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間章2

竜蛇彩那は自身が竜王と判断し信じた辰上漆紀と、家族とも呼べる親愛なる佐渡流竜理教信者達を連れて大佐渡山脈の大竜脈へと向かっていた。

バン、トラック、バイク、様々な車両で構成された車列で目的地へと進んでおり、漆紀と彩那は車列の中央に位置する小型バスに乗っていた。

小型バスには運転手のほか、猟銃を持った信者が5名乗っていた。

両者共に無言。話題もなく、なにより彩那の方は母・香代子が示した反応がショックであった。

(銃撃されても、お母さんは私より辰上君……かぁ)

自身の娘は第一ではない。そう明確にわかってしまった事が、彩那にはショックであった。

佐渡流竜理教の司教家に生まれた身の上ゆえに、彩那は幼少の頃からひたすら佐渡流竜理教の教えを学ばされた。それゆえ「竜王様」という存在が第一優先であるのは承知の上であった。それでも彩那の中で佐渡流竜理教と己を天秤に掛けた時に、たった数日で天秤の傾きが変わりつつあった。

(今まで……竜王様が救ってくれる。竜王様は私の味方なんだって、教えられてて……本当にそう思ってたのに)

彩那はふと「竜王様」たる漆紀を見る。彼はなんの威厳も偉大さも神聖さも感じない、己を救ってくれる聖人とはかけ離れた人物。自分と同じ単なる十代の子供でしかない。自身の心中と夢中に抱いていた「竜王様」のイメージとあまりにかけ離れた彼を見て考え、より一層彩那は落胆し幻滅していく。

(今までの私の……私の苦労は、想いは……なんで、こんな……)

佐渡流竜理教司教家の長女、その責務や人生から自分を救ってくれるのではないか。そんな望みを竜王に対して持っており、それが彩那にとって唯一の希望でもあった。

救いなどない。不透明で不安定なはずの予感が形を持って彩那の心に突き刺さっていた。

(佐渡流竜理教の教義、第一章第一項目、竜王ヲ奉ジ竜王ヲ迎エヨ)

教義を脳内で思い返しても、彩那はすぐに立ち直れない。

「竜蛇、お前あんなこと言われてもまだ俺を捕まえとくつもりか? もうやめたらどうだ」

沈黙を破ったのは漆紀の方であった。彼は粘り強くも彩那に身柄の解放を促すが、彩那はそれでも首を横に振る。

「今更やめてどうなるって言うんですか。やりきりますよ」

「お前それで良いのかよ、明らかに悩んでる顔してる」

「あなたには関係ありません」

「後悔するなよ……どうする気なのか知らねえが」

「……」

彩那は閉口し答えなかった。否、答えられなかった。

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