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雑草の花束  作者: 片喰
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【想起】ラオメ

 複製の<使者>とどう出会ったかは、結に話させた。彼がいちばん最初に会っているからだ。その後、羅謝が説明を引き継いだ。

「複製の<使者>について分かったことが3つ。1つ、あいつは腐敗と昇降の魔術を使える。2つ、あいつの強化条件は口に関連する可能性が高い。3つ、何故か操作の魔術を使わなかった。」

「口?女医の予想では、名前に関連するのでしょう。口というのは本当なんですか?」

 リモンドが小首を傾げるので、僕は頷いてから自分の口を指差し、

「だってマスクをしてたんだよ。チームプレイも多い狩り隊が、声の通りづらいマスクをわざわざつけるんだよ。理由なんて、強化条件の文字を隠すため以外ある?」

 リモンドはゆっくりと頷いた。理解したらしい。東部の言語を網羅しているこの男は、存外に地頭があまり良くない(メッチャ失礼に聞こえるけど、本人も公言してるからセーフ?)。今の彼の力は、本当に努力の賜物だった。

「補足。口と名前が両方関わってる強化条件ってェのもある。名前を口にするんだ。これェ割と信憑性あるぞ?戸籍を見て名前を1人ずつ言ってけば、誰が<使者>か分かる。マスクしてなけりゃァ名前を口にするタイミングで、魔術発動タイミングが分かっちまうし、<使者>の名前を知ってる相手なら出てくる魔術の種類もバレちまう。」

「なるほどね~。それだと確かに、色んな魔術を使えるってゆー複製の<使者>の利点は消えちゃうもんね。」

 僕はウンウンと首肯する。それを見てから飛鳥が小さく手を挙げた。

「1つ目と2つ目は分かった。3つ目はどういう意味なの?」

 3つ目、操作の魔術を使わなかった。

 操作の魔術は、飛鳥が所有している。操作の<魔女の使者>として、余計気になったのだろう。

「正直、俺にも分かんねェ。まァ二大強力魔術は往々にしてハイリスク・ハイリターンだから、それを嫌ったとも言えるが…、」

「あの男は、腐敗の魔術は使った。」

 続きを結が引き取った。羅謝は頷く。

 操作の魔術は、視界に入った全てを"操れる"。敵の仲間割れも自滅もオテノモノ。一方で、全身が見えてなければ精度はガタ落ちらしい。もしくは目隠しされれば無力に等しい。

 一方の羅謝の魔術も、五十歩百歩のハイリスク。敵を全滅させるのも夢ではないが、大量失血の危険がいつも背後にくっついているのだ。腐敗の<使者>は血を作れるとは言え、そのスピードを失血のスピードが追い越すなんてしょっちゅうある。

 どちらも同じだけハイリスク・ハイリターンだとは思うが…。

「何かあるの?操作の魔術を使うのに必須の才能的な。」

 人懐こいマリーゴールドの瞳に誘われたか、飛鳥は考え込みながら答える。

「視力があれば別に出来るけどな…。コツも要るけど、それは他の魔術だって一緒でしょ?」

「コツ?血ィ撒きゃァ済む。」

「私も蹴るか踏むだけですね。」

 真顔の男二人に、他の<使者>は忌々しげな顔を返した。

「こいつ等は無視していいよ。」

「良かった。あの苦労は解体の<使者>だけかと思いました。」

「そんなことないよ結。あたしも大変だったわ。センセイもでしょ?」

「練習せずに治癒の魔術を習得した奴がいるなら、取り敢えず殴るな。」

「俺等も苦労はあったし練習もしたってェ…。」

 抵抗は一顧だにされなかった。一同は、飛鳥による魔術の説明に戻る。

「後はあれかな、ちゃんと相手を見なきゃないってことかな。こういう体だな、とか、次こう動きそう、とか。筋肉や骨格、目の動きを観察するの。じゃないと精度は良くない。銃の方がマシなくらいよ。」

 飛鳥が肩を竦める。彼女の言葉の少し後、相棒はこう発言した。

「複製の<使者>は、目が悪いんじゃないか?」


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