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雑草の花束  作者: 片喰
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【この国は】光羅謝

 俺達は家に上げてもらい、野菜スープを馳走になりながら、お互いのことを話した。アヨマの両親は隣国で知り合ったとか、アヨマは幼少期からお喋りだったとか、『フラ・アンブロシオ』の仕事とか、結がどう合流したかとか。嘘も交えて。

「あら、アヨマ、教会に儀式のお願いしてるんじゃないの?そろそろ行かなきゃじゃない?」

 スープの皿を洗い終わった頃、アヨマのお母さんが言った。アヨマも時計を見上げ、

「あっ、本当だ。皆さん、教会へ行きましょう。」

 『フラ・アンブロシオ』と結を連れ、アヨマは教会へ向かった。徒歩で行けるらしい。ファオマ帝国自体も小さいが、何より、村ごとに教会があるお陰で皆が行きやすいと聞いた。その分建物は質素になるのだろうか、と俺は小さな教会を見上げる。声に出す程、俺は失礼ではない。

「おやまあ、誰もいないんですね。」

「儀式は少人数であればあるほど効力が増すんです。ですから、ここに村人がいないということは、それだけ彼等が皆さんの<ファマの愛>の授与に賛成しているということです。」

「それなら良かった良かった〜。」

 儀式をする神父は筋肉質な中年男性だった。アヨマを助けたお礼から始まり、その後は儀式のための呪文みたいなのを延々と聞かされた。帰る頃には夕方であるのだから呆れた。

「今日はわたしの家に泊まっていきませんか?母達も喜びます。明日はこの国を案内しますよっ。と言っても、観光地なんて1個も無いんですが。皆さんに、わたしの故郷を知ってほしいんです。」

「それは嬉しいなァ。この国のね、生きている()()を教えてほしいな、是非。」

 微笑んで返す。アヨマも弾むような笑顔を見せたが、俺の方はそんな無邪気なもんでは無かった。

 <使者>にとって、この国は天敵であり、敵地の地図の隠し場所だ。

 これは、この国が狩り隊に武器を卸し始めた5年前から、<使者>の間での共通認識だった。武器の構造や弱点を知れれば、次の戦いでもっと安全に勝てるかも知れない。新たな武器の情報を得られるかも知れない。そんな希望に突き動かされて、以前に俺達はファオマ帝国不法侵入を試みたのだ。それは失敗に終わったが…今、俺達はファオマ帝国に入っているのだ。これを逃さない手は無い。

 相方とて、観光などではなく、武器製作場を覗ければ上々と思っているのだろう。

「この国の主要産業は何なの?」

「昔は陶器類の輸出が盛んでしたが…今は麦と武器の輸出が多いですかね。」

「麦と武器か〜。正反対な印象を持ちますがね。俺、両方見てみたいな。」 

 好青年の笑顔で結。アヨマも嬉しそうに何度も頷いた。

「勿論です!わたし、見に行く場所の目星がしっかりあるんです!」

「楽しみで今日は寝れないな〜。アヨマさん、ホントにこの国が好きなんですね。」

「はい。だってここは、わたし達の楽園ですもの。」

 結が笑顔で何か返した。よく出来る、と感心混じりの心配を感じた。相方もいつもの笑顔で頷いている。この子はいつも、笑顔の殻で身を守るのだ。どうにもしてやれない自分が情けなくて、そんな風に笑ってしまうラオメが悲しくて、綺麗に応じる結が不安で、こんな世界を蔑視しているのに、いつか変えられないかと期待する自分がいる。


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