【川辺の幼子】ラオメ
僕がまだ一桁の年齢だった頃の話だ。
その頃、僕は度々近所の河原に来ていた。そこ以外に一人になれる場所を知らなかったから。その日も僕は一人でしゃがみ込んでいた。
「なんじゃこりゃぁ。」
反射的に振り返った先にいたのは、同い年くらいの少年だった。口元は無防備を演じて緩んでいるのに、翡翠の瞳は虚無な諦めで濁っている。この頃の彼は、愛情欲求と諦念が混在していた。
「何か用?」
彼が何を見ているかは、分かった。僕の魔術で、跳んだり落下したり弾けたりひしゃげたりする石と川の水だ。
「用がないなら、あっち行って。」
目を逸らして、泣き腫らした目を隠す。
「行ってってば、君もこんな風になりたいの?」
ぼろぼろになっても浮遊と落下を繰り返す石を指差す。少年はちらりとそれを見たが、まるで表情を変えずにこちらへ来た。なぜか小指を咥えながら。
「いいの?ぐちゃぐちゃになるよ。骨も粉々になっちゃうよ。」
口から離れた小指には血が垂れていた。ぎょっとする僕に構わず、彼は隣にあぐらをかく。
いつの間にか彼の口から笑みは消えていて、腐った沼みたいな緑の双眸が私の目の前にあった。その沼に小さな魚が一匹ずつ泳いでいるのを、見た。
「寂しいからァ、隣にいさせて?」
その言葉程、この頃の僕達を的確に表す言葉は、この世になかった。
「……いいよ。」
この年になっても、僕達の関係を明確に表せるのは、この言葉しかないのだろう。




