【ショッキングピンク】リモンド
狩り隊の所へ着いたとき、私は狩り隊と対峙するいつもの格好だったので、狩り隊もすぐに増減の<使者>と気付いた。武器がこちらを向く。
彼等の今持つ武器は銃では無い。昔、ある狩り隊が完全に銃頼みで私を襲って来て、その頼りなさが可笑しかったので銃弾を1個に"減らして"あげたことがある。それ以来、狩り隊はトラウマのように私相手には銃を使わない。刀だの槍だのが、果たして増減の魔術に対する最適解なのかは、私にもよく分からない。
「相変わらず派手なカッコしやがって。」
そう言った相手の顔に覚えはない。資料か何かで私の写真を見ただけの癖に、知った口をきいているのだろう。
「個人の趣味にブーブー口出してんじゃねぇよ、てめぇ喋るの1日目の赤子か?」
軽く嗤って返す。「フリーの通訳者且つカメラマンのリモンド」としては考えられない程に粗野な口調で。どちらかと言うと、中学生の頃に近かった。
「趣味が悪いんだよ、どー考えても。」
否定はせずに自分の髪を梳いた。目に痛いくらいのショッキングピンクが見え、少し気分がアガる。くすんだグリーンの地毛とは正反対の色のそれは、勿論ウィッグだった。
服の方も、ウィッグに負けず劣らず目に五月蝿い。アロハシャツに豹柄のパーカー、そしてダメージジーンズの赤いパンツ。そして裸足。趣味が悪い自覚はある。子供の頃からだったから、悪趣味という言葉は耳にタコが出来るくらい言われている。
だが別に、この趣味をおどおどと申し出るような真似はしまい。隠す必要も感じない。彼の隣に立ちたいなららしくあれと隠していた時期もあるが、今は仕事着は兎も角、普段着はさして趣味を封じていない。
まあ狩り隊に会うときは、持っている中でも最も派手な物を意図的に選んでいるが。
「いいじゃん。こっちのほーが気分いんだよ。」
それに、下手に仕事着みたいなので来たら、「フリーの通訳者且つカメラマンのリモンド」が増減の<魔女の使者>とバレる可能性もあった。その場合、蓮にまで被害が及ぶかもしれない。絶対に避けるべき事案だった。
「<魔女の使者>ってのは、やっぱり狂ってやがる。」
どっちがだ、とは思ったが口には出さない。代わりに、狩り隊の集団へ向かって駆け出した。
突き出された短剣を横から蹴飛ばし、ガラ空きの胴に膝を叩き込む。壁に衝突する音だけ聞いて、背後に迫った狩り隊に回し蹴り。しゃがんで躱されたのでそのまま踵を落とす。首の辺りがヒヤリとし、矢が来るなと察した。手を伸ばして飛んできた矢を摑む。手の平の皮が少し剥けた。矢が飛んできた方角へ、ダーツの要領で投げてやる。その悲鳴が消える前に近場の女の腕を蹴りつける。骨が見事に折れる音が聞こえた。さあ次。向けられた槍を摑んで引っ倒し、その勢いのまま…
「…?」
狩り隊の視線が一斉に私の後ろへ向く。なんだ?槍を向けてきた男の顔面に膝をぶつけながら、そちらを見やる。瞬間、絶句した。
そこにあったのは黒光りする機関銃の形の武器。
しかし機関銃でないのは明らかだ。銃口が狭過ぎる。まるで毒針でも撃つみたいに。それにこの気配…。
「<悪魔殺し>…!」
銃口がこちらに向く。蹴飛ばそうとするが間に合わないのは分かりきっている。
爪先に鋭い痛みが駆け抜けた。
<悪魔殺し>を、喰らった。




