【視線】結
つけられている。
ロップ国のそれなりに栄えた町に着いたため、俺達は買い出し中だった。光羅謝が車の燃料補給、ラオメが食料品、俺がコインランドリーにて洗濯を担当。つまり、3人がバラバラに行動していたのだ。
要は、つけてきている男を、俺1人で処理するしかないということ。
「…。」
恥ずかしい話、俺が尾行に気付いたのは、洗濯が終わって町を歩いている途中で、いつからつけられていたのかすら分からない。人通りの少ない路地にあるおもちゃ屋に、昔一部ファンから熱愛されたゲームのポスターが貼られていて、それを止まって見ていたときに気付いた。こんな場所で立ち止まる用事なんて_しかも相手はこの愛すべきポスターが見えもしないのだから尚更_無いだろう。
窓ガラスに写ったその男を観察する。
二十代だろう。俺より身長が低い上に、どちらかと言えば細身の部類。じゃあ狩り隊や治所ではないかと思いきや、細腕の筋肉質な気配と、安定した重心の感じさせる立ち姿が目につく。
「…。」
首の裏で几帳面に括った黒い髪。真っ黒な服装。黒いマスク。背負った黒い荷物。その中で目立つ、くすんだ薄紫の双眸。
こいつは狩り隊だ、と直感が警告してくる。
取り敢えず撒かなければ。俺は橋の方へ足を進めた。予想通り、男も足音を消して続く。
何気ない風を装って、橋の下を眺める。一瞬目をやった後ろでは、男が散歩中の若者のように呑気に歩いていた。
しめた。
散歩を装う相手を置いてきぼりにして、俺は橋の欄干を摑んで体に引きつける。同時に跳び上がり、鉄棒の要領で上体を前へ。ぐるりと回って橋が上に見える。すぐに、さっきの男が欄干に駆け寄ってこちらを見下ろすのも、見える。
パっと手を離し、橋を支える柱に寄り添うような体勢で、足と手を擦り付けながら下に落下していく。ほぼ重力のまま。靴のソールの横が削れる。手も、手袋越しに摩擦熱を感じた。5m程下に広がるのは、枯れ草混じりの河原。他の奴なら怪我をするかもしれないが、俺ならば、このくらいの高さからの着地は成功させられる。
上に居るだろう相手へ、俺は笑顔を向けた。何故か嘲笑だとバレない、おれの笑顔を。




