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54.死、戦闘、死線

「痛て!」

漆紀は地面に転がる石を足軽兵の一人へとぶん投げて布石とし、足軽兵に隙が生まれる。

「らぁッ!!」

漆紀は隙を逃さず足軽の首を深く切り付けてから蹴り飛ばすと、次の敵を討ちにかかる。

(ムラサメは将を討て、としか言ってない。何を使って、どう戦おうが勝てりゃ良いんだ!!)

小手先勝負とはまさにこのこと。しかし石を投げても通用しない頑丈な者が多いため、投石は決定打になる戦術ではない。

ゆえに漆紀が得意とする戦術と言えば。

「うぅぅうおぉぶぇええええぇぇぇえええええ!!」

左手を口の中へと突っ込んで吐き気を促し、一気に敵の顔面へと吐瀉物を撒き散らす。

「目ぇがぁあ!?」

「うらぁッ!!」

眼前の足軽が皆、目に吐瀉物と胃液が染みて悶絶する。この隙を漆紀は逃さず、流れるように足軽5人の首筋を村雨で切り裂いた。

(最初の頃は戦場に圧倒されて、ゲロを吐いて攻撃って選択肢すら出てこなかったけど……今の俺は違う)

足軽達の悲鳴を聞き届けるまで待たず、漆紀は目に映った次なる敵へと走る。

(相変わらず村雨の刀身から水は出せねぇ。傷が治せないのも血の貯蔵がないとかじゃなくて、たぶんこの戦場じゃ魔法は使えないんだ。魔法無しで戦えって事なんだろうな)

ムラサメは漆紀に求めているのは強くなること。今までは魔法頼りであるし、その魔法すら扱い切れていない漆紀に対して基礎的な部分を強くしようとムラサメは考えているのだろう。そんな風に漆紀は考えるが、それでも文句の一つや二つは出る。

(荒治療にもほどがあんだろクソ!)

心中でそう毒づきつつ目に付いた足軽へと再び吐瀉物を吹きかけて隙を作り、一気に斬り倒す。

(魔法禁止なのに、ゲロを吐きまくれるのは相変わらずだ。コイツは、やっぱ俺の特殊能力かなんかなのか? 体質? とにかく、これだけは父さんと母さんに感謝だな。父さんも母さんもこんなゲロ吐きまくる体質とか能力なかったけど)

遺伝とは関係ないことではあるが、思わぬ所で両親への感謝の情が湧いて来る。

(さてと、足軽は石とかゲロの小手先でまだなんとかなるけど……)

未だ一度も勝てていない甲冑姿の侍の一人へと駆けていく。

甲冑姿の侍とは相討ちにまでは持ち込んだことがある。漆紀が侍の首を突き刺すと、侍は意地だけで刀を振るって漆紀の首を刎ねたのだ。

(侍相手に戦って生き残れるようにならねぇと、ムラサメが言ってた将を討つなんて無理だ)

殺してやる、といった殺意は抱かず無言で上段から侍へと斬りかかる。

「おぁっ!」

以前とは違い殺意を潜め、冷静な敵意だけにした漆紀の一撃は侍の背中に当たった。とはいえ甲冑越しであるため、傷は浅く背骨や背筋を機能不能に出来たわけではない。せいぜい皮を切り裂いた程度だ。

「なんだ己は!!」

侍は眼前の足軽を斬り捨てるとすぐさま漆紀に応戦する。侍が持つ得物は漆紀の村雨より刃渡りが長く、太刀と呼ばれる種類の刀剣であろう。

侍が太刀を真横に振り漆紀の首を一撃で刎ねようと試みるが。

「竜王様だよ、侍!!」

そう言い返して漆紀が村雨でその一撃を受け止めるが。

「ガキではないか、首ぃんなれぇ!!」

日々戦に明け暮れる侍の力は、筋トレすらしていない現代高校生の漆紀より格上なのだ。

鍔競り合いにすら持ち込めず、抵抗こそみせる漆紀だが押し負けてしまう。

太刀は容赦なく漆紀の首筋を深々と切り裂いていき、おそらく今回はこれで死ぬだろう。

(侍相手は真正面からじゃ勝てねぇ。不意打ちでも殺しきれねぇし、刀ぶつけるチャンバラは無理だ。小手先が上手く通じるか試してみるか。クソ、痛ぇ……)

_____________________


「うぅぅうおぉぶぇええええぇぇぇえええええ!!」

生き返って初期地点に戻された漆紀は、侍の顔面めがけて吐瀉物を吐き散らすが、籠手で吐瀉物を振り払われ防がれる。

「畜生がっ!!」

漆紀の行為に激怒した侍が素早く太刀を真横に振るう。

「ぐふっ!!」

村雨で斬ろうと接近したため、避けられる間合いではなかった。呆気なく腹を切り裂かれ、漆紀は膝を着く。

「野犬に食われてしまえ!」

その一言と共に侍が漆紀の首を刎ねると、落ちた漆紀の首を乱暴に掴んでぶん投げる。

(また打ち首かよくそ……痛っ! 首になっても数秒は生きてんだぞ! 頭地面にぶつけたらクソ痛ぇだろうが! あぁ、意識飛んでく……侍に小手先はダメ、か…………)

_____________________


また生き返った漆紀は考えながら戦場を駆ける。

(侍に小手先はダメ。でもどうすりゃ……いや、刀で仕留めようとするからダメなんだ。別に村雨で倒す必要はねぇ。とにかく使えるもの、なんでも使わねぇと……お、折れた槍があるな)

地面にはへし折れた槍が一本転がっており、刃先から柄の途中まで2mほど。投げるには丁度良い長さである。

(体育で槍投げの授業あったけど、得意ってわけでもないしな。10m代なら投げられるけど……命中精度は練習あるのみだな)

漆紀は槍を掴むと、上体を反らす。そして何度も挑んだ甲冑姿の侍目掛けて槍を投げた。

槍は確かに飛んでいくが、予想通り命中精度は良くないようで侍から2m離れた位置の足軽へとぶつかった。

(だめだなこりゃ。でも槍投げならあいつの間合いの外から殺れる。練習あるのみだな)

追加の槍については、小手先の通じる足軽兵から奪えばよい

幸い、足軽達には吐瀉物をぶちまける戦術が有効であるし何度でも通用する。

(強くなるんだ。何度も戦って、実戦を積んで、強くなるんだ!!)


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