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ガンギマリズム2 竜脈の巫女  作者: 九空のべる(旧:ジョブfree)
第一章「佐渡流竜理教」
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8.宗一の旧友・新南部世理架

翌朝。東京都武蔵村山市、辰上宅にて。


漆紀は日の出を迎えてから未だに帰宅していない。

「ああ、今日と明日、明後日ぐらいは事務所を空けることになる。というわけで、3日間ほど事務所の方を頼みたい。すまないね、家族の用事なんだ。ああ……ありがとう、今度しっかり皆に何か奢るよ。では」

宗一は便利屋タツガミの仮事務所を空けるため、従業員の中でも古株の一人に仮事務所に代理を頼む旨を伝えたのだ。

便利屋家業の方を空ける準備は完了した。

そして宗一は猟銃を収めたケースを一瞥する。

(竜理教か。本家は相手取ったことはあるが……)

続けざまに宗一はスマートフォンを操作し、昨夜電話した古い縁の女へと電話をかけた。

『なんだい、わたしなら時間を空けてるが』

「息子が朝になっても帰って来ない、やはり拉致だ。GPS情報を見るに、漆紀は新潟県長岡市に居る。明らかに佐渡に向かってる」

『拉致の犯人は竜理教である可能性が高い、かい?』

「そうだ。今現在、竜理教で一番怪しいのは佐渡だけなのか?」

『佐渡だけが急な動きを見せている。君の息子の素性を鑑みれば、明らかに佐渡流竜理教と繋がる』

「しかし犯人は手ぬるい。なぜスマホを真っ先に捨てないのか……俺に追ってくれとでも言ってるのか?」

『君からすれば納得しがたいだろうけど……佐渡流竜理教は自分達がこれから奉る相手の機嫌を損ねたくないし、竜王として奉ずる相手の所持物を好き勝手するなんて畏れ多いと本気で思ってるのだろう』

佐渡流竜理教は司教家である彩那の判断のもと、本気で漆紀を竜王と思っている。そのように漆紀に対して配慮を成すのであれば、なぜ拉致などという強硬手段を最初から取ったのか宗一には理解できない。

「畏れ多いならなぜ拉致する? 説明すれば」

『説明して君の息子は竜理教の竜王の座に納得して座ってくれるのかい?』

「……無理だな。それに俺が許さん」

竜理教はその名の通り竜にまつわる宗教団体であり、それが崇めるのは竜の神すなわち竜王である。

本家竜理教はもちろんのこと、佐渡流竜理教も本家と細かい部分が違うとはいえ竜王を奉り信ずる方向性は変わらない。

『そうだろう? 君の息子だ、カルトの信仰対象だなんて地位は蹴り飛ばすに決まってる』

「だが、佐渡の竜理教連中は馬鹿なことにインターネット上で公式に祭典を告知したのだろう? 本家も動くんじゃないのか」

『そうだろうね。君が佐渡に行く気なら、本家との交戦も想定したほうがいい』

「奴らとはやり合いたくないな。本家の厄介さはお前が一番わかってるだろ」

宗一は通話先の女にそう問いかけると、彼女は苦みを含んだ声色で「もちろんだよ」と答える。

『もし本当に佐渡へ行くなら私も同行するが……あくまで新潟の港までだ』

「佐渡にお前が上陸するのは危険か。なら、せめて通信でのサポートを頼みたい。それと、佐渡に向かう本家竜理教の人間が居るかどうかの調査も」

『それならできる。どこで落ち合う? 君はまだ武蔵村山に住んでいるのかい?』

「ああ。身を固めてからはここだ。それと、今のお前はなんて名前になってる? なんて呼べばいい」

世理架(せりか)だ。新南部世理架(しんなんぶ せりか)

「ずいぶんと洒落た名前になったな。正直言うと、お前には島まで付いてきて欲しいが」

『それはダメ』

即答である。世理架にはどうやら竜理教に対し強く大きな因縁があるようで、無論その理由を宗一は知っているため「やはりか」と思いつつ頭を抱える。

「佐渡で動き回らなくていい。いつでも脱出できるよう、佐渡の両津港で待機してるだけで良いんだ。そこで本家竜理教の動きがないかの監視と、無線での通信支援を頼む」

『まったく……嫌だと言っているのに。そんな性格でよく結婚できたもんだね。それも大企業の令嬢様と』

「流れでそうなっちまった。それより、佐渡に渡ってくれるか?」

『仕方ない。弟子の頼みだ、佐渡島に渡ってやろう。しかし、君の息子が本当に佐渡島に居るかどうかは定かではない』

「だが竜理教の動きを見るに佐渡が一番怪しいんだろう?」

『ああ。本家には君の息子を拉致する理由はないし、本家は君の息子の素性など知らない』

「わかった。まずは現地での調査。そして必要になれば力づくで漆紀を助ける」

『力づくは出来れば避けて欲しいけど……君のかつての仕事スタイルを想えば、無理か』

「騒ぎは避けたいが、必要ならすぐにでも銃を使う。魔法も使う。爆弾も」

『やりすぎだ。もう大抗争時代じゃないんだぞ。爆弾まで使うな』

「それは俺が判断する。さっき言った通りの支援を頼む。それと、結局お前はどこで拾えばいい」

『前橋市で待っている。来てくれ、そこでわたしを乗せてくれ』

「わかった。お前も万が一に備えて装備を整えて待ってくれ」

『ところで、いつになったら息子に隠し事を話すんだ? 彼が竜王の力を有してしまってるのは事実だろう』

「それは俺が決める。本当なら漆紀は何も知らないまま何事もなく大人になって欲しい」

『君……それは、そううまくはいかないよ。今回を機に、いい加減話したらどうだい? 君が話せないならわたしが教えてやる』

「……もういい、準備しろ。この話はおしまいだ」

宗一は通話を終了し、必要な武器や道具の準備を始めた。


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