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③ 刃霧推しの支えて

<はじめに>


今回はかなり学園から離れてしまいますが、これから繋がる謎において大事な台詞を散らばせたので、ぜひ読んでくれると嬉しいです!


書き方や展開に違和感があるかもしれませんが、生暖かい目で見守って頂けると幸いです!



ビルが並ぶ一角に足を運ぶと、途端に景色が一変した。ガラス張りの高層ビルが立ち並び、その間を縫うように人々が行き交う。刃霧はぎりが向かうのは、その中でも一際目を引く、派手な装飾が施された建物。昼間の太陽に照らされ、ガラスと金属の表面がまるで光を放っているかのように輝いていた。


「…いつ見ても派手だね」


刃霧はぎりはそう呟きながら、ポケットからスマホを取り出して入口のQRコードをスキャンする。無事認証され、自動ドアが滑らかに開くと、ビルの中はさらに華やかだった。


白い大理石の床に映り込む照明の輝き、壁一面のデジタルパネルには流行のブランド広告やアート映像が映し出されている。受付にはスタイリッシュな制服を身にまとったスタッフが立っていた。


「こんにちは、どういった御用で?」


スタッフは丁寧な笑顔を浮かべていた。


刃霧月斗はぎりつきとです。卯月うづきさんにお時間をいただいているのですが...」


受付のスタッフが手元のタブレットで確認し、刃霧はぎりに目配せした。


「はい、刃霧はぎり様。スタジオは9階です。エレベーターはあちらをご利用ください」


「ありがとうございます」


刃霧はぎりは指示通りエレベーターに乗り込む。ガラス張りの外壁越しに、ビルの外の景色が見える。徐々に視界が広がり、青空が目前に迫ってきた。目的の階に到着すると、ドアがゆっくり開き、目の前には撮影スタジオへの通路が続いていた。


「よし、着いた...」


一息置いた刃霧はぎりはスタジオに足を踏み入れた。そこには壁一面に配置されたライトやリフレクターが白い光を放ち、床には撮影用のカラフルな背景紙が広げられている。忙しなく動き回るスタッフたちは機材をセッティング中で、その合間をモデルらしき人物たちがスタイリストと共に歩いていた。衣装ラックには華やかな服がぎっしりと並び、いたるところから化粧品の香りとスプレーの音が漂ってくる。


「おー、刃霧はぎりくん!こっちこっち、待ってたよ!」


活気ある雰囲気の中、低くも明るい声が彼を呼び止めた。声の主は、以前仕事で世話になった卯月うづき刃霧はぎりが顔を向けると、相変わらず柔らかな笑みを浮かべた卯月うづきが手を振っている。


「ご無沙汰してます、卯月うづきさん。今日のスケジュールはどうなっていますか?」


刃霧はぎりは軽く頭を下げながら歩み寄った。卯月うづきは腕を組み、スタジオの様子をちらりと見渡しながら答える。


「今日は化粧品をテーマにしたポートレート撮影だよ。いやぁ、学校帰りに申し訳ないね。本当に助かるよ。うちのお得意様が、どうしてもモデルに刃霧はぎりくんをお願いしたいって言うもんだからね」


卯月うづきは申し訳なさそうに笑いながらも、どこか嬉しそうな表情を浮かべている。


「それは光栄です。期待に応えられるよう、頑張って撮影に励みますね」


刃霧はぎりは軽く頭を下げ、礼儀正しく答えた。そのまま視線を卯月うづきから周囲へと移す。撮影の準備で忙しく動き回るスタッフたちの中で、刃霧はぎりだけが落ち着いた雰囲気をまとっている。


「えっと…ヴィクトールさんは、ここにいますか?」


刃霧はぎりが問いかけると、卯月うづきは少し首を傾げ、思案するように視線を巡らせた。その後、ふと気づいたように手を挙げて奥の方を指さす。


「あぁ、彼なら奥の控室で刃霧はぎりくんのことを待っているはずだ。衣装の指示も出しておいたから、彼に確認してくれ」


「はい、わかりました。ではまたのちほど」


刃霧はぎりは軽く微笑み、卯月うづきに一礼して指さされた方向へと足を向けた。その背中は、どこか自然体でありながらも、この場に馴染んでいるプロフェッショナルな雰囲気を感じさせる。


壁にはポートレート写真がいくつも飾られており、落ち着いた照明が暖かい光を放っている。遠くから機材を動かす音やスタッフの声が微かに聞こえ、控室付近にもプロの現場特有の空気が漂っていた。


(うん、ここね)


刃霧はぎりは控室の入口に自分の名札が貼られているを見て、部屋をノックした


「ヴィクさん!入りますね」


扉をノックしながら開けると、中には上品な服装を着ていた人が待っていた。彼は刃霧はぎりを見るなり、素早く立ち上がり、目を輝かせて近づいてきた。


「えー、やだぁ!はーちゃん、めっちゃ制服似合うじゃなーい!」


「ありがとうございます、ヴィクさんに言われると自信が出ます」



──「ヴィクトール」は彼の活動名だ。本名は別にあるが、長年この名前で呼ばれてきたため、今ではそれがすっかり馴染んでいる。彼は、普段刃霧はぎりが仕事で着るブランドのデザイナーでありながら、マネージャーやカメラマンとしても刃霧はぎりをサポートしている多才な人物だ。端整な顔立ちはプロの化粧技術によってさらに際立ち、完璧に手入れされた髪型と相まって、どこかモデルのような雰囲気を醸し出している。その仕草や話し方は女性らしさを感じさせ、初対面の相手が驚くこともしばしばだ。


ヴィクトールは軽快な足取りで刃霧はぎりに駆け寄り、まるで親しげな友人のように手を軽く取った。


「で〜、学校はどうだったの?」


ヴィクトールは刃霧はぎりの手を軽く振りながら、にこやかに問いかける。


「......かえでに会った」


刃霧はぎりは少し間を置いて答えた。その言葉に、ヴィクトールの動きが一瞬止まる。


「え!! かえでって、あの三栖みすずグループのかえでちゃんのこと...?それで、どうだったの…」


ヴィクトールは興味津々といった表情で、身を乗り出して尋ねた。刃霧はぎりは短く息を吐いてから言葉を選ぶ。


「昔より、しっかりしててちょっと驚いちゃった…」


ヴィクトールは目を丸くしながらも、ふと表情を引き締めた。


「そうなのね……それで、"あれ"バレてないよね?」


突然、部屋の空気が一変した。ヴィクトールの口調からは先ほどまでの明るさが消え、低く鋭いトーンに変わる。刃霧はぎりは一瞬息を詰まらせた。頭の中で、"あれ"の意味を再確認するかのように言葉を響かせる。


部屋の隅に置かれた衣装ラックが、まるで彼らを見守るかのように影を落としている。緊張が漂う中、刃霧はぎりの手は無意識にヴィクトールの手を握りしめていた。


「...いや、たぶん気づかれてない。喋った時も何も言われなかったし…でも、最初に“妹”って言ってた。もしかしたら、近いうちに話題になるかもしれない」


ヴィクトールの笑顔は薄れていき、その代わりにやや深刻な表情が浮かぶ。彼は刃霧はぎり)の手を両手で強く握り直し、親しいながらも真剣な口調で言った。


「はーちゃん、それならなおさら慎重にならなきゃ。かえでちゃんは賢い子だもの。ちょっとしたことですぐにピンときちゃう可能性だってあるのよ?」


刃霧はぎりは深く息を吸い、視線をそらしてから口を開いた。


「…分かってます。言動には気を付けます」


ヴィクトールはふっとため息をつくと、刃霧はぎりから手を放し、向き直った。


「さて!そんな暗い顔してたら、モデル映えしないわよ。今日のテーマは聞いたかしら?“お化粧でさらに輝く!華やかで美しい貴方” よ。さぁ、切り替えて!」


ヴィクトールが手を軽く叩き、視線を上げると、先ほどまでの重い空気が瞬時に変わった。ヴィクトールは衣装ラックに向かい、リズムを刻むような足取りで服を取り出した。その手には、刃霧はぎりの落ち着いた雰囲気を引き立てるような洗練されたジャケットとスリムなパンツが握られている。


「はい、これ!今日はこれでバッチリ決めてもらうからね!」


受け取った衣装を見つめる刃霧はぎりの表情にも、ようやく少し笑みが戻る。


「…ありがとう、ヴィクさん」


ヴィクトールは彼の反応に満足げに頷き、冗談っぽく言葉を続けた。


「もう、浮気なんだからね〜。仕事でわたくしのデザインじゃない服なんて着るなんて、後でちゃんと償ってもらうんだから!」


刃霧はぎりはその言葉に軽く笑い、肩の力が少し抜けたようだった。


「じゃあ、後でヴィクさんの新作撮影、付き合いますよ」


「うん、それで決まりね!さて、わたくしは外で待ってるから、着替えたら呼んでちょうだい」


ヴィクトールは足早で部屋を出ていく。刃霧はぎりはその背中を見送りながら、受け取った衣装にそっと目をやった。


彼は手早くその衣装に着替え始めながらも、頭の片隅にはまだ先ほどの三栖みすずとの再会の記憶が残っていた。その胸中には、微かな焦りとともに、どこか懐かしさのような感情も入り混じっているようだった。




...




撮影が始まると、刃霧はぎりはすぐにモデルとしての顔に切り替わった。柔らかなライトが照らす中、化粧品のテーマに合わせて微笑みを浮かべたり、やや挑戦的な表情を作ったりと、カメラマンの指示に的確に応じていく。その姿に周囲のスタッフも感心の声を上げていた。


「いいね、その角度!もう少し顎を引いて…そう、完璧だ!次は後ろを向いて、顔だけこっちを見るようにしてくれ!」


シャッター音がリズムよく響き、現場は順調に進行していた。

<おわりに>


少しでも続きが気になる!!と思ってくださった方は、待っててくださるとモチベアップです!!


刃霧の隠している”あれ”とはなんなんでしょうね...


次回は、学園のことについて触れていきますのでお楽しみに!

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