死を超越せしもの
信長との対話が終わり、俺の心は深い闇に包まれた。その力、無限に広がる支配力は、確かに無敵を誇った。しかし、その力を得たことによって、俺は何か大切なものを失ったような気がしてならなかった。信長の言葉が頭から離れない。
「代償」
その言葉が、どこかで胸に引っかかっている。力を持つ者に代償が伴うのは当然だが、その代償が何であるかをまだ俺は知っていなかった。だが、それでも俺は歩みを止めない。自分の手のひらに広がる力を、もっと深く、もっと強く使いたかった。
それから数日、信長は静かに俺の力を見守っていた。だが、俺はその間に更に力を高め、試していた。時に戦を挑み、時に策略を練り、己の能力を極限まで引き出す。俺はもはや、どんな武将の力でも上回り、どんな戦術でも無力化できると確信していた。
そして、その日が来た。
俺がその力を解放した瞬間、全てが変わった。時の流れが歪み、周囲の景色が歪み始める。目の前に現れたのは、過去の自分、すなわち――俺の「影」だった。
「何だ、これは?」俺は驚愕の声を上げた。
その「影」は、まるで俺の分身のように見えた。しかし、異なっていたのは、その「影」の目が赤く、深い闇を湛えていることだった。
「お前はもう、戻れない。」その影は、冷徹に告げた。「全ての力を手に入れたお前が、我々のように存在する者たちと同じだ。今更、引き返すことなどできない。」
「引き返す?」俺は冷笑を浮かべた。「俺には引き返す道などない。全てを支配し、全てを制する。それが、俺の目的だ。」
だが、影は一歩踏み出し、俺に向かって言葉を続けた。「お前の力は、もう一つの存在を生んでしまった。お前が支配しようとしているもの、それはお前自身であり、またお前が作り出した闇だ。お前の心の中にあるその力を、完全に制御できるのか?」
その問いに、俺は答えられなかった。俺が求めてきた力。それは確かに無敵だ。しかし、その無敵の力がもたらすのは、支配だけでなく、破滅の予兆でもあるのだ。
俺はその「影」の言葉に動揺し、心の奥底に新たな疑念を抱き始めた。しかし、それでも俺は立ち止まらない。
「ならば、この力を完全に使いこなしてみせる。」俺は叫んだ。「誰にも止められない。俺が全てを支配する。」
その瞬間、周囲の空気が変わった。俺の体が光り輝き、漆黒の闇がその光を包み込む。俺は、これまで以上に強く、そして――異形の存在になった。
「お前は、もう普通の人間ではない。」影が言った。
「それでいい。」俺は笑みを浮かべた。「人間であることを捨て、全てを支配する者となる。それが、俺の道だ。」
その言葉と共に、俺は全てを制御し、支配する力を解き放った。目の前に広がる景色は歪み、時間すらも俺の意志に従い始める。周囲の人々が目を見開き、恐怖に震える中、俺はその力で世界を再構築しようと決意した。
だが、力を持つ者には、必ずそれに見合った代償が伴う。俺の内に秘められた闇は、次第に俺を飲み込もうとしていた。全てを支配した先に、待っているのは破滅なのだろうか?
「支配者となる者よ。」影の声が響く。「お前は、ただ力を持つだけでは足りない。全てを支配し、その先にあるものを見届ける覚悟を持て。」
俺はその言葉に深い重みを感じたが、それでも前へと進むしかない。俺はすでにその道を選んだのだ――闇の支配者としての道を。
そして、俺は漆黒の闇を背負いながら、さらなる力を求めて歩みを進める。




