珈琲は嫌い
教授の研究室では、今日も香り高い紅茶の香りが漂っていた。
「今日の紅茶はいつもより癖がなく飲みやすいですね」
「これはアッサムとダージリンのブレンドティーだよ。セカンドフラッシュのアッサム茶葉を80%、そしてファーストフラッシュのダージリン茶葉を20%ずつ配合している。アッサムの夏摘みは春のものよりさらに濃厚な味わいをもつ。これを80%の割合で利用する事により、ブレンドに豊かな味わいと深みをもたらすのだ。またダージリンの春摘みは、繊細でフルーティーな香りと爽やかな風味が際立っている。20%の割合で使用することで、ブレンドに軽やかな香りと明るい味わいをもたらし紅茶がより上品なものになる。アッサムの濃厚な味わいとダージリンの繊細な香りがバランスよく調和し紅茶初心者でも受け入れやすいだろう。実に見事な調和をもたらしたブレンドだな」
「そう言えば、教授は珈琲は飲まないんですか?」
「珈琲は嫌いだ。珈琲の香りは全てを飲み込んでしまう。喫茶店で申し訳程度に紅茶を置いている店も嫌いだ。紅茶の繊細な香りを全て消し去ってしまう。調和が一切とれていない。」
「珈琲専門店は多くても紅茶専門店は少ないですもんね。教授はカフェや喫茶店に行ったら何を頼むんですか?珈琲が嫌いなら困りませんか?」
「いい事を教えてあげよう。私はカフェや喫茶店には行かない。すると不快な思いをすることもなくなる。」
教授の言葉に少し呆れながら言葉がこぼれる。
「教授は常に我が道を行きますよね。私も教授みたいに我を通せれば楽なんですが...」
「そうだな、自己決定理論という考え方が関連している。それは、個人が自己の行動や意思決定に対して自己支配的であるという理論だ。他者の期待や社会の規範に縛られることなく、自分のニーズや価値観に忠実に行動することが大切だ。」
「でも、他人との関係や社会的な状況に左右されずに、自分の意志を貫くって難しくないですか?」
「それは自己効力感という概念が関係している。自己効力感とは、自己が目標を達成する能力に対する信念の強さだ。自分の意志や行動に自信を持ち、自分の目標を達成する力を信じることが重要だ。自己決定理論と自己効力感が重なり合うことで、他者の期待や社会の規範に左右されずに自分の道を歩むことができる。」
「人に合せるのも大切だと思うのですが...」
「確かに大切だ。だが紅茶の香りと珈琲の香りは相いれない。調和がとれていない状態だ。これは健全ではないと私は考える」
研究室には、今日も紅茶の香りが漂っていた。




