第27話:可愛い弟、シャルル
どうやら無事生まれた様だ。すぐにお医者様が赤ちゃんを綺麗にする。そして、私たちのところにやって来た赤ちゃんは、お母様の横に寝かされた。
「おめでとうございます陛下、王妃様、オリビア殿下。元気な男のお子様ですよ」
使用人たちも、手を取り合って喜んでいる。生まれたばかりの赤ちゃん。小さくて可愛い。髪はお母様に似て、金髪。瞳は、お父様と私に似て赤色だ。
「可愛い…なんて可愛いのかしら?この子が私の弟なのね」
「ええ、そうよ。オリビアの弟よ」
お母様が嬉しそうに微笑んだ。
「シャリー、本当によく頑張ったね。あぁ、なんて可愛いんだ。こんなに小さいんだね」
お父様がゆっくりと弟を抱いた。本当に小さくて壊れそうだ。
「可愛い…本当に可愛いな。シャリー、この子を産んでくれてありがとう」
そう言うと、お父様の瞳から、大粒の涙が溢れ出した。
「オーフェン様、大げさですわ。それでこの子の名前は、やっぱりシャルルですか?」
「ああ、そうだ。お前は今日からシャルル、次期国王だ!」
シャルル、可愛い名前ね。
「シャルル、お姉様よ。よろしくね」
シャルルに向かって話しかける。本当に可愛らしいわ。
「オリビアもきっと、シャルルの様にとても可愛らしい赤ちゃんだったのだろうな…オリビア、君の成長を見られなかった事が、今猛烈に悲しいよ…」
「お父様ったら。でも今私の成長をしっかり見守って下さっているではありませんか。それに、シャルルの成長だって見守れますし。ね、シャルル」
「そうだな…これからは家族4人で、力を合わせてより良い国にしていこう」
お父様が微笑んでくれた。お母様も笑っている。シャルルも…そう思ったのだが…
「ホンギャーーー」
大きな声で泣き出してしまった。
「あぁ、シャルル。どうしたんだい?お父様だよ」
「シャルル、お姉様よ。どうしたの?」
お父様と一緒に、必死にあやすが、泣き声は大きくなるばかり。
「きっとお腹が空いたのですわ。さあ、シャルル、こっちにいらっしゃい」
お母様がスタンバイして待っている。お父様が慌ててシャルルをお母様に渡す。小さいのに、もう一生懸命飲んでいるのね。凄いわ。
シャルルはお腹いっぱいになって満足したのか、そのまま眠ってしまった。
「寝顔も可愛いわね。なんだか私も眠くなってきたわ」
夜中にたたき起こされ、寝不足なのだ。
「オリビアも眠そうだね。私が部屋まで送ってあげよう。シャリーも出産で疲れているだろう。少し休むといい。さあ、オリビア。おいで」
お父様に連れられ、部屋に戻ってきた。そして、ベッドに横になる。
「おやすみ、オリビア」
私のおでこに口づけをして、去っていくお父様。それにしても、シャルル、とても可愛かったわ。早速レオナルド様にも伝えないとね。
やっぱりかなり眠かったのか、あっという間に眠ってしまった。
翌日、早速レオナルド様に伝えたら、喜んでくれた。ただ…
「これで王家も安泰だね。オリビアも心置きなく、お嫁に行けるし、本当によかったね」
そう言ってほほ笑んでいた。お嫁か…まさかレオナルド様からそんな言葉が出るなんて。
本当はレオナルド様にもシャルルをすぐに会わせたかったのだが、生憎お母様の部屋にいるシャルル。私もお父様と一緒じゃないと、会う事が出来ないのだ。もちろん、メイドを含め、一部の人間しか入れない。
お父様曰く、シャルルに変な病気が移ったら大変との事。既に過保護っぷり全開だ。
ちなみにお母様の部屋の様子を、レオナルド様に話した。最初は引かれるかと思ったが、興味津々で色々と聞いてくる。どうやらお母様の監禁部屋に興味がある様だ。
あまりにも意外だったので
「レオナルド様が監禁部屋に興味があるなんて、意外ですわ」
そう伝えた。すると
「そうかい?僕はずっと現王妃様の部屋に興味があったのだよ。オリビアから部屋の様子が聞けて良かった。今後の参考にさせてもらうよ」
そう言って、ほほ笑んでいた。もしかして、レオナルド様も実はお父様と同じタイプなのかしら?う~ん、レオナルド様が令嬢を監禁…あまり想像が出来ないわ。
そしてシャルルだが、日に日に可愛くなっていく。最初は寝てばかりだったが、最近では笑う様になった。それに「アウ~、アウ~」と、おしゃべりもしている。
完全にノックアウトされた私とお父様は、よくシャルルの取り合いをしている。
そしてシャルルが生後3ヶ月を迎えた頃、正式に貴族や民にお披露目をした。さらに、王太子就任式も行われた。シャルルったら、式典の間、ずっといい子にしていた。さすが私の弟ね。
可愛い可愛いシャルル、これからもお姉様があなたを守ってあげるからね。小さなシャルルを見つめながら、ついそんな事を考えてしまったのだった。




