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間章1

石川県能登半島珠洲市、竜理教珠洲寺院。

佐渡流竜理教の急速且つ不審な動きを受けて、本家竜理教の魔法使いの二人が佐渡島へ調査に行くため珠洲市の寺院に立ち寄っていた。

寺院の部屋の中で、二人の魔法使いが装備を手入れしつつ話していた。

「確認ですよ、ネル。この度の課題は、佐渡島に渡り竜王様の所在を調査すること」

任務の確認をするのは紺色の浴衣を着た四十代ほどの銀髪染めの男で、苗字は宮田という。彼の名前については姓だけで充分である。

「そして竜王様がいらした場合、竜王様を保護する。そうですね、宮田先生?」

宮田のことを「宮田先生」と流暢な日本語で呼ぶアメリカ系ハーフの少女は、名をネルといい金髪であった。高校の制服姿を着ており、歳は18歳ほどだろう。日本育ちなのか、発声が確かに日本人の日本語のソレであった。

「そうです。さて、制服姿では目立ちますよネル。向こうの部屋で私服に着替えて来なさい。単なる観光客に扮して佐渡島へ渡らねばなりませんからね」

宮田の指示通り私服に着替えるべくネルはそそくさと部屋を出た。

(さて、佐渡に渡って最初はバレないでしょうが、そのうち感付かれるのは必定。ネルに竜王様を預け、拙僧が司教を討ち混乱を引き起こすことも必要かもしれませんね)

最悪の場合には事を荒立て混乱を引き起こしてでも竜王を手にする、そう考える必要があるほど本家竜理教も竜王を求めていた。

では佐渡流竜理教と本家竜理教が求める竜王とは、そもそもなんなのか。

竜王とは、竜に起因する絶大な魔法の力を有した存在である。

竜理教の書物にこのような一文がある。

竜王様の足は大地を揺らし、尾で道を開き、指先は風を裂き、腕は煮えたぎる血肉で沸き、息は善を安らげ罪を滅し、眼は神通力が宿り、角は威厳と偉大さを示す。

いかにも日本の昔話にある滅茶苦茶な強さ表現じみた一文であるが、それほどの表現を使う程、竜王の力は絶大なものなのだ。

竜理教にとって竜王は単なる信仰対象というだけでなく、他の魔法使いの組織集団に対しての抑止力となる核兵器に近い存在なのだ。

(かつて逃亡した竜王様の所在も未だ不明……空席ばかりですねぇ、偶像とはまさにこのこと。酷い皮肉です)

宮田は竜理教の無様な有り体に乾いた笑みを浮かべつつ、右手に持った石のようにも骨のようにも見える塊を眺めた。

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