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第37話:レオナルド様はモテる様です

入学式翌日、レオナルド様と一緒に、学院へと向かう。


「オリビア、分かっていると思うが、気を許すといけないよ。君はまだ世間の事をよくわかっていないのだから」


「分かっているわ。もう、レオナルド様は心配性ね」


そう言って頬を膨らませた。


「それだけオリビアの事が心配なんだよ。さあ、学院に着いたよ。早く行こうか」


レオナルド様と一緒に、馬車から降りる。すると…


「あっ、メアリー様だわ。メアリー様!」


近くにいたメアリー様を見つけて、彼女の元に飛んでいく。


「コラ、オリビア」


後ろでレオナルド様が叫んでいるが、そのままメアリー様の元に向かった。


「おはようございます、オリビア殿下」


私が声を掛けると、にっこり笑って挨拶をしてくれたメアリー様。


「おはようございます、メアリー様。一緒に教室まで行きましょう」


「ええ…私は構いませんが、ミシュラーノ公爵令息様はよろしいのですか?」


そうだった、レオナルド様の事を忘れていたわ。慌てて後ろを振り返ると、なんと令嬢たちに囲まれているではないか。


「ミシュラーノ公爵令息様は、非常に令嬢に人気があるとお伺いしましたわ。それにしても、すごい人気ですわね。オリビア殿下、よろしいのですか?」


メアリー様が私に問いかけてくる。レオナルド様が…私以外の令嬢と話をしている。今までずっと2人でいたから、レオナルド様の外での様子なんて見た事がなかったけれど、あんなにも令嬢に人気があるのね。


「オリビア殿下、顔色があまり良くないですよ。ミシュラーノ公爵令息様は爵位はもちろん、勉学も武術も優れていらっしゃいますし、お顔も整っておられますものね。令嬢たちが放っておかないのでしょう。でも、オリビア殿下の恋人なのでしょう?よろしいのですか?」


恋人?私とレオナルド様はただの友達…いいえ、友達ではないわ。昨日だって、私たちが婚約するって話も出ていたくらいだし。


と、次の瞬間、令嬢がレオナルド様にすり寄った。ダメ!レオナルド様は…


無意識にレオナルド様の元に走っていく。


「あの、お取込み中申し訳ございません。レオナルド様、そろそろ教室に向かいましょう」


レオナルド様の腕にしがみつき、そう伝えた。


「そうだね、それよりオリビア、急に走って行ってはいけないよ。それじゃあ、僕たちはこれで」


レオナルド様が令嬢たちに笑顔を向けると、そのまま私の背中に手を回し、歩き始めた。レオナルド様が、私以外の女性に笑顔を振りまくなんて…


胸の奥がチクリと痛む。何なの…この気持ちは…


ギューッとレオナルド様にくっ付く。


「オリビア、どうしたんだい?急にくっついたりして。甘えているのかい?可愛いな」


私の頭を撫でてくれるレオナルド様。温かくて大きな手…やっぱりレオナルド様の手が一番落ち着くわ。


「ねえ、レオナルド様、先ほどの令嬢たちは、お友達ですの?」


「いいや、違うよ。ただ、彼女たちは僕と結婚したいみたいだね」


「まあ、レオナルド様と!でも、レオナルド様は私と結婚するのではないの?昨日、その様なお話が出ていたわ」


私ったら、一体何を言っているのかしら?


「オリビアは、僕と結婚したいのかい?」


「えっと…王女でもある私は、両親が決めた相手と結婚すると、家庭教師に教えてもらったわ。だから私は、お父様とお母様の判断に任せるつもりよ…」


私たら自分から“私と結婚するのではないの?”だなんて、はしたない事を聞いたりして。恥ずかしいわ…


「そうだね、王女は基本的に、国王や王妃様の指示で結婚するのが一般的だね。でも、君の両親なら、君の意見も聞いてくれると思うよ」


確かにお母様なら聞いてくれそうだ。でも、お父様は聞いてくれるかしら?それなら私は、やっぱりレオナルド様と結婚したいわ。だって、レオナルド様と一緒にいると落ち着くのですもの。全然知らない殿方と結婚なんて、考えられない…


そんな思いから、レオナルド様の手を強く握った。


「オリビア、大丈夫かい?まあ、結婚と言っても、まだ先の話だし、そんなに考えなくても大丈夫だよ。ほら、教室に着いたよ。昨日友人になったメアリー嬢もいるし」


そうだったわ、私、さっきメアリー様に“一緒に教室にいこう”と誘ったのに、彼女を置いて来てしまった。急いでメアリー様の元に向かい、謝罪した。


「メアリー様、先ほどはごめんなさい」


「いいのですよ、気にしないで下さい。恋人が他の令嬢と仲良くしていたら、気が気ではないですわよね。特にレオナルド様は人気が高いですから」



そう言ってほほ笑んでくれた、メアリー様。そうか、レオナルド様は人気が高いのか…


私はずっと、王宮に来てくれるレオナルド様しか知らなかった。そういえば昨日も、クリス様と楽しそうに話しをしていたわ。


私、レオナルド様の事を知らなさすぎる。もっともっと、レオナルド様の事が知りたい。そう強く思ったのだった。

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