表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/9

⑤ どうやら朝型の四人

<はじめに>


歩いてすぐ学校って流れにしようと思ったのですが、何か一悶着欲しいと思って今回のシーンを足して書き直しました!!是非最後まで読んでくれると嬉しいよ!( ˶'ᵕ'˶)


書き方や展開に違和感があるかもしれませんが、生暖かい目で見守って頂けると幸いです!




次の日──刃霧はぎりはいつもより早く目を覚まし、予定より少し早く家を出て、学校へ向かった。


「”軽々しく考えたり、深入りしすぎたりするのは危険よ”…か」


刃霧はぎりは昨日のヴィクトールの言葉を思い出し、ぼんやりとした表情で歩いていた。まだ冬の寒気が残っている朝の空気はひんやりとしており、頭の中に浮かんでは消える思考を繰り返していたその時だった。


突然、後ろから「ドンッ」と大きな衝撃が走り、体がよろける。足元が一瞬ふらつくが、倒れないように体勢を必死に立て直した。


「おはよっ!....って、わー!勢い余りすぎた!!ごめんね…」


驚きつつ振り返ると、そこには明日菜あすなが立っていた。勢いよく飛びついたものの、自分でも予想以上の力だったのか、彼は気まずそうに指同士を合わせながら反省していた。


明日菜あすなか。びっくりした、おはよ」


刃霧(はぎり)は少し乱れた制服を軽く直しながら、挨拶しながら笑みを浮かべた。その様子を見て、明日菜(あすな)はほっとしたように表情を緩める。


「うん、おはよう!まさか朝早くから月斗つきとくんに会えるなんて!」


明日菜あすなはそう言いながら、片耳から有線のイヤホンを抜き取り、鞄の中にしまいながら刃霧(はぎり)の横に並ぶ。その足取りはどこか軽やかで、とても上機嫌なのが伝わる。


刃霧はきりは、先ほどの衝撃を思い出しながら、つい尋ねてしまった。


明日菜あすなって...すっごいパワフルだね」


「え、やっぱり突撃したこと気にしてる!?ほんとごめん!」


明日菜(あすな)は恥ずかしそうにしながら大きく手を振る。慌てる動きがなんだか可愛いのに滑稽で、刃霧(はぎり)はふっと笑みを漏らす。


「平気。ちょっと力強くてびっくりしただけで...」


その言葉をきっかけに、場が一瞬静まり返る。不思議に思った刃霧はぎり明日奈あすなに目を向けると、彼はどこか暗い表情を浮かべながら口を開いた。


「……まぁ、こんな見た目だけど、所詮男だからね」


明日菜あすなの声色が少し低くなり、刃霧はきりはその一言に、息を飲み込んだ。


重い空気を察した刃霧(はぎり)は避けるように話題を変えようと口を開いた。


「あ、そ、そういえば、さっき何の音楽聴いてたの?」


その言葉を聞いた明日奈あすなは、ぱっと声色を明るくし、楽しそうに話し始める。


「あ、僕の推しの“歌ってみた”を聴いてたんだ!ほら、動画サイトにアップされてるやつ!あれだよ、あれ!」


刃霧はぎりは少し安堵した表情を浮かべつつ、話が途切れないようにと続けた。


「今、色んな人が歌ってみたをアップしてるもんね。誰聞いてるの?」


「お!気になる!?この子ね、当時、小学生くらいだったんだけど、その年齢なのに歌がめちゃくちゃ上手で!」


そう言いながら、明日菜あすなは鞄からイヤホンを取り出し、刃霧はきりに聴かせようと片方部分を手渡そうとした。


その時、突然、後ろから声がかかる。


「あんたら…朝から元気だな」


後ろから声がかかり、二人は一斉にその方向を見ると。そこには鞄を肩にかけるように持ちながら、呆れた顔でこちらを見ていた阿久津あくつが立っていた。


「おー!れんくん、おはよー」


阿久津あくつ...)


刃霧はきりは昨日のことを思い出しながらも、一先ず挨拶をした。


「おはよう、阿久津あくつ。君も朝早いんだな」


刃霧はきりは少し気まずさを感じながらも、落ち着いた声で挨拶をした。


「あぁ。学校に図書館あったよな?そこに寄りたくて」


阿久津あくつは鞄を肩にかけたまま、少し前方を見据えたまま答えた。その姿にはどこか冷静な雰囲気が漂っている。


「図書館に?何しに行くんだ?」


刃霧はぎりが興味を示すように顔を向けた。


「数学でわからなかった部分があったんだよ、図書館にいい感じの参考書があればいいなって思ってな...」


れんくん、えっら!まだ初回授業すら始まっていないんだよ!?」


明日菜あすなが驚いたように目を丸くして、手を口元に当てて大げさに叫ぶ。その軽快なリアクションに、阿久津あくつは肩をすくめながら淡々と答えた。


「早めに予習して、テスト期間を少しでも楽に過ごしたいんだよ」


そう言って、阿久津あくつは無造作に頭をかきながら少し恥ずかしそうに目を逸らす。そんな姿を見て、刃霧はぎりはふと感心したように頷き、提案を口にする。


阿久津あくつ、よかったら僕が教えようか?」


「お、マジか?」


阿久津あくつは少し目を見開き、意外そうに刃霧はぎりの顔を覗き込む。


「うん、今度一緒に早めの勉強でもしようか」


「おう、よろしくな」


「えー!ズルい!僕も参加する!代わりと言っちゃなんだけど、暗記方法伝授しちゃうからね!」


明日菜あすなが満面の笑みを浮かべ、二人の間にぐいっと割り込む。その無邪気な姿に刃霧はぎりも思わず笑みを漏らした。


「そういえば、部活ってもう決めた?」


少し間が空いたところで、明日菜あすながふと顔を上げて新しい話題を振った。


「いや、まだ。運動系は時間ないからな、あんまり前向きじゃねぇな」


阿久津あくつが斜めに首を傾けながら答える。その様子を見て、刃霧はぎりも軽く頷きながら言葉を続けた。


「僕もだな。でも、せっかくの部活だし、文化系がいいかなって思ってるよ」


「じゃあさ、みんなで同じ部活入っちゃうとか。どう?」


明日菜あすなは悪戯っぽい笑みを浮かべながら提案する。その思いつきに阿久津あくつが小さく吹き出し、刃霧はぎりも苦笑するように明日菜(あすな)を見た。


「なんだそれ、まぁそれはそれで面白そうだな」


「うん、それも悪くないかもね」


そんな会話をしていると、阿久津あくつが突然足を止めて前方を指さした。


「あれは...三栖みすずか?おいおい、あいつそういうキャラだったのか?」


その声に、刃霧はぎり明日奈あすなも足を止めて視線を向ける。少し先の道端で、三栖みすずがしゃがみ込んで一匹の小さな犬を撫でていた。ふわふわの毛並みをした雑種らしいその犬は大人しく、撫でられている三栖みすずの表情には、穏やかな雰囲気が漂っている。


かえでくん、なんか激かわワンコと遊んでるじゃん!」


明日奈あすなが無邪気に話すと、刃霧はぎりも興味深そうに話し出した


「.....なんか意外な組み合わせだね。昨日の感じとは全然違う」


「ね、行こう行こう!」


明日菜あすなが先頭に立って駆け寄ると、足音に気が付いたのかしゃがみ込んでいた三栖みすずがゆっくり顔を上げた。


かえでくん、何してるの!そんなところでそんな可愛いワンコと遊んでたらあっという間に時間経って遅刻しちゃうよ!」


三栖みすず明日菜あすなを見て軽くため息をつく。そして、犬の頭をぽんぽんと撫でながら立ち上がった。


「遊んでるわけじゃない。こいつ、迷子らしいから、飼い主が迎えに来るまでこうして大人しくさせてたってだけだ」


「え、めっちゃ優しいー」


明日菜あすなが目を輝かせながら声をあげると、阿久津あくつが犬を覗き込みながら、三栖みすずに尋ねた。


「こいつ、野良じゃないってなんでわかるんだ?」


この言葉を聞いた三栖みすずはふいっと犬の方に視線を戻す。


「...野良にしては毛並みが良すぎる。それに、首の周りにリードの跡が残っている。ついさっきまで、飼い主の元にいた証拠だ」


三栖みすずは淡々と答えた。その様子は優しさを感じさせる一方で、どこか距離を保っているようにも見える。


刃霧はぎりはそんな彼の横顔を見つめ、ふと微笑みながら言葉を投げかける。


「でも、意外だね?三栖みすずって犬好きだっけ?」


その問いに、三栖みすずは一瞬だけ沈黙し、足元に大人しく座っている犬を見下ろした。犬を見透かすような目をしてから、淡々と口を開く。


「...従順で、懐いた相手には必ず構ってくれるからな」


その一言には、どこか冷たさを含んだ影が感じられた。明日菜あすな阿久津あくつは不思議そうな顔をしながら思わず顔を見合わせる。


すると、三栖みすずはどこかから犬の名前を呼ぶ声に気づいた。三栖みすずはため息をつきながら、しゃがみ込んで犬をそっと抱き上げた。その瞬間、近くから慌てて駆け寄ってくる男性の姿が目に入った。


男性はリードを片手に握りしめ、息を切らしながら三栖みすずに声をかける。


「あの、その犬...!」


三栖みすずは男性を一瞥すると、落ち着いた声で犬を抱えたまま尋ねた。


「この子、あんたのか?」


近づいてきた男性は一瞬驚いたような表情を浮かべたが、すぐに安堵の笑みを浮かべた。


「ああ、そうだ!本当にありがとう、ずっと探してたんだよ!」


三栖みすずは無言で犬を差し出し、男性はそれを慎重に受け取った。犬は嬉しそうに尻尾を振り、飼い主の腕の中で安心した様子を見せる。男性は何度も頭を下げながらお礼を言うが、三栖みすずはそれを気に留めることもなく、早足でその場を離れようとした。


「あ、おーい、待ってよかえでくん!」


明日菜あすなが慌てて追いかけながら声を上げた。


「ねえねえ、やっぱり犬好きなんじゃないの?」


三栖みすずは立ち止まることなく歩き続けながら、少し口元を歪めるようにして答えた。


「…どうだろうな」


どこかつっけんどんなその言葉には、微妙な含みが感じられる。それでも明日菜あすなは気にすることなく、にこにこと三栖みすずの隣を歩き続けた。


その様子を後ろから見ていた刃霧はぎり阿久津あくつは顔を見合わせ、軽く笑いながら苦笑を浮かべた。


「なるほどな、あいつああいうタイプか、なんか仲良くなれそうだわ」


阿久津あくつが軽く頭を触りながら、少し興味を惹かれたように呟く。


その言葉に刃霧はぎりは、まるでそれを喜ぶように穏やかに微笑んだが、何も言わずに学校への道を歩き続けた。


四人は楽しそうに話しながら通学路を歩き続けた。道端には満開の桜が並び、風が吹くたびに花びらがひらりと舞い落ちる。柔らかな春の日差しが街路を優しく照らし、どこか穏やかな空気が流れていた。



<おわりに>


少しでも続きが気になる!!と思ってくださった方は、ブクマなどして気長に待っててくださるとモチベアップです!!


最初に書いた通り、歩く→学校→合流。というシンプルな流れにしようと思っていたので、このシーンを追加したことで四人の関係が書けて楽しかったです!


学校の教室に向かう四人。おっと教室でどうやら不穏な空気が漂っているみたい...( ◜ω◝) また次回!


最後まで読んでくださりありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ