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予期せぬ選択

元親との会話から数日が経った。あの日以来、慎之助と俺は、元親の提案をどう受け止めるべきか、何度も話し合った。だが、結局は明確な結論が出せずにいた。元親の申し出は確かに魅力的だった。しかし、その背後に潜む意図が不透明な今、俺たちがその手を取るべきかどうかは判断がつかない。


「どうする?」

慎之助の問いかけに、俺は少し顔をしかめながら答えた。

「もう少し様子を見て、元親の動きと周辺の状況を調べる必要がある。」


慎之助は黙って頷き、俺の言葉に賛同したようだった。だが、それだけでは事態は進展しない。元親が言ったように、時間が無駄にできないのは確かだ。四国統一を目指す上で、いくら慎重になったとしても、決断を遅らせることは致命的な後手を踏むことになる。


その日、慎之助と共に街の中を歩いていると、ひときわ目立つ人物が通り過ぎた。顔を見た瞬間、俺の心臓が一瞬、跳ね上がった。それは、まさかの吉田だった。


「吉田…?」

驚きと共に声を漏らす俺に、慎之助が視線を向けた。「吉田がどうした?」

「いや、まさかこんなところで会うとはな。」

「でも、どうして吉田がここに?」

「それが分からんから、ちょっと様子を見る。」

慎之助は微妙に不安そうな顔をしたが、俺の決断に従うことにしたようだ。


吉田は町の端にある酒場に入っていった。俺たちは少し離れた場所からその動きを見守ることにした。数分後、吉田が酒場から出てきたが、何かを携えていた。その荷物の中身が気になって仕方なかった。


「慎之助、行こう。」

俺はそのまま吉田を追いかけるように歩き出した。慎之助も迷わず俺に続く。


酒場の外で吉田が立ち止まり、荷物を手に取ると、急に顔を上げて周囲を警戒し始めた。どうやら俺たちの後をつけられていることに気づいたらしい。


「早いな。」

俺は慎之助に小声で話しかける。「計画がばれたかもしれん。」

慎之助も緊張した表情で頷いた。だが、逃げるわけにはいかない。


「吉田!」

俺が声をかけると、吉田が振り返った。まるで俺の存在を知っていたかのように、彼の表情が一瞬で固まった。


「……お前か。」

「お前こそ、何をしている?」俺は腕を組みながら、吉田に問いかけた。

「そんなことはどうでもいいだろう。お前も少しは用心しろ。」吉田は冷ややかな目で言い放った。「あの元親のところに行ったんだろう?」

「お前がどうしてそれを知っている?」

「それはお前があんなにこそこそ動いているからだ。」

吉田は軽く笑った。「まあ、お前に関係ない話だ。」


その時、俺の中で何かが引っかかった。吉田がこの町に現れたこと、そして元親と繋がりがあること、それが繋がった瞬間、俺の頭の中で一つの計算が浮かんだ。元親は、吉田を使って俺たちにプレッシャーをかけようとしているのではないか?


「そうか…」

俺は思わず呟いた。「お前、元親に協力しているんだな。」


吉田は一瞬、何も言わずに黙り込んだ。だが、すぐに冷静に言った。「協力しているわけじゃない。ただ、俺なりに自分の道を行っているだけだ。」

その言葉に、俺は何かしらの違和感を覚えた。吉田があれだけ淡々と話す理由が分からない。だが、それが逆に彼の隠している何かを示しているようにも思えた。


「お前の意図が分からん。」俺は無言で吉田を見つめながら、そう告げた。


「そうか、まあお前がどう思おうが、俺には関係ない。」

吉田は振り返り、町の入り口へ向かって歩き出した。俺はその後ろ姿を見送りながら、まだ彼の真意を探らなければならないと思った。


慎之助が静かに言った。「あれは…一体何を企んでいるんだろうか?」

「分からない。だが、彼が何をしているにせよ、これで元親との関係がより一層複雑になったことだけは確かだ。」

俺は改めて吉田の姿が消えるのを見届けながら、次の一手をどう打つかを考えていた。


その後、俺たちは再び元親との話し合いに向かうことにした。だが、これから先、どのように振る舞うべきかは決して簡単な問題ではなかった。吉田が何かを知っている、そして元親が今、何を考えているのか。それがまだ見えない中で、俺たちの立場をどう決めるべきか。


その日は何度も何度も、その答えを探すべく考え続けた。

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