【煙草】アヨマ
ホテル前の道路では男性陣が待機中だった。ぐでっと木に寄り掛かる光羅謝さん、何故か反復横跳びをする蓮さん、くわえ煙草のリモンドさん。
「ちょっとちょっと!僕等来たんですけど、連絡遅れてごめんとか無いの?」
光羅謝さんと蓮さんの反応スピードは凄まじかった。
「「ごめん。」」
煙草を口から取る分、一拍遅れたリモンドさんも、
「ごめんなさい。」
「み、皆さん優しい…。」
「勘違いしちゃ駄目だよ、アヨマちゃん。光羅謝は喧嘩したくないから謝るだけだし、蓮だって許してくれるでしょ感強強。リモンドは煙草を手に持ったままな時点で終わり。」
「一本いかがです?知らない老紳士から頂いて、ヤクか確認するだけのつもりが、普通に吸ってしまいました。」
地面にブッと唾を飛ばしてから、リモンドさんは煙草の箱を差し出す。明らかに不機嫌な様子に、怒っていたラオメちゃんも流石に引き気味で顔を歪めた。
「え、ちょっと羅謝。何したの。」
「煙草押し付けてきたジジィにリモンド、マフィアになれって誘われたからじゃねェ?」
「昔ワルやってだろ〜って言われてたね。色々ダサい感じのおじいちゃんだった。」
反復横跳びの足音と共に付け足す蓮さん。辛辣。
「ラオメ、残り呑んでくれません?私、一応禁煙中なんです。」
「ならなんで吸った。」
「ストレス発散に。いえ、後悔はしていますよ?でもムシャクシャしてしまったんですよねぇ。お陰で、ニコチン中毒者予備軍に逆戻りです。皆さんはお気をつけ下さい。喫煙しないに越したことはないし、未成年喫煙などもっての外です。」
穏やかに言いつつ、ちびた煙草を地面へ叩きつけて踏み消すリモンドさん。光羅謝さんが若干、眉尻を落とした。
「飴あげる?何味いいィ?」
「葡萄。」
禁煙者から喫煙者になってしまったリモンドさんは、小さな包みを受け取り、ぽいと口に放り込む。
「お礼にさっきの煙草あげます。」
興味本位な様子で受け取り、光羅謝さんは引き抜いた一本を口に入れる。
「をン、不味いわ。」
火をつけずに煙草を咥えた光羅謝さんが顔を顰めた。でしょうね、と言いたげなリモンドさんが頷き、それからこちらに視線を動かす。
「失敬。あれくらいで腹を立てるなんて、お見苦しいところをお見せしてしまいましたね。連絡の遅れた点についても、改めてお詫びします。」
「リモンドはキレると見境無いから気を付けて。やばいときは蓮を呼ぶこと。」
「見境はありますよ…。」
「オレ呼んで〜。」
なんと答えたものか。曖昧に微笑んで返す。反復横跳びを止めた蓮さんと、煙草をポケットに仕舞う光羅謝さんも集合する。リモンドさんが、わたし達を見回した。
「出ましょうか。」
風が吹く。コッツティ王国の朝方らしい、乾燥した空気が流れた。草花の匂いのする、故郷の風が懐かしい。




