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第1話:他国の国王がやって来ました

「アリー、聞いて。このお話、本当に素敵なのよ。貧乏だった主人公の女の子が、王子様と恋に落ちるの。そして苦難を乗り越えて、ついに王子様と結ばれるのよ。素敵でしょう」


うっとりとした顔で、友達のアリーに話しかける。


「あなた、またそんな小説を読んで。そんな文字ばっかりの本、どこが面白いのだか…」


はぁ~とため息を付くアリー。


「あら、最高に面白いわよ。特にこの王子様が、主人公でもある女の子に執着していくシーン。最後には女の子をお城の一室に閉じ込めちゃったのよ。よほど女の子を愛していたのね。素敵だわ…」


「ちょっと…お城の一室に閉じ込めたって、それ、ただの変態じゃない…あなた、本当に変わっているわね…それに小説なんて、大人が読むものよ」


アリーがまたため息を付いている。


「あら、小説を大人しか読んではいけないなんて、誰が決めたの?あぁ、私にも素敵な王子様が現れないかしら?私だけを愛してくれる王子様が…」


「こんな小さな村の平民の元に現れる王子様なんていないわよ…それよりオリビア、もうそろそろ日が暮れるわよ。帰りましょう」


「ええ、そうね。それじゃあ、また明日ね」


アリーと別れ、家へと向かう。


私の名前は、オリビア、9歳。エレフセリア王国の小さな村で、お母様と2人で暮らしている。物心ついた時から、お父様はいない。お母様曰く、私がお腹にいた時に、病気で亡くなったらしい。


そんな私は、恋愛小説が大好きなのだ。特に男性が女性に執着し、病んでいく姿を見るとドキドキするのだ。でも、友達たちは私の気持ちをわかってくれない。それどころか“オリビアは変わっているわね”という。そして大人たちは“そんな小説を子供が見るものではないわ”と、怒るのだ。


どうして9歳だと、恋愛小説を読んではいけないのかしら?こんなにも面白いのに。


そんな事を考えている間に、家に着いた。


「ただいまかえりました、お母様」


「おかえりなさい、オリビア。お腹が空いたでしょう。さあ、ご飯にしましょう」


いつも笑顔で出迎えてくれるお母様。手を洗い、急いでイスに座った。ちなみにお母様は、とても美しいらしい。その為、村の男たちがお母様に振り向いて欲しくて、必死にアプローチをしている。私に取り入ろうとする若者もいるくらい、人気が高いのだ。


でも、お母様は誰とも再婚をしないらしい。私がいてくれたら、それでいいんだって。それに、今でも亡くなった私のお父様を愛しているらしい。お母様って、一途なのね。


「オリビア、それで今日は何をしていたの?」


「今日はアリーと一緒に、図書館に行っていたわ」


「また恋愛小説を読んでいたの?あなたはまだ9歳なのよ。もっと子供らしく生きなさい」


はぁ~とため息を付くお母様。もう、お母様までそんな事を言うのだから。


「そうは言っても、子供らしくとは、どうすればいいの?私は恋愛小説が好きなのよ。ねえ、お母様、知ってる?貴族の家にはね、メイドや執事がいるのよ。立派なドレスを着て、立派な馬車で移動するの。それに、立派なお屋敷に住んでいるのですって。素敵だと思わない?」


「…そうね…でも、貴族は色々と窮屈よ。お母様は平民の方が、自由でいいと思うわ」


「そうかしら?私も貴族に生まれたかったな。そうしたら今頃、私の事をメイドたちが“オリビアお嬢様”なんて呼んでいたのよ。それに、毎日ご馳走が食べられただろうし」


「…そう…でもね、オリビア。貴族の世界も色々と大変なのよ。さあ、変な妄想ばかり話していないで、早く食べなさい。せっかくのお料理が、冷めてしまうわよ。それから、小説ばかり読んでいないで、お勉強もしないとね。後でお母様が見てあげるわ」


「あら、大丈夫よ。お母様が教えてくれた事は、全てマスターしたし。でも、こんな小さな村に、マナーや勉学なんて、必要なのかしら?」


なぜかお母様は、私に子供の頃からマナーや勉学を徹底的に叩き込んだのだ。正直こんな田舎の村で生きていくうえで、マナーや勉学が役に立つとは思わないのだが…


その時だった。


コンコンとドアを叩く音が聞こえる。


「こんな時間に、一体誰かしら?」


お母様が不思議そうに首をかしげている。


「お隣のマーサおば様じゃない?またいつもの様に、調味料を貸して~て、泣きついてくるのよ。あの人、本当に抜けているから」


「こら、オリビア。そんな風に言ってはいけないわ」


私に怒りつつ、お母様が玄関の方に向かって歩いて行った。さあ、私は食事の続きをしないとね。そう思ったのだが…



「シャリー、やっと見つけた!もう離さないよ!」


「どうしてあなた様がこちらに…」


ん?今男性の声がしたような…もしかしてお母様を狙う男どもが、押しかけてきたのかしら?気になって玄関の方に向かう。すると、銀色の髪に赤い瞳をした美しい男性が、お母様に抱き着いていた。


その後ろには、騎士様の格好をした男性も大勢いる。一体何があったの?あの人は一体誰?


何が何だか分からないが、パッと見た感じあの銀色の髪の男の人、王子様みたいだわ…もしかして、王子様がお母様を迎えに来たのかしら?

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