表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雑草の花束  作者: 片喰
60/163

【夜】ラオメ

 その日の夕食は、昨夜同様アヨマちゃんの家で食べさせてもらった。肉や魚どころか乳製品すらない食事だが、想像より華やかだった。色とりどりの葉物野菜や豆類が並び、焼きたてのパンの香りが食欲をそそる。

 光羅謝と結は時折、今日の訪問先の感想を言ったりレシピを聞いたりしながら、談笑混じりに食事をしている。無論、僕だってそれらしく笑ったり驚いたり聴いたり話したりするのだが、どうにも、足元の浮ついた感覚が拭えなかった。

 昨日から気になってたけど、羅謝さん、生の野菜は食べないの?いやァちょっと苦手で。あら、じゃあ次は違うのを出すね。好き嫌いして、よくそんなに背が伸びたな。俺もそのくらい欲しいなあ。もう伸びなくな〜い?出身国でも変わりますけど。どこ出身だっけ?輝万国です。へえ、なら伸びるんじゃない?

 ライ麦パンで口の中がカラカラだった。

 夕飯がお開きになると、僕等は借りている部屋に引っ込んだ。昨夜は皿洗いの手伝いを申し出たが、断られたのだ。どうも、ファオマ帝国の伝統的に、家族以外が台所に入るのは良くないらしい。

 アヨマちゃんの家でも一番広いだろう部屋が、僕等の借りている部屋だった。3人別々の部屋は用意できないから、せめて広い部屋を…とアヨマちゃんの母親は言っていた。ここは元々長男の部屋だそうだ。つい数年前に、他国へ移住したとのこと。

 結がお風呂を借りているとき、羅謝が首を傾げた。割と近くから、音楽が聞こえてきたからだった。

「…近いなァ…。…下か?」

 ベッドに腰掛けたまま、彼はベッドの下を覗いた。僕が側に来たときには、羅謝は小さな直方体を取り出していた。掃除が行き届いているようで、埃ひとつ付いていない。これが、さっきの音楽を再生していたのか。

「へ〜、可愛らしい音楽じゃん。」

「なんかさァ、下にノートみたいなのがあんだけど、見たら駄目かな?」

 相棒の目がキラキラしているものだから呆れた。こいつは変に探究心があるから困る。とは言え、僕とて気にはなる。

「こっそりだよ、こっそり。」

 2人でニヤニヤとノートを取り出していると、ちょうど良くお風呂上がりの結がドアを開けた。僕等は振り返って手招きする。

「うわー、2人して何やってんすかー?」

 お風呂上がりのため下ろした前髪ごしに、眉尻を下げているのが見える。羅謝は笑顔で、

「お前、やっぱァそっちの方が似合うわ。」

 結構前から彼が言っていることだった。曰く、結は前髪を上げない方がしっくりくると。

「いや普段の髪型のが結は気に入ってるんでしょ?それをさ〜そーゆー風に言うの、結的にはどーなの?」

「え、いやー、おれはヤじゃないっつーか、寧ろ嬉しーですけど。」

 クシャミを我慢する顔とニヤけるのを隠す顔を混ぜたら、こんな感じだろうなあという表情で、結は目を逸らした。羅謝は頓着することなく、もうノートに目を移している。彼は時々だが、自他の感情に鈍感なふしがある。

「このノートがベッドの下から出てきてさァ、見てみようぜェ。結も共犯ね。チクったら腕立て5回。」

「ペナルティ簡単過ぎんだろ。」

 結のボヤきに指を振ってから、羅謝はノートを開く。相棒の上から、僕も覗いた。結も好奇心に負けたと見え、腰をかがめる。

 力強い筆跡が、びっしりとノートの一面を埋めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ