【コピーな男たち】ラディ
紙を捲る。僕以外誰も居ない室内に、ぺら、と音が響く。そこにある名前を片っ端から読み上げていく。僕が"コピー"できる能力というのは、魔術だけしかない。伝説の<魔女>は、他人の長所なら何でも"コピー"出来たらしいが。
狩り隊ロップ国支部。近くにある頬睦利町に<使者>が集合していることから、ここは本部と同じくらいの重要地点とされている。まあ、もうひとつ他の理由もあるのだが。
鐘の音が聞こえてきて、昼休憩の時間だと分かる。昼食の入れた紙袋を摑んでいつもの公園へ向かった。
遊具がないせいか、平日の昼という時間帯の問題か、綺麗な割に人の少ない公園だ。いつも散歩するおじいさんくらいしか居ない。僕はベンチに陣取って昼食を始める。
「あっ、あの、今あの、いいですか?」
程なくして、1人の青年が目の前に現れた。気弱そうな雰囲気が濃厚な緑の目。横髪を留める3つのヘアピン。
僕は眼鏡のブリッチを押し上げる。激しく動くときは基本裸眼だが、<使者>探しと事務作業などの仕事中や、プライベート中は眼鏡を使っていた。コンタクトの方が便利だろうが、僕の視力の低さだと合うコンタクトレンズは無いとも聞く。
「お久しぶり、です。」
「誰?」
「ちょっと前、路地裏で。あっ、こうすれば分かるかも。」
そう言って彼はヘアピンを外して髪を乱した。そうなると、なるほど、うっすら見覚えがある。表情のせいか、少し顔つきが違うように思えるが。
「ああ、君か。いや、こう言ってはなんだけれど、よく治所から逃げ切れたね。それで?狩り隊に入隊する気が起きた?」
「別件でして。
…腐敗と昇降の<使者>に、会ったんです。この情報はきっと、狩り隊の皆さんの力になれると思うんです。」
ぎょっとする。居場所以外は何ひとつ摑めない、しかも何年も狩り隊が殺されている相手だったのだから。狩り隊で彼等に会った者は、ほとんどもうこの世に居ない。会ったが最期と言われる、SLAY反応武器にすら勝った、最凶の<使者>。そんな人物に、会った?
「…詳しく、話して。」
ベンチから、身を乗り出す。




