② あんたら初対面??
<はじめに>
前回、キャラ名に振り仮名を振らないという不親切設計になってしまったので、今回は振らせていただきました!⸜(*˙꒳˙*)⸝
★刃霧月斗、阿久津蓮、明日菜渚、三栖楓怜
誰かが空気にならないように頑張って書いてみましたがいかがでしょうかね。是非読んでもらえると嬉しいです!
「はーい。では、初日ということで、今日はこれで解散です。先程お伝えした教室に各自、教科書を取りに行ってくださいね。では、また明日!」
担任の先生が連絡事項を終えると、教室内は再び賑やかな雰囲気に包まれた。生徒たちが帰る準備を始め、活気が戻る。
(さて、教科書をもらいに行って、帰ろうかな…)
刃霧は教室内を見渡しながら、ふと目を止めた。阿久津の席に向かう女子生徒がいた。彼女は恥ずかしそうに微笑みながら、声をかけている。
「阿久津くん、初めて見たときから、すごくかっこいいなって思って…」
その瞬間、阿久津はピタリと動きが止まり、顔色がわずかに青ざめた。刃霧は心の中で疑問を抱き、思わず凝視する。
(あれ...どうしたんだろう)
女子生徒も驚き、返事のない阿久津を見て戸惑い、辺りには一瞬気まずい沈黙が流れた。
「おい、阿久津、教科書取りに行くぞ」
その時、三栖が淡々と声をかけた。まるで何事もなかったかのように、事態を収めるために介入したようだ。
「刃霧も...」
「ちょ、三栖!」
突然名前を呼ばれた刃霧は反応が遅れ、咄嗟に言葉を出す。だが、そのまま三栖に腕を引かれ、半ば無理やり教室を出ることになった。
阿久津は女子生徒に軽く会釈をし、急いで三栖の後を追いかけた。その様子を見た女子生徒は困惑した表情で、ぽかんと口を開ける。
「え…あの三人、友達なの?」
....
廊下を歩きながら、刃霧は三栖の腕を振りほどこうとするが、なかなかうまくいかない。
「ちょっと、三栖!さっき、無理に話さなくていいって言ってたじゃない!」
「状況を見て変えただけだ。それに、ああでもしないと、あの場はもっと気まずくなる」
三栖は冷静に答えると、無表情で刃霧を見つめた。刃霧は不満そうにしながらも、腕を引き抜こうと試みる。
「三栖、そろそろ放してくれよ。周りの目が気になるんだよ」
「ん、あぁ、わるい」
刃霧は小さく息を吐き、周りを見回しながら肩を落とした。三栖はその様子を無言で見つめていた。
「待ってくれ!」
その時、二人の後ろを阿久津が息を整えながら追いついてきた。
「さっきは助かった。あんなふうに、名前を呼ばれるとは思わなかったが…」
まだ少し緊張の残る表情だが、どこかほっとしたように見えた。
「いや、いい。逆に悪かったな。初対面なのに馴れ馴れしく名前を呼んで。だが、あまりにも見るに堪えない空気だったからな…」
三栖は言葉を続けた。
その言葉を聞いた阿久津は頭を掻きながら話し出した。
「あー、そんなに…空気悪かったか?」
「うーん、あの子に突然話しかけられたからと言えど、遠くから見てもあまりにも違和感が凄かったよ」
刃霧がすかさず感想を述べた。
「えー、そうかなんか恥ずいな。......くそ、こっからの課題だな」
阿久津が最後にボソッと言っているのを聞こえた刃霧はその言葉の真意を聞こうとしたその時、前方から明るい声が響いた
「あっ、月斗くん!えっと、お隣は三栖くんと阿久津蓮くんだっけ?」
前方から明日奈が歩いてきた。彼女はとても可愛らしく、女の子らしい笑顔を見せている。その姿は、遠目から見ても本物の女の子のように映った。
「知り合いなのか?」
三栖が刃霧にこっそり尋ねる。
「いや、さっき隣の席に座ってただけだ。明日奈、もう教科書取りに行ったのか?」
「うん!一番乗りで取りに行っちゃったよ。これから来る人が増えそうだから、早めに行ったほうがいいかもね」
「そうか、ありがとう」
刃霧が短く礼を言うと、明日奈はにこりと笑い、三栖と阿久津にも視線を向けた。
「え、蓮くん、具合でも悪い?」
「え?」
刃霧と三栖が阿久津に目を向けると、阿久津が再び青ざめていた。
「ちょっと、平気?」
刃霧が阿久津を揺らしても、気が戻る様子はなかった。
「ふふん、さては僕の可愛さにやられたかー」
明日奈が冗談交じりに言うと、その言葉を聞いた阿久津の顔色が徐々に戻り、どこかバツの悪そうな表情を浮かべた。
「え、あ...そういうこと?あー、明日奈だったか、すまん、悪かった…」
「...?なんだか、平気そうだな」
三栖が静かに呟く。その言葉に明日奈が三栖に視線を向けると、三栖は少し困ったような顔をしながら口を開いた。
「なんだ、俺の顔になにかついてるか?」
「え?違うよ!」
明日奈は笑いながら首を振り、続ける。
「ただ、自己紹介の時に下の名前、言ってなかったから、気になっただけ。僕、記憶力は良い方だからさ」
「あ、たしかに。三栖としか言ってなかったな」
刃霧も先ほどの自己紹介の様子を思い出し、三栖に向かって言った。
「.......楓だ。三栖楓」
「楓だね。うん、覚えた、ありがとうー」
明日菜は嬉しそうにしていた。少し間を置いてから、彼はふと思い立ったように言った。
「じゃあ、せっかくだし、ちょっと寄り道しない?こうして集まったのも何かの縁だと思うし!」
その言葉に刃霧はチラリと自分の腕時計を見ながら言った
「あー、ごめんね。今日は初日で、すぐ終わると思ったから、あらかじめ仕事を入れちゃって…」
「仕事?なんかしてるのか?」
阿久津が突然質問を挟む。
「えー、自己紹介の時の騒めき、聞いてなかったの?月斗くん、今を時めく超人気モデルなんだからね!」
明日奈は阿久津に頬を膨らませながら説明する。
「あー、怖い顔するなよ。俺、そういうの疎いからさ、許してくれ」
会話が続いている中、刃霧は突然、胸元に重みを感じ、驚いて前を見た。すると、三栖が複数の教科書を持ち、その一部を刃霧に渡してきた。
「ほら、混みそうだったから、まとめて先に取ってきた」
「...相変わらず仕事早いね。ありがとう、助かったよ」
刃霧はにっこりと笑い、三栖にお礼を言う。
「…」
明日奈は、視線をうつし、教科書を阿久津に渡そうとしている三栖に声をかけた。
「楓くんはどうする?寄り道に付き合ってくれる?」
三栖は少し戸惑いながらも、阿久津と明日奈を交互に見て答えた。
「すまない、今日は無理だ...」
「じゃあ、俺も今日は帰るわ。教科書サンキューな三栖。また誘ってくれー」
阿久津も三栖から受け取った教科書を鞄にしまいながら、みんなから離れて行った
「えー、悲しいー!じゃあまた明日ねー」
明日菜は少し寂しそうに教室に戻って行った
その様子を見ていた刃霧はみんなに軽く手を振りながら、素早く一人で校門の方へ向かい始めた。
その、背中にはどこか疲れたような雰囲気が漂っている。
(まったく…初日から楓に再開するし、一体どういう運命なんだか...。でも、みんないい人そうで楽しい学園生活が送れそうだな)
そう思いながら、刃霧はポケットからスマホを取り出し、仕事先への確認の連絡をした。ふと、彼は先ほどの明日奈の笑顔を思い出す。
(いいな、あんな感じにいれて...ちょっと羨ましいな…)
・・・
——学園に通うものは、みな”闇”を抱えている。もちろん刃霧もその内の一人だ。
<おわりに>
さて、4人の交流はいかがでしたか!?
最初書いた時は、入学式の日なのに、初回授業を始めるというとんでも展開になってて、自分にツッコミながら書き直していましたw
次回は刃霧月斗視点になります。お楽しみに⸜(ˊᗜˋ)⸝