【集合、不在1人、新参者1人】光羅謝
詳細を説明され、俺は鈍く首肯した。女医の方は、なんで今まで気付かなかったんだと訝しがったが、実際に会ってみないと分からないものだ。そう話すと彼女は、小首を傾げながら頷くという変な仕草をした。
ほぼ同時に、離れたところからよく知る声が響く。
「ちょっとセンセイ!リモンド居るのに煙草吸ったら駄目でしょ!」
甲高い叫び声の主は、見ずとも分かった。飛鳥が到着したらしい。この女を律儀に"先生"と呼ぶのは、俺達の中では蓮と飛鳥くらいだ。他の皆はトゥール語で"女医"と呼ぶ。
「だから外で吸ってんだろ。」
「匂いつくでしょーが!もうっ、リモンドが吸いたくなったらどうするつもり?リモンドはセンセイみたいに肺も癌も"治ん"ないんだからね!」
「じゃあ吸うなよ。」
仏頂面で返す傍若無人っぷりに、飛鳥は余計にぎゃいぎゃいと騒ぎ出す。結局、渋々と女医が一服を止めた。
「も〜ラオメと光羅謝も止めなさいよ!あたし先に入ってるけど、センセイは着替えてきて。」
「オトン…。」
ぼそりと呟きながら、2個隣の家に戻る女医。彼女にしては素直に従うあたり、飛鳥から感じるらしい彼女の父らしさというのは、割合好意的なものなのかもしれない。
「2人もちょっと臭くない?」
「匂い"腐らす"かァ。ラオメ、ちょっと寄って。」
近付いたラオメの分も一緒に"腐ら"せる。女医にやってあげなかったのは、あの人だと体まで"腐ら"せそうで心配だったからだった。
3人でビルに入ると、思ったより打ち解けた様子の3人が見えた。予想通り、結は2人と相性がいいらしい。蓮はいつも愛想良く振る舞うから上手くいくと思っていた。それで結が気をよくすると予想したのではない。結なら共感すると思ったのだ。結と同じで、感情をありのまま吐き出せない子だから。リモンドの面の皮の厚さも、結には近しく感じられただろう。
「お疲れ様〜。あっ、え〜と、結くん…だっけ?よろしくね。あたし飛鳥。」
「はいっ、よろしくお願いします。」
結が清廉をモットーとした笑顔を切り替える。飛鳥は純真で素直な奴なので、結が気を許すまでは時間がかかりそうだ。
「よし、来れる奴は揃ったな?」
最後にやって来た女医は、ぐるりと俺達を見回した。
「じゃあ、お前等。わざわざ招集した理由をさっさと話せ。」
「じゃ〜さっくっと言わせてもらうよ。
複製の<使者>に会った。」
ラオメのあまりにも躊躇いのない言葉に、リモ蓮も飛鳥も目を見開いた。余裕をかましていた女医でさえ。
しかし次の瞬間には、その瞳は鋭く輝いている。
<使者>はずっと防御一択だった。対抗は程々に、基本は狩り隊から逃げるだけ。だから俺達は、歴代初めて、狩り隊に反抗する<魔女の使者>だった。銃口を突きつけられても尚、牙を剥き出し、噛み付かんとする猛獣ばかりが、ここに集まっていた。
「情報を共有するぞ。」




