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手毬

前田利家の軍を打倒したことで、信長の天下統一へ向けた道は一気に加速した。しかし、俺にとってその勝利は単なる一歩に過ぎなかった。俺が求めるのは、戦の枠を超えた支配、そして自らの力を存分に発揮できる環境だ。信長と共に歩み続けることはもちろんだが、ここから先、俺がどう動くかで全てが決まると感じていた。


戦後、信長からの命で、俺は新たに起こる可能性のある反乱や動乱を未然に防ぐため、さらに他の大名たちとの接触を深めていくこととなった。だが、どこかで感じていたのは、もうすでに「普通の戦闘」では満足できないということだった。これまでの戦術や兵力では、俺の力を最大限に活かすことはできないと確信していた。


その夜、俺は再び孤独な思索にふけっていた。時空を操る力、さらには周囲の心を操る能力がすでに俺の手中にある。しかし、それでも俺は、もっと深い力を求めていた。今の力はあくまで「戦場」での優位をもたらしてくれるが、俺が目指すのは、「全てを支配する力」だ。そのためには、もはや戦場だけではなく、世界そのものに影響を与える力を得る必要があった。


そして、ついにその答えを見つけた。それは「精神の支配」に関する古代の秘術だった。精神を超えた力、すなわち「人々の意志を操作し、逆に自分の意志を世界に反映させる力」である。この力を使うことで、俺は肉体を超えて、世界そのものに干渉することができるようになる。


その能力を開花させるため、俺は孤独な修行を始めた。心と精神を鍛え、世界の法則をより深く理解し、物理的な制約を超越する術を学んでいった。この過程はまさに俺の限界を越える挑戦だった。だが、その中でようやく、俺はその力を手に入れた。


それは、心の力を増幅させ、無意識のうちに周囲に影響を与える能力だった。たとえば、誰かに向かって「自分の意志を実現させるように」と強く思うと、その相手の行動や判断が次第にその意志に引き寄せられ、結果的に俺の思い通りに動くようになる。そして、この力をさらに強化すれば、もはや自分の意志が世界の意志そのものになることさえ可能となる。


力を得た俺は、まず最初にその力を使い、信長との会話の中でその力を実践してみた。信長は、俺の力に気づくことなく、次々に自らの意思で戦略を練っていく。しかし、俺は密かにその心を操り、信長が目指すべき道を示すように仕向けた。次第に、信長が取るべき行動や判断が俺の意図に沿うようになり、彼の決断が、俺の計画に完全に一致していった。


その結果、信長はますます俺に頼るようになり、彼の力を完全に自分のものにすることができた。だが、俺の目的はそれだけではなかった。もっと大きな世界を支配するためには、信長一人の力に依存していては意味がない。俺が目指すべきは、「全ての大名をも自分の意志で動かすこと」だった。


そして、次に目を付けたのは、毛利元就だ。彼は巧妙な戦略家として知られており、長年にわたって安定した支配を築いてきた。だが、その安定の裏には彼の過去の重荷があり、その心は少しずつ乱れつつあった。俺はその心の隙間を見逃さなかった。毛利元就の弱点を突き、彼が持つ権力を俺の支配下に置くための策略を練り始めた。


まず、毛利元就に接触し、彼の部下の中から信頼できる者を送り込んだ。情報を集めるための糸口を作り、毛利家内での不満を煽り立てる。しばらくして、毛利家の中での権力闘争が激化し、元就の周りには不安定な空気が漂い始めた。そのタイミングを見計らって、俺は再び毛利元就に接触し、彼の心にさらなる隙間を作った。


「元就殿、貴殿の実力は素晴らしい。しかし、今のままで全てを支配するには限界がある。もし、私と手を組むことができれば、天下はお前のものだ。」俺は静かな声で言った。


元就は一瞬、驚いた顔をしたが、すぐにその顔を隠し、深い思慮の末に答えた。「お前の力を知っている。だが、今更手を組むことには疑念がある。」


「疑念も、信頼も、全ては人の心の動きに過ぎません。ならば、今、貴殿の心を動かせばよい。」俺は言いながら、無意識にその精神的支配力を使った。


その瞬間、毛利元就の瞳に一瞬の迷いが生まれ、やがて深い納得の表情を浮かべた。


「お前の言う通りだ。ならば、共に天下を取ろう。」元就は、まるで俺の意志をそのまま受け入れたかのように答えた。


こうして、毛利元就も俺の手に落ち、残る大名たちへの支配を強化することができた。だが、この時点で、俺はまだ一つの大きな試練を抱えていた。それは、最終的な天下統一のために、信長という存在をどう扱うかという問題だった。


信長を完全に支配下に置くことで、天下を統一できることはわかっていた。だが、信長自身がその力を行使して天下を取ることを望んでいる限り、俺の支配には限界がある。

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