【相対】結
意外だったと感じつつ、ソファの上でこっそり周りを見回す。
ツインテールの人物は、メッシュの男性が起きると、俺を家へ招こうと言い出したのだ。ポカンとする俺を差し置いて、寝ぼけ顔の男性はこくこくと頷いた。そうなれば断る方が下策と思え、彼等の家へ着いて来た訳である。俺はソファに、ツインテールの人物は小さい椅子に腰掛けていた。
「悪いね。普段なら紅茶くらい自分で淹れるんだけど、茶葉がちょうど今切らしててさァ。」
メッシュの男性が、お盆に乗せた3個のティーカップを運んで来る。細かな花柄のティーカップの中身は、紅茶だった。市販の物を入れたのだろう。ツインテールの人物が配膳を手伝う。
「ありがとうございます、頂きます。」
「畏まんなくていいよ。まずは、相方と俺を助けてくれたこと、礼を言う。ありがとう。」
「僕からも改めてありがとう。」
2人から頭を下げられ、慌てて手を振った。
「いっ、いえ、おれが自分でやったことなんで、そんな。」
「…名前、結で合ってるよね?結ちゃんはさ、家、探してるんだよね?」
顔を上げた途端、突然の問いかけ。
「え?あ、はい。大学へ通うのに安いアパートかなんか探そうと…。」
「まだ見つかってないんだよね?ちなみに同居とか平気な人?」
「はい、大丈夫です。あ、でも俺、夜中ゲームしたりするので、それでも平気な人じゃないとだめかも。それが何か?」
「羅謝は平気?」
「平気平気ィ。」
「僕も。よし、じゃあ僕等と同居ってどう?」
ポカンとして数秒後、はい?と訊き返した。しかしそれを気にしないツインテールの人物は、黒ネイルの指を立てて、同居の条件を示していく。
「家賃は要らない。ご飯のお金はあった方が嬉しいかも。洗濯機とお風呂は貸せる。」
「その代わり、俺達の仕事を偶に手伝ってほしい。」
顎を引く。仕事。家も洗濯機も風呂も貸すほどの仕事?何をやらされるんだか分かったもんじゃない。悟られないように出口を確認した。さっきみたいに、ツインテールの人物が出口を塞いだりはしていないから、逃げようと思えばいつでも逃げられる。
「仕事内容は?」
怪しいけれど、そこは苦学生(正確には、来月の入学式からそうなる)。一応訊いてしまう。2人は目配せして、メッシュの男性が説明役を引き受けた。
「警護とか狩り隊の対応とかだ。今回キミに参加してもらいたいのは、狩り隊に追われている女の子を、ファオマ帝国まで送り届けること。後払い報酬は<ファマの愛>。前払い報酬は俺達から、SLAY反応武器の新情報。」
SLAY反応武器。
気付けば上体を前に乗り出していた。
「そんなの教えていいんですか。」
「今回、仲間が喰らってる。教えとかないと一緒に仕事するとき面倒事になるか、キミと俺達のどっちかが死ぬ。」
「一緒に仕事?てことは、ファオマ帝国までお二人も一緒なんですか?俺ヒトリでなく?」
「当たり前じゃん。僕等が受けた依頼だからね。本来、僕等だけでやるべきだけど、<悪魔殺し>の話があるから、君に頼むんだ。」
<悪魔殺し>なんかに俺だけで何が変わる?使い捨ての盾が欲しいのか?
「…仲間、いるんですよね?なのに何故、俺に頼むんですか。」
2人がまた顔を見合わせた。ツインテールの人物は困った表情だが、メッシュの男性は発言許可を求める目である。2秒も無く、彼等の視線だけの話し合いは済んで、メッシュの男性が口火を切った。
「親近感。」
途端おれは、これはまけたと察した。
「…分かりました。この話、受けます。」
目の前で2人が、威勢の良いハイタッチをした。




