第24話:4人で楽しい時間を過ごします
レオナルド様の方に走っていき、そのまま抱き着いた。どうしてレオナルド様がここにいるのかしら?でも、丘以外で会えるなんて、嬉しいわ。
「オリビアは相変わらず甘えん坊だね」
そう言って私の頭をレオナルド様が撫でてくれる。しまった、ついいつのも癖で、レオナルド様に抱き着いてしまったわ。今はお母様とお母様の友人も来ているのに。急いでレオナルド様から離れる。
「レオナルド様、どうしてここにいるの?」
「ああ…実はね」
「あらあら、レオナルドとオリビアちゃんはお友達だと聞いていたけれど、随分と仲がいいのね。シャリー、この子は私の息子よ。少し前から、オリビアちゃんと仲良くしてもらっているみたいなの。今日もシャリーに会いに行くと言ったら、“僕も一緒に行く”と聞かなくてね。仕方なく連れて来たの。オーフェン様に見つかったら大変だから、周りを気にしながら来たのよ」
なんと!お母様の友人は、レオナルド様のお母様だったのね。という事は、ミシュラーノ公爵夫人か。だからなんだか見た事がある様な気がしたのね。レオナルド様は、お母様によく似ているわ。
「まあ、あなたがレオナルド様ね。あなたにも随分と辛い思いをさせてしまったわね。ごめんなさい。それから、オリビアと仲良くしてくれてありがとう。あなたのお陰で、オリビアは私がいなくても寂しくなったみたい」
お母様がレオナルド様に話しかけた。
「あなたがシャリー王妃様ですね…正直言うと、あなたを恨んだ時もありました。でも今は、オリビアを産んでくれてありがとうございます。僕にとってオリビアは、とても大切な人なので…」
頬を赤らめながら、そう言ったレオナルド様。お母様とレオナルド様のお母様が、目を見合わせている。
「私もレオナルド様に会えてよかったわ。これからもずっと一緒よね」
レオナルド様に向かって笑顔で伝えた。
「これは確かに、オーフェン様が知ったら発狂しそうね。でも…私はオリビアがあなたの家に嫁ぐの事は賛成よ。そういえば昔話していたわよね。私達に子供が生まれたら、お互いの子供を結婚させようって」
「そうね、そんな話もしたわよね。懐かしいわ…私も、オリビアちゃんがレオナルドのお嫁さんになってくれたら嬉しいわ。オリビアちゃん、今度家に遊びにいらっしゃい…て、オーフェン様がまだ外出を禁止しているのだったわね。いつまでオリビアちゃんを縛り付けるつもりかしら…」
「そうね…私からも話はしてみるわ。さあ、せっかくセリーヌとレオナルド様が来てくれたのだもの。ゆっくり話をしましょう。これ、昨日私とオリビアが作ったケーキよ。早速食べましょう」
お母様に促され、ソファーに座った。隣にはもちろん、レオナルド様が座る。
「レオナルド、お母様の隣の席も空いているわよ」
そう言ってレオナルド様のお母様が声を掛けている。
「僕はここでいいよ。オリビアの隣がいいんだ。さあ、オリビア。一緒にケーキを食べよう。このケーキ、君が作ったのだよね。楽しみだな」
「ええ、そうよ。それより、どうして今日来ることを言ってくれなかったの?もし言ってくれたら、レオナルド様の好きなジャムの乗ったクッキーを作ったのに」
「ごめんね、僕も今日急遽母上に聞かされたんだよ。それにしても、オリビアは僕の顔を見ると、本当に嬉しそうに飛んでくるね」
「だって、嬉しいのですもの。私、中々外部の人と触れ合う事がないでしょう」
唯一の友人、レオナルド様。彼の姿を見ると、つい嬉しくて飛びついてしまうのだ。
「さあ、オリビア、ケーキを食べよう。君が作ってくれたケーキは、格別に美味しいからね」
そう言うと、嬉しそうにケーキを頬張るレオナルド様。
「このケーキ、とても美味しいね。苺とブルーベリーがクリームとよく合うよ」
「ありがとう、レオナルド様。でも、山で取って来た木の実のケーキもとっても美味しいのよ。そうだわ、確か王宮には山があったわよね。そこに行って、木の実を取りに行くわ。そうすれば、木の実のケーキをレオナルド様にも食べさせてあげられるものね」
まだ一度も言った事がないと言うか、私が山に入ろうとするとなぜか護衛騎士たちに止められるが、今度何とか騎士たちを説得して木の実を取りに行こう。そう思ったのだが…
「あそこは野生の動物もいるから危険だよ。オリビアが行くなら、僕も付いて行くから。いいかい、絶対に1人で行ってはダメだよ。わかったね、約束だからね」
真剣な表情で訴えてくるレオナルド様。どうやら私の事を心配してくれている様だ。
「わかったわ。レオナルド様は本当に心配性ね。あら?また頬にクリームが付いているわよ」
すかさずレオナルド様の頬に付いていたクリームを取ってあげた。
「ありがとう。オリビアの頬にも付いているよ」
そう言うとレオナルド様は、私の頬に付いているクリームを手で取り、そのまま舐めたのだ。いつもマナーにうるさいレオナルド様が、珍しいわね。
「あらあら、レオナルドとオリビアちゃんは、随分と仲が良いのね。それに、レオナルドのそんな嬉しそうな顔、初めて見たわ」
そう言ってレオナルド様のお母様が笑っている。
「本当ね、2人は随分と仲が良いのね。この分じゃあ、やっぱりオリビアはセリーヌの家に取られてしまいそうね。レオナルド様、どうかオリビアの事、よろしくね」
そう言ってお母様まで笑っている。
もう、好き勝手な事を言って!それに私たちはただの友達なのに!そう言おうとしたのだが…
「もちろんです、王妃様。僕とオリビアは、ずっと一緒ですから。そう、ずっとね…」
そう言うと、レオナルド様がにっこりと笑った。
「レオナルド、あなたって子は…」
なぜかレオナルド様のお母様が苦笑いしている。
「レックス様はそんなに嫉妬深くなかったのにね。あっ、もしかして隔世遺伝かしら?」
そう言ってお母様が笑っている。一体どういう意味かしら?コテンと首をかしげる私に対し、レオナルド様は
「オリビアは気にしなくてもいいよ。さあ、残りのケーキを食べよう。そうだ、僕が食べさせてあげるよ。はい、アーンして」
そう言って私の口にケーキを入れたレオナルド様。それならと私もレオナルド様に食べさせてあげた。そう、2人の母親の生暖かい視線にも気づかず、お互い食べさせ合い続けたのだった。
 




