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第26話:弟が生まれました

「さあ、オリビア、シャリーもそろそろお昼にしよう。オリビアは私が食べさせてあげるからね。レオナルドとも食べさせ合いをしていただろう…あの男、本当に油断も隙も無い」


どうやらお父様は、レオナルド様に嫉妬している様だ。その姿が、なんだかおかしい。


その時だった。


お母様が急にうずくまり出したのだ。


「シャリー、どうしたんだい?」


「お母様、大丈夫?」


「ええ…大丈夫よ。実は少し前からお腹が痛かったのだけれど…今破水してしまったみたい…」


「何だって!どうしてすぐに言わないんだ。とにかく、すぐに部屋に戻ろう。今すぐ医者を呼んでくれ」


お父様がお母様を抱きかかえると、速足で屋敷に戻っていく。もちろん、私も付いて行く。いよいよ弟が生まれるのね。なんだかドキドキしてきたわ。


そういえば、お父様とお母様の夫婦の寝室って、初めて入るわ。一体どんな所なのかしら?ドキドキしながらお父様に付いて行く。


すると、王宮の奥の細い通路を通って行く。その途中、頑丈の鍵が付いた扉が。もしかして、この扉の奥が夫婦の寝室なのかしら?そう思ったが、どうやら違う様だ。扉を抜けると、さらに廊下があり、その奥に扉が2つある。


1つは普通の扉だが、もう1つは、頑丈な南京錠が付いている。もしかして、ここがお母様のお部屋なのかしら?


そう思いつつ、鍵が付いている方の部屋に入って行くお父様。案の定、ここがお母様の部屋の様だ。すぐにベッドにお母様を寝かせるお父様。メイドたちが慌ただしく動き回っている。


お母様はまだ余裕な様だが、お父様は心配でたまらない様だ。せっかくなので、お母様の部屋を見学させてもらう事にした。


私と同じく広い部屋だが、窓には鉄格子が付けられている。凄いわ、きっと窓から逃げられないようにする為ね。それに、鎖も置いてあるし。きっとこの鎖に縛り付けて、監禁していたのだわ。


あら?この扉は何かしら?


ここにも鍵が付いている。どうやら開いている様だ。ゆっくり開けると、そこは夫婦の寝室になっていた。大きな部屋に、これまた大きなベッドが置いてある。これはすごいわ!夫婦の寝室って、こんな感じなのね!


それにしても、あちこちに鍵が付いているのね。よほどお母様が逃げ出さないか、心配だったのだろう。お父様ったら。


やっぱり病んでしまった男の人って素敵よね。まさか、現実世界でそんな男性に会えるだなんて。それも自分の父親が!


再びお母様の部屋に戻る。せっかくなので、鎖を触ってみたり、鍵の作りを確認してみたり、鉄格子の付いた窓から外を覗いてみたりした。


ふと床を見てみると、1か所だけ不自然に切り取られたカーペットが。そっとめくってみると、地下に繋がる扉が!これはすごいわ。地下はどうなっているのかしら?扉に手を掛けようとした時だった。


「オリビア、あなたは一体何をしているの?」


後ろからお母様の声が飛んできた。ゆっくり振り向くと、お母様が怖い顔でこちらを見ていた。


「お母様、陣痛は…」


「今は落ち着ている時間よ。オリビア、さっきから色々と物色して。あなたは何を…イタタタタ」


「シャリー、大丈夫かい?」


「ええ…大丈夫よ。今落ち着いたわ。まだ生まれそうにないから、オリビアを一旦外に出してもらえるかしら。あの子が色々と物色しているのが気になって」


「わかったよ。さあ、オリビア。こっちにおいで。人の部屋を物色するなんて、いけない事だよ。さっき勝手に寝室にも入っていただろう」


「え…待って。私もお母様の傍にいたいです」


「ダメだ、生まれそうになったらまた呼んであげるから」


そう言うと、お父様に追い出されてしまった。もう、せっかくお母様の部屋を色々と見たかったのに。


仕方がないので、自室に戻って本を読む。お母様の部屋、本当に監禁部屋だったわね…この小説のヒロインもこんな部屋なのかしら?そう思ったら、ニヤニヤが止まらなくなった。


ふと外を見ると、薄暗くなってきた。お母様、もう生まれるかしら?再びお母様の部屋に向かおうとしたのだが、メイド達に追い返されてしまった。もう、私も弟が生まれる瞬間を見たいのに!


結局寝る時間になっても生まれそうにないとの事で、仕方なく布団に入って寝る事にした。


夜中

「殿下、起きて下さい。殿下!」


「う~ん…まだ眠いわ…」


まだ真っ暗じゃない。こんな時間に起こさないでよ。そう思い、布団をかぶる。


「殿下、弟君がもうすぐお生まれになるのですよ」


「え…弟」


そうだったわ。お母様が今、出産しているのだった。急いで飛び起き、お母様の部屋へと向かう。すると、苦しそうなお母様が。隣ではお父様も真っ青な顔をしてウロウロしている。


「お母様、大丈夫ですか?私はここにいますわ。頑張ってください!」


お母様の手を強く握り、必死で励ます。私の姿を見て、少し正気を取り戻したお父様も、私とは反対側の手を握り、お母様を励まし始めた。


どれくらい声を掛け続けただろう。日が登り始めた頃


「ホンギャーーー」


大きな産声が上がった。

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