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雑草の花束  作者: 片喰
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【悪魔殺し】光羅謝

 <悪魔殺し>とは、SLAY反応武器の俗称である。今は95回の改良がなされ、SLAY-96と呼ばれる。

 これは<魔女の使者>に完全特化した攻撃手段だ。銃のような形だが、出てくるのは銃弾ではなく針。それが刺さると、<魔女の使者>のみに幻覚症状のようなものが現れる。そうして楽に捕らえる訳だ。何故か<使者>以外には無反応であったため、この原料となる元素_後にSLAYと名付けられる_が発見されたとき、人々は色めき立った。

 <魔女の使者>以外の人々は。

 その温度差には、SLAY反応武器の本領が一般大衆に説明されていなかったことも、少しは関係しているかもしれない。

 SLAY反応武器の本領、それは対象者にとって最悪な状況を現実だと誤認させること、だった。

 自分が死んだ、世界が壊れた、大病に長く苦しむ、冤罪で生き地獄、…大切な人が亡くなった、なんでもアリ。どんな最悪も本物に感じてしまえる。

 人生イチの絶望で、怖いくらい悲しくて泣きたくて寒くてくらい。「身が引き裂かれる様な」とか「胸が締め付けられる様な」とか、よくある比喩はやっぱり比喩でしか無いんだなと思った。ホントに崖っぷちのとき、言葉なんて無い。むき出しの感情だけだ。

 何故こんな詳しいのか?実際に喰らったことがあるからだ。

 4年前、ラオメと俺はSLAY-96の七代前の型であるSLAY-89で奇襲に遭った。狩り申請書があった訳でも人通りの少ない場所だった訳でもない。このとき俺達は初めてのプチ家出中で、それを世界攻撃の前兆と見なした狩り隊が、強行突破に出たのだ。笑えない話である。SLAY-89の持ち出しまであったのは、俺達のもつ魔術が<魔女の使者>の中でも強力なものだったからだろうが。

 そうして、ラオメと俺は<悪魔殺し>で生き残った唯一の例外になった。

 …だが、<悪魔殺し>の名前を口にした瞬間から、俺の手は無様に震えているのだった

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