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第73話:メアリーにも生きて欲しい

「メアリー、あなたの気持ちは分かったわ。きっと私が何を言っても、あなたは私をこの場で殺すのでしょう。それならそれで、仕方がないわ。だって私が、バカだったのだもの…でもね、メアリー。あなたは生きて。確かに生きていると辛い事も沢山あるわ、私はあなたとレオナルド様の事で、沢山泣いた。それでもやっぱり、生きていると楽しい事もあるの。お願い、メアリー。生きて幸せになって。無念の死を迎えたあなたのお母様の為にも!」


「オリビア、あんた本当にバカね。私に生きて幸せになれですって!私がこの18年間、どれほど辛い思いをして来たと思っているの?生きていれば楽しい事があるですって!ふざけないで、私は早く楽になって、お父様とお母様の元にいきたいのよ!それが私にとっての、幸せなのよ!私にはもう、肉親はいないの…私が死んだって、誰も悲しまないわ…」


「そうかしら?ジュノーズ侯爵様や夫人は、あなたの事を大切にしてくれている様じゃない。きっと2人が悲しむわ。私だって、メアリーがいないと悲しいもの」


「あの人たちは、ただ跡継ぎが欲しかっただけよ!それにあなた、これから私に殺されるのよ!何が“私だってメアリーがいないと悲しいもの”よ。本当におめでたい頭ね」


そう言って、ポロポロと涙を流しているメアリー。


「それでも悲しいわ、だってあなたは、この国で初めて出来た大切な女友達ですもの。私ね、本当にレオナルド様が大好きなの。本当に本当に大好きなのよ。でも、それと同時に、メアリーの事も大好きよ。だから私、2人の為に身を引こうと決めたの。それくらい大切な2人だから、全てを捨てるつもりでいたの。私、バカだから、騙されちゃったけれど、それでもバカでよかったと思っているわ。だって、あなたの本当の姿を知れたのですもの。メアリー、ずっと辛かったんだね。今までよく頑張ったね」


スッと手に付けられて縄をうまく解くと、そのままメアリーに抱き着いた。


「ちょっと、どうやって縄をほどいたのよ!私から放れなさいよ!私はあなたから大切な恋人を奪い、あなたを今から殺そうとしている人間なのよ!」


「分かっているわ。でも、どうしても最後にメアリーを抱きしめたかったの。メアリー、温かくて柔らかい。私の大切なメアリー」


「“私の大切なメアリー…”か。お母様がよく言ってくれた言葉だわ。あなた、本当にバカね。本当に、どこまでお人好しなのよ…」


メアリーが声をあげて泣き始めてしまった。そんなメアリーを、優しく抱きしめる。


「おい、お涙頂戴は結構だ。そろそろこの女を始末しようぜ。本当に美しい娘だな。俺たちの好きなようにしてもいいと言っていたよな」


さっきまで大人しくていた男たちが、ニヤリと笑って私たちの方に近づいて来た。


「…悪いけれど、今回の計画はなしよ…オリビアに手を出さないで頂戴…」


私を庇う様に立つメアリー。


「はっ?ふざけているのか?お前が王女様を好きにしていいと言ったから、俺たちはお前の話に乗ったんだ!今更ナシはないだろう!」


男たちが怒り狂っている。


“オリビア、私があの男たちをひきつけておくから、あなたはさっき乗って来た馬車で逃げて!大丈夫、今ならまだ王宮に戻っても、きっと誰も何も知らないわ!”


「でも、そんな事をしたらメアリーが。私1人で逃げるなんて嫌よ!」


“バカ、大きな声を出さないで!”


「おいおい、今逃げるって聞こえたぞ。誰が逃がすか。よく見ると、お前も可愛い顔をしているな。まとめて可愛がってやるよ」


そう言うと、私たちの方に近づいて来た男たち。すると、すっと短刀を抜いたメアリーが男たちの方に向かって走り出した。


「オリビア、逃げて!早く!」


「ギャーー、こいつ、短刀で俺を刺しやがって。ただじゃおかないぞ!」


男がメアリーを掴み、殴りかかろうとしている。


「メアリーー!!」


急いでメアリーに元に駆けつけようとした時だった。


「ぎゃぁぁぁ」


男の悲鳴と共に、次々と倒れていく男たち。一体何が起こっているの?よくわからないが、これ幸いとばかりにメアリーに元へと向かう。


「メアリー、怪我はない?急いでここから離れましょう。今ならまだなかった事にできるわ」


そう言ってメアリーを引っ張ったのだが…全く動かない。


「オリビア、なかった事にはどうやら出来そうにないわね…」


苦笑いしているメアリー。一体どういう意味かしら?


ふとメアリーの視線の先をたどると、そこには…


「こんばんは、オリビア。どうして君が、こんな森の中にいるのだろうね?」


笑顔だが笑っていないレオナルド様と目が合った。後ろにはお父様とお母様、レオナルド様のご両親、さらにジュノーズ侯爵夫妻もいる。その周りには、何人かの護衛騎士も…


これは一体…

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