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支配の頂点

俺の支配力は、もはや単なる軍事的勝利に留まらず、精神的な領域にまで及んでいた。信長、元親、毛利元就――各地の大名たちを手中に収め、俺の言葉一つで動くように仕向けてきた。しかし、次第にその力を使いこなすことが、かつてないほどの重圧となっていった。


俺が手にした力は、もはや単なる「勝利」をもたらすものではない。それは、「全てを支配し、世界を操る力」――自分の意志だけで歴史そのものを変えることができる、あまりにも強大すぎる力だった。そして、その力がもたらすものは、もはや想像を絶する結果を引き起こしていた。


信長との関係も、もはや形だけのものに過ぎなくなっていた。彼の力を完全に操り、背後で歴史を動かすことで、俺は事実上の天下人となっていた。だが、信長の心の中に潜む「野望」は、俺の目をも欺いていたのだ。


「本当に、この力で全てを手に入れたと言えるのか?」俺は、深夜にひとり、暗闇の中でその問いを自問自答していた。


信長の目標は「天下統一」だ。それは素晴らしい目標であり、俺が手助けをしてきた結果として、形を成しつつあった。しかし、その先に待っているのは、ただの支配と平和ではない。信長の目に浮かぶ光、そこには「無敵の支配者」としての絶対的な意志があった。そして、俺の目標はその先にある――「世界そのものを自分の手中に収め、全ての運命を操ること」だ。


だが、どんなに強力な力を持っても、俺の力を完全に理解し、受け入れる者はほとんどいなかった。それは当然だ。力が強すぎる故に、相手に与える影響が大きすぎて、その結果として「人々の心」を不安定にし、混乱を生むことになる。


「いっそ、この力で全てを無に帰してしまおうか。」俺はふとそんな考えが頭をよぎった。


その瞬間、背後から声が聞こえた。「そのような道を選んではいけません。」


振り返ると、そこには信長の姿が立っていた。何も言わずに立っていた信長は、無言で歩み寄り、俺の前に立つ。


「お前、どうしてここに?」俺は冷ややかに問いかけた。信長がここにいるという事実が、俺にとってはまるで異次元の出来事のように感じられた。


「お前の力を試したくてね。」信長はにっこりと微笑んだ。しかし、その笑みの奥に潜む鋭い眼光に、俺はその真意を探ることができなかった。


「試す? 俺の力を? 君にはわからないだろう、こんな力を使いこなすのは。」


「違う。」信長は言った。「お前の力を支配するのではなく、お前がその力をどう使うかを見極めるのだ。」


その言葉に、俺は一瞬戸惑った。信長が何を言おうとしているのか、その意図が掴めなかった。しかし、ふと気づくと、俺の中で何かが変わり始めていた。


「お前が一番恐れていることは何だ?」信長の声が静かに響いた。


「恐れている? 俺は恐れるものなどない。」俺は自信満々に答えた。だが、信長は冷静に続けた。


「それが、最も危険なことだ。力を持つ者は、その力に飲み込まれないよう、常に冷徹でなければならない。そして、お前はすでにその境界を越えている。」


その瞬間、俺は深い闇に飲み込まれたような感覚に襲われた。俺が求めてきた力、それは確かに手に入れた。だが、その力を持つことで、俺は一歩一歩、狂気の淵に近づいていることを、信長は見抜いていたのだ。


「俺はすでに、止められない。」俺はつぶやいた。「でも、お前は俺を止められるのか?」


信長は少し沈黙した後、にやりと笑みを浮かべた。「止める? いや、止めることなどしない。ただ、どこまでお前がその力を使うのかを、俺は見ていく。」


その言葉を聞いた瞬間、俺は突然、力が溢れ出すのを感じた。俺の体内で、封印されていた力が解き放たれる感覚。全てを支配し、命じることができる力。その力が膨れ上がり、俺の体を満たしていった。


そして、信長は微笑んだ。「それが、お前の力だ。だが、その力を使う者には、必ず代償が伴う。」


「代償?」俺はその言葉に疑問を抱きながらも、力を使い続けた。


信長の言葉が胸に響いた。これまでの戦で手に入れた力、支配した者たち、そしてその先に待つ「支配の果て」。俺はその先を見据え、どこまでも進んでいく覚悟を決めた。


だが、支配者としての孤独と苦悩が、次第に俺を蝕んでいくことを、まだ知る由もなかった。

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