第31話:お友達が出来ました
席に戻ると、すぐにレオナルド様の手を握る。やっぱりこの手を握ると、落ち着くのだ。
「オリビア、新入生代表の挨拶を任されていたのだね。どうして教えてくれなかったのだい?」
耳元でレオナルド様が呟いた。少し怒っている様だ。
「ごめんなさい、なんだか恥ずかしくて。私の挨拶、どうだった?」
「悪くはなかったよ。でも…貴族学院の挨拶は、もっとシンプルでいいんだよ」
「そうなの?でも、私の事を沢山の人に知ってもらいたかったから」
ペロリと舌をだす。
「別にオリビアの事を皆に知ってもらわなくてもいいんだよ。とにかく、これ以上目立つような事をしないでくれ。わかったね」
「分かったわ。ねえ、どうして怒っているの?」
「怒っていなんていないよ。ほら、入学式が終わったよ。教室に向かおう。多分僕たちは、特待クラスだ」
「特待クラス?なあに、それ?」
「君はきちんとしおりを読んできたのかい?まあいいよ。基本的に侯爵以上は特待クラス、それ以外は一般クラスなんだ。さあ、行くよ。いいかい、無駄に愛想を振りまいたらいけないよ」
なぜかご機嫌斜めなレオナルド様に連れられ、特待クラスというところにやって来た。どうやら特待クラスは、別棟らしい。
それにしても、立派な建物ね。あら?あれは何かしら?まあ、テラスもあるのね。
「オリビア、後でゆっくり見て回ればいいから。そんなにキョロキョロしないの!本当に君は」
はぁ~と、レオナルド様があきれている。今日のレオナルド様は、なぜか機嫌が悪い。もしかして、私があまりにも常識外れな事をするから、私といるのが恥ずかしいのかしら?
「レオナルド様、ごめんなさい。私、もしかして常識はずれな事をしている?もしそうなら、教えて頂戴!5年ぶりに外に出してもらえたから、ついはしゃいじゃって…」
「別に君が悪い訳ではないよ…すまない、君があまりにも周りの視線に気が付かないから、ついイライラしてしまったんだ…オリビアはそのままで大丈夫だよ。さあ、教室に行こう」
シュンとする私の頭を優しく撫でてくれるレオナルド様、再び手をしっかり握り、教室を目指す。なんだかんだ言って、私に甘いのよね。でも、そんなところも、レオナルド様のいいところだ。
ギューッとレオナルド様の腕にしがみつく。
「本当にオリビアは…そうやってくっ付いているといいよ」
レオナルド様が笑ってそう言った。そんなやり取りをしているうちに、教室に着いた。教室の中には、たくさんの生徒がいた。既にグループが出来ている様で、楽しそうにおしゃべりしている。私も輪に入りたいな…でも、入れるかしら?
そう思っていると
「レオナルド、王女様と登場かよ。それにしてもお前、いつから王女様と仲良くなったんだ?もしかして、婚約するのか?」
話しかけてきたのは、茶色い髪をした男性だ。
「クリス、からかうのはよしてくれ。でも…いずれは婚約を結ぼうと思っている…だから、オリビアに近づくなよ」
男性の耳元で何やらレオナルド様が呟いている。何を話しているのかしら?
「はいはい、王女様、お初にお目にかかります。クリス・ディーゼンと申します。どうぞお見知りおきを」
「おい、クリス!」
「別にいいだろう。話すくらい。ね、王女様」
にっこり笑ったクリス様。
「クリス様、ご丁寧にご挨拶ありがとうございます。オリビア・ディア・ペリオリズモスと申します。どうかオリビアとお呼びください」
さすがに王女様呼びは恥ずかしい。
「わかったよ、それじゃあ、オリビアちゃんって呼ぶね。よろしく、オリビアちゃん」
「おい、クリス。馴れ馴れしくオリビアを名前で呼ぶな。それから、オリビアも愛想を振りまくな。いいか、こいつは悪い奴だ、近づいてはいけないよ」
「おい、誰が悪い奴だよ。失礼な事を言うな」
レオナルド様とクリス様が言い合いを始めてしまった。どうしよう…そう思っていると
「オリビア殿下、こっちですわ」
私を呼んでくれたのは、金色の髪に緑色の瞳をした、可愛らしい女性だ。令嬢に話しかけられたことが嬉しくて、彼女の方に向かった。
「初めまして。私はメアリー・ジュノーズですわ。どうぞお見知りおきを」
「オリビア・ディア・ペリオリズモスです。よろしくお願いします」
中々披露する事のないカーテシーを決めた。
「まあ、ご丁寧にありがとうございます」
そう言ってクスクス笑っているメアリー様。そうだわ、せっかく声を掛けて下さったのですもの。このチャンス、逃すわけにはいかない!
「あの、メアリー様、実は私、お友達と呼べる人がレオナルド様しかおりませんの。どうか私とお友達になってくださいませんか?」
「まあ、私とですか?それは嬉しいですわ。ぜひ、お願いします」
そう言ってほほ笑んでくれたメアリー様。笑顔がとても素敵な令嬢だ。この国に来て、初めて出来た女性の友達。それも入学1日目にして友達が出来るなんて、ラッキーね。




