【青空】光羅謝
不自然な風の吹き方だと思った。不自然で、覚えのある風。鼻に触れる香り。原っぱの様な爽やかな苦味の中、微かに、とろりと揺蕩う甘さ。
「まさか…!」
そのまさかだった。不自然な風を訝しんだ4人が見上げた先に、その子は居た。上空20m、風の中心で危なげなく浮遊している。華やかに舞うツインテール。
「昇降の<使者>か。」
複製の<使者>の、平らな声の呟き。それを聞く余裕もなく、俺は上へ叫んだ。
「なんで来たんだァ!!帰れ!」
「2人、来るの遅いんだもん。」
「帰れって!今ァすぐ!」
「やだ。」
ドグドグと心臓が波打っている。結だけなら逃がす算段があった。だけど2人ともとなると、どうだろうか?複製の<使者>が何人の<使者>を"コピー"できるかにもよるが。ラオメが結を預かって逃げてくれれば万々歳だが、相方が俺を見捨ててそれをするとは思えない。ラオメに愛されている自信は、あった。
「なんで逃げてくれねェんだよ…!」
分かってる癖に、と言いたげな天色の瞳。丸い吊り目。それが、何か面白いことを閃いたのか、煌いた。
「ここで逃げたら、僕が廃れる。」
予想外のところから飛んできたパンチに、言葉に詰まった。次いで、腹の奥から笑い声が漏れる。結達は、何処かぽかんとしていた。
「全く…お前にゃア勝てないよ。」
結の胴をぐいと摑む。左手には血がついているため使えるのは右手だけ。ちょっと不安だが、まぁどうにかなるだろう。
相方と目が合った。言葉は無くても、十二分に伝わった。




