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雑草の花束  作者: 片喰
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【電話】ラオメ

 電話の音に起こされた。上ったばかりの朝日で、細くたなびいた雲が金色に縁取られている。

 すでに起床していた羅謝は、寝崩れた三つ編みを結い直していて、まだワンコールしか鳴っていないのに僕が起きたせいで慌てている。可哀想なので代わりにスマホを取った。

「はい光羅謝です。」

「ラオメか。」

 ノリが悪い。そしてこの声。間違いなく女医である。

「そっちから電話なんて珍しーじゃん。何?」

 大きな怪我をしたときは彼女を頼るのが常だが、あちらから電話よこすなど前代未聞だ。アパートが火事にでもなったかと身構える。

 だが彼女からの知らせは、それを上回った。

「狩り隊から頬睦利町の<魔女の使者>へ、一斉に狩り申請書が届いた。」

「え?」

 頬睦利町はほぼ無法地帯だ。僕達がそこに住む理由、それは家賃の低さ以上に<魔女の使者>の多さだった。<魔女の使者>にとって怖いのは、狩り申請書なしの奇襲だ。僕達だって睡眠もショッピングも旅行もする。探せば隙は大量にあるのだ。だからこそ申請書が来れば絶対に迎え討って、申請書を出せば来るという意識を高めている。

 だが万全ではない。事実、僕等は4年前SLAY-89付きの奇襲に遭っている。だから<葬り町>に来た。そこには<魔女の使者>が集まっていて、下手に狩り隊が手出ししにくい状況だった。仮に誰かを奇襲すれば、別の<使者>が援護に来れる体勢が整っていたのだ。『フラ・アンブロシオ』の移住以来、それは一層強固になりつつある。狩り隊は奇襲するより申告した方が安全だと理解し、申請書を1人ずつ渡すようになった。

 それなのに?

「待って。一斉って?日時も一緒なの?」

「ああ。申請書が来た日時も、()り合いの日時もな。お宅のポスト漁ったら、私のとおんなじ内容の狩り申請書が入っていた。リモンドと飛鳥のとこにも。」

「人んちのポスト漁るなよ。」

「必要だったんだよ。申請書に"一斉狩り申請"とかあって、確かめたかった。」

 淡々とした口調だが、内心彼女が何を思っているのかは、全く分からなかった。女医はいつもそうなのだ。元来感情が出ないタチなのか、僕と同様に抑え続けた結果なのか、はたまた感情の起伏に乏しいのか、それすらも知らない。

「実行日、いつ。」

「明後日。」

 間に合う、ということにまずホッとした。明日にはロップ国に着けるし、頬睦利町に行くにも数時間で済む。だがアヨマちゃんはどうする?今、彼女に<使者>バレしていいことなんか1つも無い。理由も言わず頬睦利町のホテルにでも隔離しておく?怪しまれない?逃げても<葬り町>なんかにいたら、やばい人達に捕まるだろうし、最悪僕等目当ての狩り隊に見つかる。彼女を危険に晒したくはない。

「どうしたラオメ。」

 気付くと相棒の顔が間近にあった。助手席で蓮と談笑するアヨマちゃんを確かめてから、小声で手短に説明する。事態を理解すると羅謝の表情も険しくなった。自問の言葉を呟いていく。

「一斉ィ?なんで急に。町には<魔女の使者>が5人もいるんだぞ。対する狩り隊はこないだ俺が何人も殺したばっかだってェのに、相手するだけの人数どうやって…。」

 僕等は同時にはっとした。

 人数はいない。でも、武器なら?

「「SLAY-96じゃなくなったんだ…!!」」

 見張り役に徹していたリモンドも、とうとう僕等の方を見た。

「一斉とか5人とかSLAY-96じゃなくなったとか、さっきから一体何の話をしているんです?」

 SLAY-96はコッツティ王宮の高濃度SLAYによって、SLAY-97へ進化したのだろう。兵器完成の高揚感のままに、彼等はある計画を決めた。

 羅謝と僕は、苦々しい顔を見合わせる。

「「頬睦利町の<魔女の使者>を、SLAY-97で一斉"駆除"する気なんだ。」」

 


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