呟いた。
慎之助が隣で黙って頷く。俺たちの進むべき道はまだ見えないが、今は少しずつ進むしかない。それだけは確かだ。
「どうする?」慎之助が問いかけてきた。
俺は一度、周囲を見渡す。村の外れにある小さな茶屋に、誰かがいる気配を感じ取った。以前、情報を得たことのある商人がいる場所だ。
「茶屋に行こう。少し情報を探る。」俺は立ち上がり、慎之助に歩み寄った。
茶屋はこぢんまりとした場所で、店主も常連の客も比較的静かに過ごしていた。そんな中で俺たちは、さりげなく店内を見回しながら座った。茶を注文すると、店主がすぐに持ってきてくれる。
「この辺りの様子はどうだ?」俺は慎之助に低い声で聞く。
「特に変わったことはない。でも、気になることが一つある。」慎之助が言った。
「何だ?」俺は興味を引かれた。
「元親の近くにいる一部の者が、こっそり動き始めているらしい。」慎之助は続けた。「どうやら、外部との接触を隠して行動しているようだ。奴らが何か大きな取引をしようとしているのは間違いない。」
「その情報を元に、何か進展があると思っているのか?」俺は聞き返した。
慎之助は一瞬黙ってから言った。「あいつらの動きを追い続けるべきだ。少なくとも、元親が関与している大きな計画の詳細が明らかになるだろう。」
俺は頷きながら、慎之助の言葉に考え込む。元親の計画に近づくためには、慎之助の直感を信じてこの情報を追い続ける必要がありそうだ。しかし、俺たちだけでは限界があることも分かっている。だが、誰かに頼るわけにはいかない。全ては俺の手で進めなければならない。
「慎之助、お前が言う通り、動きを追ってみよう。だが、確実に情報を掴むために、一度あの商人のところに行ってみるか。」俺は決断した。
「分かった。」慎之助が静かに答え、しばらくの間黙って考え込む様子だった。
その後、俺たちは茶屋を後にし、商人がいる場所に向かうことになった。商人は、元親に関わる情報をある程度持っていると言われている。彼に接触することで、何か新たな手がかりが得られるかもしれない。俺たちはしばらく歩き続け、商人がよく利用する市場の裏手にある小さな家に辿り着いた。
家の前には誰もいないようだった。だが、少しだけ気配を感じ取った。俺は慎之助に小さく合図を送り、二人で静かに家の中に入った。
商人の家は、外観に反して意外にも整然としていた。部屋の奥からは、商人の低い声が聞こえてきた。どうやら、誰かと話しているようだ。俺たちは静かにその声に耳を傾ける。
「取引の準備はできている。」商人の声が低く響いた。「元親様の側からも話が来ている。だが、これ以上の取引は慎重に進めなければならない。」
「慎重に?」もう一人の声が返ってきた。「元親の命令だ。慎重に進めろということだが、それが何を意味するかは分かっているのか?」
「分かっている。だが、元親の本当の意図が見えない以上、これ以上のリスクは冒せない。」商人は答える。
「リスク?」その声は一層冷徹に響いた。「だが、元親が動けば、全てが決まる。お前がいくらリスクを考えたところで、もう後戻りはできない。」
その言葉を聞いた瞬間、俺の体が一瞬で硬直した。元親の本当の意図が見えない?そして、後戻りができない?これまでの俺の予想を上回る事態が動き出しているようだ。商人が何を言っているのか、その全容を理解することは今後の俺たちの行動に大きな影響を与えるだろう。
「慎之助、今だ。」俺は囁き、慎之助と共に音を立てずに商人の部屋に近づく。
だが、すぐに商人の話声が途切れ、誰かが部屋の外を確認しに来た気配を感じ取った。俺たちは急いで壁の影に隠れた。息を潜め、少しの間、緊張感が漂う。
「誰かいるのか?」商人がドアを開け、こちらの様子を伺い始めた。
その瞬間、慎之助が静かに俺に目を向け、さりげなく手を挙げて示した。商人の視線が一瞬逸れたとき、俺たちは静かに部屋に戻り、話の続きを聞き始めた。
「商人…お前、何を言っているんだ?」声を低くして商人に問いかける。
商人は一瞬怯み、次第に沈黙する。しかし、その沈黙を破るように、慎之助が手早く口を塞ぎ、彼に一歩近づいた。
「元親のことをもっと知っているはずだ。話せ。」慎之助が冷徹な目で商人に迫った。
商人は恐れおののきながら、ついに言葉を漏らし始める。
「元親が動いているのは、ただの四国統一にとどまらない。彼が本当に求めているのは、この四国を越えて、さらに広がる力だ。だが、どんな力かは分からない。ただ、外部勢力との接触を強化し、さらなる支配の基盤を築くつもりだ。」
その言葉を聞いた瞬間、俺の胸に一つの決意が芽生えた。元親が求めているのは、ただの支配ではない。それは、何か計り知れない力を求めている証拠だ。
「どんな力だ?」俺は商人に問いただした。
「それは…分からない。だが、元親はそれを手に入れれば、四国だけではなく、他の大国にも影響を与えることができると信じている。」
その言葉を最後に、商人はもう何も言わなかった。俺は慎之助に目を向け、次の一手を考え始める。元親の動きがますます不明瞭になり、俺たちが次に取るべき道が見えてきた。