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不穏な動き

その後、俺たちは元親との接触を続けるつもりだったが、今の時点ではいくつかの不安材料が浮かんでいた。吉田の言動、元親の提案、そして予想以上に積極的な外部勢力との接触。どれも一筋縄ではいかない問題だった。


夜、俺は自室で資料を整理していた。戦略図、地図、元親との会話の内容などを並べ、どうやってこの状況を乗り越えるかを必死に考え続けていた。慎之助が机に座っている俺の背後から静かに声をかけてきた。


「彩斗、あんまり考えすぎるな。」

振り返ると、慎之助が心配そうな顔をしている。「お前が心配してるのは分かるが、何か見逃してないか?」


「何も見逃してないつもりだ。」俺は短く答えた。「だが、吉田が絡んでいるとなると、全てが予測できるわけじゃない。」


慎之助は軽く息をついてから言った。「でも、そう考えても仕方ないだろう。今は元親の動きを待つしかないんじゃないか?」


その言葉を聞いて、俺は少し黙り込んだ。確かに、今は元親との協力関係を結ぶかどうか決めなければならないが、その決断を下すためにはもう少し情報が必要だった。慎之助の言う通り、待つ時間が最も重要かもしれない。


だが、次の日の昼、事態は思わぬ方向へ進んだ。


町の広場に集まった兵士たちの動きが不自然だった。何か大きな動きがあるのか、全員が慌ただしく準備をしている。俺はすぐに慎之助を呼び、町の中心に向かって歩き出した。


「何か、あったか?」

「分からん。」慎之助が答える。「だが、ここから見る限り、軍を動かすような何かがあったんじゃないかと思う。」


広場に到着すると、数名の兵士が集まって話しているのが見えた。その中に、見覚えのある顔が一つ、俺の目に飛び込んできた。それは、元親の家臣であり、しばしば顔を合わせていた重臣の一人、藤堂という男だった。


「藤堂!」

俺は声をかけると、藤堂がすぐに振り返った。彼の表情には普段の冷静さが欠けており、少し焦りが見えた。

「お前、何をしている?」

「彩斗か。」藤堂が一瞬驚いた顔を見せた後、すぐに落ち着きを取り戻して言った。「実は、元親からの命令で、急遽兵を動かすことになった。今すぐにでも出発しなければならん。」


「命令?」俺は眉をひそめた。「どこに行くんだ?」


「それは…まだ言えん。」藤堂は明らかに言いたくない様子だったが、しばらく沈黙した後、重い口を開いた。「だが、俺たちは四国の外、北へ向かうつもりだ。どうしても行かなければならん。」


「北? それは…織田信長の側近との連携か?」

俺がそう尋ねると、藤堂は一瞬、驚いた表情を見せたが、すぐに答えた。

「まさか。だが、確かに信長との繋がりはある。元親は他の大名との協力関係を築くため、北へ向かう準備をしている。」


その一言に、俺の頭の中で一つの答えが出た。元親はただ四国を支配するだけではなく、外部勢力、つまり織田信長との連携を進めようとしている。これは、単なる地域統一を超えた、大きな野望の始まりに他ならない。


「なるほど…。」

俺は少し呟き、慎之助を見た。「信長との連携を進めるということは、他にも何か計画があるということだな。」


慎之助は黙って頷き、そのまま広場の人々の動きに目を向けた。兵士たちは準備を整え、すぐにでも出発する様子だ。藤堂も俺の方をちらりと見た後、再び兵士たちに指示を出している。


「俺もそろそろ出発だ。お前たちはどうする?」

「行くつもりか?」

「だが、元親の指示で動くなら、俺も後を追わなければならん。」藤堂は一度ため息をつき、続けた。「お前も元親に接触したいなら、この機会に行くべきだ。」


その言葉を聞いて、俺の胸に何かが引っかかるのを感じた。元親は確かに大きな力を持っているが、それを手に入れるためには彼の動きに乗らざるを得ないのかもしれない。だが、その先に何が待っているのかが分からない以上、すぐに決断を下すのは危険だ。


「行くかどうかは、まだ分からん。」俺はそう言って、広場を離れた。「もう少し考えた方がいい。」


慎之助が黙ってついてきた。俺たちは少し離れた場所で立ち止まり、再び元親の動きについて考え始めた。今、俺たちの前に現れたこの選択肢が、果たして正しい道なのかどうか。それを見極めるには、もっと時間が必要だった。


だが、少なくとも今、俺たちはその時を待つしかなかった。

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