表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/82

第16話:あの女のせいで【後編】~レオナルド視点~

おっといけない、こんなところで国王を観察している場合じゃない。急いで部屋に戻ると、父上が既に戻って来ていた。


「レオナルド、バルコニーに出ていたのかい?」


「ええ、王宮から見た外の景色が見たくて。ずっと外を見ていました」


父上たちの会話を盗み聞きしたことがバレては大変だ。極力冷静を装い、父上に伝えた。


「そうか…さあ、こっちにおいで。王宮を案内してあげよう」


父上に連れられ、王宮内を隅々まで案内してもらった。正直、王宮なんかに興味がない。それでも父上と一緒にいられる時間は、僕にとってかけがえのないものだ。でも…


父上はきっと、また近いうちにシャリーとかいう女を探すため、国を出るだろう。そう思ったら、何とも言えない気持ちになった。


家に帰り、久しぶりに3人で食事をした。食後は湯あみをし、ベッドに入る。でも…なんだか眠れない。少し体を動かすか。


そう思い、部屋から出て訓練場に向かおうと思った時だった。父上と母上の話し声が聞こえてきたのだ。


「それで、シャリーはまだ見つからないのですか?」


「ああ…手がかりもない。とにかく、もう少し範囲を広げて探そうと思っている。オーフェンも相当答えている様で、目が死んでいた」


「そりゃそうですわ。オーフェン様は、誰よりもシャリーを愛しているのですもの。シャリーだって、オーフェン様の気持ちを知っているはずなのに…どうして…ねえ、あなた。シャリーは生きているわよね。あの子、侯爵家でずっと育ったのよ。私達はドレスすら1人で着られないのに…シャリー…どうか無事でいて…」


そう呟くと、母上が泣き出してしまった。


「君の為にも、なんとかシャリー嬢を見つけ出すから、安心して欲しい。明日にでも、すぐにこの国を出るよ。セリーヌ、親友がいなくなって辛いのはわかるが、どうかレオナルドの事を、もう少し見てやって欲しい」


「私はレオナルドの事をしっかり見ているわ。あの子、とても優秀で大人びているから、大丈夫よ」


「大人びていると言っても、あの子はまだ7歳だぞ。ただでさえ父親が傍にいないんだ。母親の君が、もっとレオナルドを見てあげないと」


「分かっているわ…」


どうやら父上は、僕の事を気に掛けてくれている様だ。そしてシャリーという女は、母上の親友だった女で、侯爵令嬢だとわかった。


再び部屋に戻り、ベッドに腰を下ろした。そもそも、なぜ侯爵令嬢でもあるシャリーという女は、出て行ったのだろう…そのせいで、父上はずっと家にいないし、母上はその女の事ばかり心配して、僕の事を見てもくれない…


あの女さえ国を出なければ…

この日から僕は、シャリーという女を憎む様になった。あの女は、僕の家族を滅茶苦茶にした。絶対に許さない!


それにしても国王は、どうしてそんな女に執着するのだろう。

女なんて、どれも同じだ。僕は正直女になんて興味がない。それでも僕は、公爵令息だ。公爵家の為に、家柄の良い女を適当に嫁に貰い、世継ぎを産んでもらう。それが僕の仕事だ。


愛だの恋だのほど、くだらない事はない。現に国王は、シャリーとかいう女を愛したばかりに、あんなにもつらい思いをしている。いくら優秀でも女に溺れるなんて、愚かな人間がする事だ。


あの国王みたいには絶対になるものか!そう心に誓ったのだった。


そして月日は流れ、僕は9歳になった。相変わらず父上は家に帰ってこず、母上は上の空。この頃になると、僕はもう両親の愛情なんてどうでもよくなっていた。そう、僕はもう諦めたのだ。


父上も母上も国王も、ずっとシャリーという女に振りまわされればいいとさえ、考えている。そんな中、父上が血相を変えて帰って来たのだ。


「セリーヌ、シャリー嬢が見つかったぞ!!」


「シャリーが!あなた、それは本当ですか?それで、シャリーは無事なのですか?」


「ああ、エレフセリア王国の小さな村で、ひっそりと暮らしていた。娘が1人いるのだが、どうやらオーフェンの子の様なんだ。銀色の髪に赤い瞳をしていたから、間違いないだろう」


「まあ、それじゃあシャリーは、お腹に子供がいるうえで、国を出たの?きっと相当苦労したのでしょうね。ねえ、あなた、オーフェン様はこの事を知っているの?」


「いや、これから報告しに行くところだ。シャリー嬢が見つかったと聞いたら、きっとすぐにエレフセリア王国に行くと言い出すだろうからね。私も王宮に向かい次第、すぐにエレフセリア王国に向かう予定だ。向こうの国王陛下にも、あらかじめ連絡は入れてある。とにかく、準備を整えてからオーフェンに報告しないといけないと思ったんだ」


「そうだったの。あなた、一番に教えてくれてありがとう。シャリーが生きている…それも子供までいるなんて…あぁ、早く会いたいわ」


涙を流して喜ぶ母上。


アホらしい…


そう思い、僕はそのまま自室へと戻ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ