【回数券】ラオメ
「今回…、いつものように頼んで平気か?」
女医がらしくない殊勝な発言をするので、僕等はひどく面食らった。僕等と数歳差なはずの彼女は、傍若無人なところがあり、加えて何でも"治せる"せいか人生観や生死観のラインが雑だった。
そんな彼女が、平気か?だって?
「平気かってェ、お前が相手する方が無理あンだろ。」
"いつものよう"とは、女医の狩り隊対応を僕等が引き受けることを指している。女医は"治せる"一方で攻撃手段が0なのだ。ここに関しては八重の方が数段強い気さえする。武器があればの話だが。
『フラ・アンブロシオ』としては頬睦利町の<使者>が減るのは困るし、報酬である「治療4回無料券」は有り難かった。狩り隊の相手は大変ではあるが、慣れっこでもある。
「別にいいよ、やる。30分後だし。」
「…あっそう。なら渡しておく。今回の報酬だ。」
封筒と同じように、パサリと紙が放られた。さっきより随分軽い音で、すぐにいつもの無料券だと分かった。羅謝が手を伸ばして確かめる。
「ヲ。」
羅謝の変な声を不思議に思い、彼に近付き手元を覗き込む。そこには女医らしい無機質な筆跡で、「治療6回無料券」と書かれていた。
「へぇ。」
思わず呟く。女医はシカトして、立ち上がった。白衣のポケットに手を突っ込み、裾を翻して歩き出す。
「生きてたら明日に会おう。」
<悪魔殺し>なんかに負けるなよ、と言い足して彼女は去った。




