【最強兵器】リモンド
利用すると宣言する割に、少女はこちらを信頼しきって見えた。光羅謝が部屋を譲ってくれたと知ると、恐縮しながら頭を下げていたし、ラオメとは好きな服の話で盛り上がっている。蓮に向ける視線は若干ながら熱っぽく、ピンチを救った白馬の王子様と感じているのが明確に分かった。
「光羅謝、ちょっとラオメと話していてくれません?」
「おォ…?アー。」
瞳をくるりと回して、彼は仏頂面ながら2、3度首肯した。
「ラオメ〜。ちょい、ファオマまでの道筋詰めたいんだけど。」
「あーそうだね。アヨマちゃん、ちょっと待ってて。」
アヨマは笑顔で頷く。蓮に近付きかけたので、一番風呂じゃんけんしよーぜ!と意気込む彼に、蓮でいいからと言って脱衣所に放り込んだ。
「あの…?何か、わたしに用があったんですか?」
流石にここまでやれば気付くか。まあ、蓮とラオメに勘付かれたくないだけだ。
「ええ。お時間かかりませんので、よろしいですか?」
「どうぞどうぞ。わたしに出来ることだったら。」
そっと声を低めて、私は尋ねた。
「貴女が聞いた"狩り隊の大規模兵器"とは、名前を何と言いましたか?」
アヨマは眉根を寄せて唸り始める。
「う〜ん…、名前は聞き覚えがないんですが…。ここの王宮からSULY反応だったか、SEY反応が出たから選ばれた、とは言っていました。」
「…。SLAY反応?」
「あっそれです!」
ぴょこんっと小さく飛び跳ね頷くアヨマとは反対に、私は苦々しい思いだった。考え込んだ私を見て不安になったのだろう、彼女は恐る恐る、
「あの…、名前聞けてなくてごめんなさい…。」
「ああいえ、そういう訳ではないんですよ。教えてくれてありがとうございます。とっても参考になりました。」
無理に微笑んで返すと、アヨマもあどけない笑顔を浮かべた。光羅謝に視線を送り、ラオメとアヨマを隣の部屋へ連れて行かせる。
「おやすみィ。」
ドア近くから見ると、光羅謝が隣の部屋の前で微笑んで挨拶していた。彼は、ラオメと年少には愛想が良い。
ラオメが視線を感じたのか、部屋からぴょこりと顔を出した。どうしたんだろう?と言いたげな顔のアヨマが続いた。
ラオメと目が合う。珍しく無感情な瞳に、気付かれたのを理解した。仕方がないか、ラオメは勘付きやすい。にこやかさを意識して手を振る。アヨマだけは、にこにこと振り返した。
「でェ?」
こちらの部屋に戻った光羅謝は、風呂場から陽気な歌声が漏れているのを確認した後、私に向かってそう尋ねた。その2文字で充分だった。
「SLAY反応、と聞いたそうです。」
盛大な舌打ち。反射的にやってしまったのだろう、彼は慌ててドアと風呂場の方を振り返った。ラオメ達は来ないし、蓮の歌はサビに突入している。聞こえなかったらしい。
「それじゃあ、大規模兵器ってなァ…、」
目が合う。光羅謝は苦々しい顔をしていた。大方、私もそんな顔だろう。
「「<悪魔殺し>。」」