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第19話:オリビアは不思議な子です~レオナルド視点~

そんな僕に、さらにオリビアが話を続ける。


「ねえ、知っている?私のお父様、とても嫉妬深いそうなの。これはね、私の推測なのだけれど、お父様はお母様が自分の元を去ってしまって、完全に病んでしまったの。それで、お母様を閉じ込めているのではないかと思うのよね。嫉妬に狂った男は、何をするか分からないじゃない!」


なぜか嬉しそうにそう言ったのだ。この子はなにを言っているんだ?自分の母親が父親の嫉妬によって、閉じ込められているんだぞ。それなのに、なんで嬉しそうに話すんだ?全く理解できない。


そんな思いから、オリビアに聞いた。すると


「あら、だって素敵じゃない。私ね、恋愛小説が好きで、よくそういう嫉妬深い男のお話を読んでいるの。まさか身近に小説のヒーローみたいな男性がいるなんて、夢みたいだと思わない?きっとお父様は、お母様が好きで好きでたまらないのね。私は9年もお母様を独り占めにしていたのだから、少しはお父様に譲ってあげてもいいかなって、最近は思う様にしているの」


そう言って、どうだ、私は大人だろう!と言わんばかりの、得意そうな顔をしている。この子、少し…いや、だいぶ変わっているな。嫉妬深い男が好きだなんて。その上、父親に母親を譲ってあげるだなんて…


でも…


得意げな顔をしているオリビアを見たら、なんだか笑いがこみ上げてきて、声をあげて笑った。こんな風に笑ったのは、いつぶりだろう。


そんな僕に、キョトンとした表情のオリビア。この子、本当に不思議な子だな。そんな話をしていると、騎士が下からもう戻る様にと声を掛けてきた。


もっとオリビアと一緒にいたいな…そう思っていると、オリビアが


「もう戻らないといけないのね。まだまだ話したりないわ。レオナルド様、また王宮に遊びに来てくれるかしら?」


少し不安げな顔をして、僕を見ながらそう言ったのだ。その顔が可愛くて、一気に心臓の音がうるさくなる。一体どうしたんだ、僕の心臓は!とにかく、オリビアに僕が動揺している事を知られたくなくて、冷静を装いながら了承した。


そして、先に木から降りる。オリビアもゆっくりと木から降りてくる。そんなオリビアを支えるふりをして、どさくさに紛れて抱きしめた。オリビアの体は、柔らかくて温かい。それに僕より一回り小さい。そんな僕に対して


「私は1人で降りられるわ。木登りは得意なのだから」


そう言って怒っている。そんなオリビアがまた可愛くて、つい口うるさい事を言ってしまった。すると、途端に頬を膨らませて抗議をする。本当にこの子、見ていて飽きないな…


明日の午後もここで待ち合わせをして、別れようとした時だった。あろう事か、オリビアが僕の頬に口づけをしたのだ。柔らかい感触が、頬に感じる。一気に顔が赤くなるのが、自分でも分かった。


さすがにオリビアに文句を言うと、いつも父親にしているから癖でしてしまったと、舌をぺろりと出しておどけている。全く反省している様には見えない。


そもそも、国王にも口づけをしているのか。そう思ったら、なんだか腹ただしくなってしまい、つい、自分以外の男性に口づけをしないで欲しいと伝えていた。


伝えた瞬間、しまったと思ったが、もう遅い。それでも素直なオリビアは、極力しない様にすると約束して、走って去って行った。


本当にオリビアは、不思議な子だな…そう思っていると


「レオナルド、ここにいたのだな。さあ、帰ろう」


父上が呼びに来たのだ。もしかして父上にオリビアと一緒にいるところを、見られてしまったか?そう思ったが、父上は何も言わずに馬車に乗り込んだので、バレていない様だ。よかった。そう思ったのだが…


「レオナルド、随分とオリビア殿下と仲良くなったみたいだね。もしかして、オリビア殿下の事、好きになったのかい?」


馬車に乗った瞬間、ニヤリと笑ってそう言った父上。完全にバレていた様だ。


「ぼ…僕は彼女の事なんて、何とも思っていませんよ。ただ…オリビアが僕と一緒にいたいと言うから、傍にいてあげただけです」


「そうか。それにしても、顔が真っ赤だぞ。まあ、令嬢に口づけをされたら、顔も赤くなるよな。それにしても、オリビア殿下は予想以上に元気な子だね。まさか木登りをしているなんて」


父上がクスクス笑っている。どうやら盗み見をしていた様だ。


「父上、盗み見をするなんて、はしたないですよ!」


「すまない。それにしても、レオナルドがオリビア殿下をね。普通に話してくれたらいいと思っていたが、まさかレオナルドが」


ん?普通に話しをしてくれたらいいと思っていた?そういえば、僕をさりげなく丘に誘導したのは、父上だったな。もしかして!


「父上!もしかして、僕をわざとオリビアがいる丘に行かせたのですか?」


「まあ…そうだな。ほら、お前は少し大人びていると言うか、いつもつまらなさそうな顔をしていただろう。だから、オリビア殿下に会えば、少しはレオナルドも楽しそうな顔をしてくれると思ったんだよ。でも、まさかオリビア殿下に惚れるとは」


「僕はオリビアに惚れていません!」


本当に父上は、僕をからかうなんて!


「ごめんごめん、そう怒るな。でも、いつも何か諦めている様な顔をしていたレオナルドが、こんなに感情的になるなんて。私は嬉しいぞ。明日もオリビア殿下に会うのだろう。私に任せなさい。しっかりセッティングしてあげるから。あ…でも問題はあいつだな…しばらくは陛下にバレない様にしないと。あいつ、無駄に嫉妬深いからな…」


何やら父上が、訳の分からない事を言っている。僕は別に、オリビアの事を好きとかそんなんじゃないのに!

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