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雑草の花束  作者: 片喰
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【針】リモンド

 <悪魔殺し>を喰らったとき、走馬灯のように昔の記憶が私の頭を流れた。しかしそれは一瞬で、すぐに絶望的な現状に意識が向く。

 糞、と己の失態に毒づいた。直後、とある話が頭に浮かんだ。それは『フラ・アンブロシオ』と飲みの席で<悪魔殺し>について話していたときのものだ。彼等曰く、もしかするとSLAY反応武器の幻覚成分は魔力に乗って脳に侵入するのでは、という予想だった。だから、魔力を止めれば可能性がある。

 同時に、毒針が刺さったときの対処法として、ガサツな祖父が口にしたことを思い出した。刺さったとこを切っちまえばいーのよ、と。

「…ッ!」

 近くに居た女の刀を奪って、針の刺さった親指を切り落とす。情けなくも恐怖で手が震えていた。いやいい、後で女医に"治して"もらうさ。高くつくだろうけど。

 ぎょっとした刀の持ち主へ血を飛ばしながら、SLAY反応武器を持っていた相手を蹴り上げる。撃たれる前に弾は魔術で1個だけにしたし、狩り隊も私相手に何発も撃てるとは思わないだろうが、念には念を入れたかった。

 いつ悪夢が始まるのか分からない。応急処置は成功したのか、どうなのか。応急処置が適切であれば、この後魔術を使うのは危険過ぎる。だが、魔術を使わないのもまた、身一つで狩り隊に勝てるのかという疑問が湧く。そりゃもう、破裂した水道管から溢れる水のように、湧く。

「かかれっ!撃ったぞ!」

「いや待ってろ。今に悪夢が始まる。」

 怖くて堪らない。

「いいや、始まらねぇよ。」

 だが、私は強がって笑った。どうせ、私の魔術は『フラ・アンブロシオ』や飛鳥のように強力でも、女医のように壮大でもない。物体を増やすか減らすかするだけ。なくても戦える。闘い抜いてやる。

 あの人のもとに、帰りたいから。

「俺が勝つ。」 

    ●Apfel→Wiederbelebung●

 狩り隊のひとりは逃げて辞職したらしい。彼はこのときの戦いについて、唖然としたと述べた。

 増減の<使者>は、<悪夢殺し>を受けてから魔術を一切使わず、しかし次々と狩り隊を蹴り飛ばしていったのだから。その顔には鬼気迫るものがあり、家族の待つ家へ今日も無事に帰りたいと願う己の感情が重なって見えたそうだ。

 ああ、自分は間違っていたのでは?共存し得るのでは?そう思って<使者>へ一歩近付く。当然、<使者>は蹴りつけんと足を回してきた。それは、この狩り隊だって予測できたし驚かなかった。

 しかし、目に入った文字に、共存など御伽噺と痛感してしまった。

 <使者>の証明であるその文字は、こんな意味を脳味噌にぶつけてきていたのだ。

 "跪け、さもなくば逃げ回れ"

 それは、踏み付けることが強化条件の<使者>だから一層強烈な文句となり_その狩り隊は現場から逃げ出した。

 もう分からなくなったんだ、という言葉で、その狩り隊は話を締めくくった。

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