【テレビ】ラオメ
男が廃れる、という言い方が嫌いだった。相棒にその話をしたのは、2、3年前だったと思う。彼がリアタイしていた特撮番組で、主人公の男が口にしたのだ。
「この言い方、好きじゃないんだよね〜。カッコイー決めゼリフ扱いだけど、そんな言い方されたら、じゃあ僕はなんて言えばいいのってなるからさ〜。」
そのシーンは、主人公の敵だったキャラが今まさに味方に寝返るかどうかの瀬戸際のシーンで、ファンにとっては喋りかけるな案件だっただろう。僕だって言ってしまってから気付いて、その後は黙っていたし、彼から返事が聞けるとは思っていなかった。
「よく分かんねェけど、」
光羅謝が口火を切ったのは、寝返った元敵と主人公が敵を壊滅させた頃だった。
「え?さっきの話まだ続いてんの?」
「え?さっきから考えてたんだけどォ…。」
彼は不満そうに口を歪めるが、こちらとしては呆れすら感じていた。ずっと考えていたのか。
「分かんないけど、フツーに、"僕"でいいんじゃねェの?」
「僕って?」
彼はテレビを見つめたまま_光羅謝は話すとき相手の顔を見ない癖がある_答えた。
「僕が廃れる。」
聞いた後すぐはポカンとし、それから笑い声をあげた。
「はァ?結構真面目に考えたのに…。」
拗ねる相棒に構わず、心の底からゲラゲラ笑った。
この性別で生きるなら、どうしても感じてしまう小さな違和感のひとつやふたつ、しょうがないと思ってた。完全に違う訳じゃない。半歩遠い。目を逸らすには大きく、一緒に考え込んでもらうには小さい。中途半端な苦味。
それでも、僕の隣には、毎度ご丁寧に考え込む奴が居た。
いつか、こんな僕にも、そんなヒーロー番組の主人公みたいな機会があったら、言ってやろうと思った。僕が廃れる、と。




