第46話:初めての街に向かいます
「殿下、今日は街に出掛けるのですから、動きやすいワンピースにしましょう。それから、殿下は銀色の髪に赤い瞳と、王族特有の特徴がありますので、帽子を被ってください。髪も1つに束ねさせていただきますね」
メイドが動きやすいワンピースを着せてくれた。いつもドレスか制服を着ている為、こんなラフなワンピースは久しぶりだわ。なんだかエレフセリア王国にいた時を思い出す。あの時もワンピースを着て、村を走り回っていたものね。でも、あの時着ていたワンピースとは比べ物にならない程、立派だけれどね。
着替えが終わると、朝食を摂る為食堂へと向かった。
「オリビア、おはよう。今日は急遽公務を頼んでしまってすまないね。あぁ、私の可愛いオリビア。そんなラフな格好をしたオリビアを見ると、初めて君に会った時の事を思い出すよ。まさか私から離れて行ってしまったりしないよね?」
なぜか訳の分からない事を呟きながら、いつも以上にベッタリのお父様。ギュッと抱きしめられ、頬ずりをされた。一体どうしたのかしら?
「お父様、私はずっとここにおりますわ。それに、ちょっと街に行くだけですもの。そんなに心配して頂かなくても、大丈夫ですわ」
お父様に向かってほほ笑んだ。その後なぜか私から離れないお父様と一緒に食事を済ませる。しばらくすると、レオナルド様がやって来た。
「おはよう、オリビア。今日のオリビア、なんだかいつもと雰囲気が違うね。でも、そのワンピースもよく似合っているよ。いいかい?僕が基本的に王太子殿下の相手をするから、オリビアは僕にくっ付いていたらいいからね。わかったね」
「ええ、分かったわ。いつも通り、レオナルド様にくっ付いていればいいのね」
レオナルド様が王太子殿下の相手をしてくれるのなら、助かるわ。私はあまり殿方とお話したことがないから、正直何を話していいのかよくわからないのよね。
「それじゃあ、そろそろ王太子殿下も来る頃だろう。行こうか」
「はい」
いつもの様に、レオナルド様の手をしっかり握る。
「レオナルド、オリビアを頼んだぞ」
後ろでお父様が叫んでいる。
馬車に向かうと、既にグレース殿下が待っていた。
「グレース殿下、お待たせして申し訳ございません。さあ、参りましょう」
レオナルド様がグレース殿下に頭を下げている。私も挨拶をと思ったが、レオナルド様が私を馬車に押し込めてしまったので、挨拶が出来なかった。
すかさず私の隣に座るレオナルド様。向かいには、グレース殿下が座った。
「オリビア殿下、今日は来てくれてありがとう。今回初めてペリオリズモス王国に来たから、街を見せてもらうのが楽しみだよ」
そう言うと、ほほ笑んでくれたグレース殿下。
「実は私も、街に出るのは初めてなのです。ですので、今日は目いっぱい楽しみたいと思っておりますわ」
「そういえばこの国の国王陛下は、随分と過保護だと聞いているよ。まさか街にすら行かせていなかったなんてね…」
「はい、父はとても心配症でして。貴族学院に入学するまでは、王宮から出る事も禁止されておりましたので…」
「そうだったんだね。9年もの間平民として自由に暮らしてきた君には、辛かったのではないのかい?」
「確かに外に出たいと思う事もありましたが、それでもお父様やお母様、それにレオナルド様が傍にいてくれておりましたので」
私の傍にはずっとレオナルド様がいてくれた。だから、辛くなかったのだ。そっとレオナルド様の手を握った。やっぱりレオナルド様の手を握ると、心が落ち着く。
「私とオリビアは、10歳からずっと一緒ですので。そういえばグレース殿下は、既に奥様が3人もいらっしゃるそうですね」
すかさずレオナルド様が、グレース殿下に話しを振った。て、奥様が3人もいらっしゃるの?まだお若いのに、すごいわね!
「ええ…父が一方的に連れてきた妻ですよ。ただ、3人とも正妻ではないので。今、正妻になってくれる女性を探しているのですが。中々いい人がいなくて…オリビア殿下にも断られてしまいましたし…」
えっ?どういうことかしら?私が断ったとは?意味が分からず、キョロキョロとする。
「どうやらペリオリズモス王国の国王陛下が、単独で判断したようですね。オリビア殿下、私はあなた様を正妻として我がエレフセリア王国に嫁いでもらえないか打診したのですが、断られてしまったのです」
えぇぇぇ!!
そうだったの?
「そうだったのですね…申し訳ございません。私、何も知らなくて…」
「いえ!私の方こそ、オリビア殿下が既に内内で婚約済みとは知らずに、本当に失礼いたしました。それでも私は、最後にあなた様と出掛けられたらと思い、今回ペリオリズモス王国の陛下に頼み込んで、今日という日をセッティングして頂いたのです」
なるほど…て、私が既に婚約済みとはどういう事なの?私、誰とも婚約していないけれど…
もしかしてお父様ったら、私を他国に嫁がせたくないために、嘘を付いたのかしら。でも…私もさすがに他国には嫁ぎたくないし、何よりレオナルド様と離れたくはない。とにかく話を会わせておかないと!
「私は…」
「さあ、街に着いたようですよ。今日はお忍びで来ているので、あまり目立った行動は控えて下さいね。それでは、参りましょう」
ちょうど街に着いた様で、レオナルド様にエスコートされながら、馬車を降りた。




