【夢心地】結
呻き声が聞こえて、はっと目を覚ます。辺りは暗い。夜明け前だった。唐突に、今日の風呂上がりに喰らった、気分の悪くなるような現実を思い出し、呻いたのは自分だったのかと苦笑した。
だが、そうではなかった。呻き声は隣のベッドから_ラオメからだった。暗がりに慣れた目には、歪んだ顔がうっすらと捉えられる。そして、そのすぐ横の背中。
背を垂れた長い黒髪と、ちらと見えた黄色いメッシュからして、光羅謝だろう。ベッドでは寝られないと言って、椅子をつなげて寝ていたはずの彼が、今はラオメのベッドの脇に屈んでいた。
「大丈夫だよ…。」
ラオメの唸り声に溶けない、囁き声が耳に触れた。声の主は、ラオメの絡まった髪を解いてやっている。
少しして、慰める声は歌に変わった。単調なリズムと夢見がちな歌詞。聞き覚えのある子守歌だった。幼い頃、母親が歌っていたのだった。あの頃はおれの気持ちをささくれ立たせるだけだった歌が、何故か今は、おれを穏やかな心地にさせた。
取り立てて元の声が高い訳でもないのに、低音の部分で思い切り掠れてしまう声。ただ喋るときもその気があったが、歌うと一層目立つなと、闇と戯れる長髪を眺める。
ラオメの穏やかな寝息が聞こえた。表情も安らいでいる。光羅謝は最後にもう一度、アリスブルーの髪を梳くと、元の椅子をつなげた寝床に戻った。
目を閉じる。頭の中を、さっきの子守歌が泳いでいる。ただただ、愛しい人の苦しみが消えることだけを願っている声。
よく眠れそうな気がしてすぐ意識がふやけ、次に目を開いたときにはすっかり朝になっていた。




