大きな悪事
信長との会談は予想以上に険しいものとなった。試練を与えると言われた時、すぐにその内容が明かされることはなかった。だが、信長はじっと俺を見つめ、やがて口を開いた。
「お前の力を試すため、少しばかり面倒なことを頼むことになるだろう。」信長は、冷徹な目で俺を見つめながら言った。「今、俺が直面している問題を解決してみろ。」
俺は信長の言葉をしばらく黙って受け止めていた。信長が何を頼むのか、それがどれほどの困難な試練かはわからないが、ここで手を引くわけにはいかない。俺の目標はただ一つ、天下統一。そのためには、信長の信頼を得ることが必要だ。
「具体的にどんな問題ですか?」俺は落ち着いて尋ねた。
信長は少し黙った後、言葉を続けた。「北条家の残党が、尾張に侵攻しようとしているらしい。」信長は一瞬眉をひそめた。「それに、そいつらはただの残党ではない。裏で何者かが手を引いている可能性が高い。」
俺の脳裏に、すぐに数つの可能性が浮かんだ。北条家の残党と聞いて、真っ先に思い浮かべたのは、織田家の内部に潜む裏切り者の存在だ。この問題を解決することができれば、信長からの信頼を得るだけでなく、織田家内部にある問題も暴くことができるだろう。
「なるほど。」俺は答えた。「では、どうすればその問題を解決できると考えますか?」
信長は俺をじっと見つめた後、言った。「まずはその北条の残党の拠点を突き止め、そいつらを壊滅させろ。その後、裏で糸を引いている者が誰かを突き止める。お前の手腕を見せてくれ。」
その言葉に、俺の胸の中で戦意が湧き上がった。信長の試練に応えるだけでなく、俺自身が天下を目指すために一歩前進する絶好のチャンスだ。
「わかりました。」俺は力強く答えた。「すぐに動き出します。」
信長は微笑みながら頷いた。「頼んだぞ、彩斗。」
その言葉を最後に、俺は信長と別れて自分の軍に戻った。信長の信頼を得るために、この試練をクリアすることが何よりも重要だ。そして、その後に待っているであろう新たな戦いに備えるため、俺は一刻も早く準備を整えた。
翌日、俺は軍を動かし、北条家の残党の拠点を調査し始めた。情報網を駆使して、隠れていた拠点を次々に突き止め、その周囲に潜んでいた兵を一掃していった。最初は小規模な戦闘に過ぎなかったが、次第にその規模は拡大していき、残党たちの本拠地と思われる場所が明らかになっていった。
「どうやら、こいつらはただの賠償軍ではない。」慎之助が報告に来た。「背後に大きな勢力がいるようだ。恐らく、信長を脅かすつもりで動いている。」
その報告を聞いて、俺はすぐに考えを巡らせた。もし本当に裏で誰かが手を引いているのであれば、その正体を暴かなければならない。そのためには、直接戦闘に入る前にもう少し情報を集める必要がある。
「慎之助、慎重に動け。」俺は言った。「まずはその裏にいる勢力を明らかにしてから動く。」
その後、俺は徹底的に情報を集め、数日をかけてついにその裏にいる人物の存在を突き止めた。それは、まさかの人物だった。信長の家臣の中に、裏で北条家の残党と手を組んでいた者がいたのだ。
その人物の名は、信長の重臣である竹中半兵衛。竹中は知恵者として知られ、信長の信頼も厚かったが、裏では北条家と密かに連携していたらしい。この事実を知った時、俺は一瞬、動揺したが、すぐに冷静になった。
「竹中半兵衛か。」俺は呟いた。「信長の側近にしては、あまりにも大きな裏切りだ。」
だが、この情報を信長に伝えるタイミングを見計らう必要がある。今、竹中が仕掛けていることを暴けば、信長を裏切ったことになる。だが、もしそれをうまく利用できれば、信長の信頼を得るための強力なカードになる。
「慎之助、この情報を信長に伝えるべき時が来た。」俺は言った。「だが、どうやって信長に伝えるか、それが問題だ。」
慎之助は俺を見つめ、しばらく黙って考えてから言った。「このまま竹中の謀計を暴くより、まずは竹中を取り込む方法を考えるのも一つの手です。」
その言葉に、俺は思わずうなずいた。確かに、竹中を取り込めれば、それだけで大きな力を得ることができる。だが、竹中が裏切りを続ける限り、信長との信頼関係を築くのは難しい。だが、どう動くべきか、その判断は俺に任されている。
「一旦、竹中に接触してみよう。」俺は決断を下した。「そのうえで、信長との関係も深めていく。」
その後、俺は竹中と直接会うための計画を立て、慎之助と共に彼の元に向かうことにした。信長を裏切り者として仕立て上げるためのこの一手が、俺の未来を大きく変えることになることを、俺はすでに予感していた。




