表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雑草の花束  作者: 片喰
96/163

【朝支度の一同】結

「あ、今日はつけてんすね。」

 洗面所で会ったラオメにそう声を掛けると、相手はきょとんと目を丸くした。

「え?」

「ピアス。」

 数秒間を置いてから、ラオメは自身の耳に触れた。可愛らしいデザインだが、それだけでは誤魔化されないほど大量のピアスだった。昨日までつけてなかった分、目立って感じる。多分、仕事のときは安全重視でつけていないのだろう。引っ掛かったりしたら、確かに危なそうだ。

「…僕がピアスつけてるの、結、初めて見るんじゃないっけ?」

「ピアス穴あったんので。つけないのかな〜って前から思ってたんですよ。」

 ラオメが数秒の間の後、いつもの明るい声に()()声で、

「よく見てるね〜!ネイル変えたのとかすぐ気付くタイプ?」

「…。割と気付きますよ〜。ラオメは昨日塗り直したでしょ。」

「え、凄。色は黒のままなのに。結もやるの?ネイルとか、メイクとか。」

 今度は俺が数秒黙る番だった。その数秒間に脳内で流れた記憶は、誕生日を祝う母親と、おれの体が"腐ら"ないことに心底の笑みを浮かべた光羅謝と、ファオマ帝国の少女に毅然と勇気を贈ったラオメだった。

 なんだかバレてしまいたい気分になって、その暴力的な魅力に魅入られた一瞬の間に、言葉が出ていた。

「メイクは、自分で言うのもアレっすけど、上手い方だと思いますよ。」

「へぇ。時間あるときにでも教えてほしいな。」

 ラオメは笑っていなかった。だが俺にはそれ以上進む度胸は無くて、笑顔で手を振った。

「じゃっ、俺お医者さんとこ行くんで。いってきます。」

「いってら〜。」

 結局、ラオメは俺に合わせて笑ってくれた。

 洗面所を出ると、リビングで洗濯物を畳んでいた光羅謝が顔を上げる。

「あァ、女医んとこ行くの?いってらつしゃい。」

 今更だがこの男は、昨日の血の実験を自宅で行ったのだ。"仲間"の前を避けて。何故か?己の血が、ラオメとおれ以外は"腐ら"せると悟っていたから。ラオメとおれ以外から愛されている自信がないから。…愛されていない自信があるから。

 そんな相手にとって血の話云々なんて関係ないのだから、伝える必要は無いと、あっさり決めれる男。

「いってきまーす。」

 俺がここを出れば、ラオメはこの男に何か言うだろう。結は何か隠している、と言うか、あの子に気を許しちゃ駄目だよ、なのか、それとも、もう俺をここに帰らせない決断をするかもしれない。そしたら、雑で淡白で情の深いこの男は、どうするのか。

「結。」

 ドアノブに手をかけた姿勢で、振り返る。

「_なんすか。」

「昼飯は要らないっつーのは聞いたけどォ、夕飯は聞いてなかったと思って。要る?」

 ふっと、頬が緩んだ。おれはここに帰れる、気がした。

「欲しいです。お願いします。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ