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51.脳天撃ち抜ける

「首を取れェェぇぇ!!」

「おおぉぉ!!」

漆紀は眠りから目を覚ました瞬間、どこか分からぬあの雨天の戦場に立っていた。

右手には村雨があり、時代劇のような合戦の最中であった。足軽兵達や甲冑姿の侍が槍や鉄の棒で、近距離ならば刀で戦っている。

(眠っても、戻されるのかよここに!!)

戦場から必死に逃げた後の疲労感は眠った事により消えていた。しかし最初に居た場所と全く同じ立ち位置である事から、眠っても戦場からは逃げられないと判明した。

(本当に、大将首を殺さないと戻れないってのかよ……っ!?)

この壮大な死の嵐の中を搔い潜って、ムラサメの言うところの「将」を討たねばならないのだ。

(とりあえず逃げながら偉そうな侍を探して……不意打ちでぶった斬ってみるしかない)

そうして周囲をよく見ながら逃げると、漆紀はあることに気付く。

(ここ、どこかの城だ。霧で囲われてるけど、土の堀で囲われてて坂とか門が上にあって、デカい屋敷の屋根が見える。多分ここはどこかの城。屋敷がある場所が本丸ってヤツか?)

この戦場は城なのだ。どこの城なのか、そんな事は漆紀にはわからないし知る必要もない。問題は、どの将を討てばムラサメの指示を達成出来るかという点だ。

足軽兵達を避けて走り続けていると、確かに甲冑を来た侍も見かける。しかし、とりわけ豪華な甲冑や意匠を凝らした甲冑を着ている侍が数人いる。場所もばらばらだが、どの侍を討てば良いのか全く見当がつかない。

(どの侍を斬れば良いんだよ。襲ってかかったら、周りの足軽兵や侍も援護に来て多勢に無勢だし……まさか、本当に一番偉い大将を討てとかじゃないよな?)

結論から言うと、どの侍を斬ればこの戦場から目が覚めるのかわからないのだ。

(それに、戦場ってことは二つの勢力が争ってるんだ。大将は二人いるんだから、どっちの大将を討てば良いのかわからねぇ)

戦場ということは、二つの軍が争っているのだ。どの大将か、そもそも本当に大将を討たねばならないのか。

あれこれ考えていると漆紀は本当に頭が痛くてたまらなくなる。

「逃げるな貴様ぁ!」

甲冑を来た侍の一人が正面から漆紀の首目掛けて不意に刀を振るってくる。

「やべっ!?」

正面からの攻撃だったためすぐさま反応できたため、村雨を振るって侍の一撃を防げた。

村雨が侍の刀とぶつかるが、侍は鍔競り合いなどせずに漆紀を蹴り飛ばす。

「ぐっ」

「ふんっ!」

蹴られて転んだ漆紀へと侍が刀を振るうが、横に転がってこの一撃を避ける。

「首だあぁぁぁ!」

漆紀を殺さんとするのは眼中にある侍だけではない。無防備な今の漆紀を殺さんと息巻いた足軽兵の一人が槍を大きく振るって来る。

「どいつもこいつもッ!!」

再び横に転がりつつも回転力の勢いと腕の力を活かして立ち上がり、再び逃走を始める。

(転んだら真っ先に狙われるし、四方八方全部敵。どっから攻撃が来るかわからねえ。これじゃ何回死んでもおかしくないだろうが)

やってられない。そう思うばかりであるが、どれだけ逃げても最終的には必ずこの戦場に戻されるのだ。死んでも戻され、逃げて眠っても戻される。

(俺は剣の達人でもなんでもねぇ。ただの便利屋の息子だぞ。ここじゃ精霊術も使えない。戦えないんだよクソ!)

ムラサメが残した言葉通りならば、将を討たねば恐らくこの戦場からは脱出できない。しかし自分には将どころか足軽兵などの雑兵どもを時代劇のようにバッタバッタと斬り倒せる剣の腕もない。

確実に詰みである。

「クソ、クソ、クソ、クソ……」

ふと鋭く空気を切る音が聞こえたかと思うと、自身の脳天を細長い棒のような何かが突き抜け、脳内破壊する音が聞こえた。

「かっ……」

そのまま漆紀の視界は暗転し、意識を失った。

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