竜帝の花嫁 誰にも愛されずに死んだと思ってたのに、生まれ変わったら溺愛されてました
文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。
シーディーは五人兄妹の末っ子だった。両親は貧しかったため、五人目を望んでいなかった。そんなときに母親はシーディーを身籠った。シーディーは両親にとっていらない子供だった。
シーディーが十二になったころ、口減らしでシーディーは大きな屋敷へ奉公へだされた。
それでもシーディーは自分の運命を呪うことなく、奉公先でも必死に働いた。
その屋敷で働くようになり数年過ぎ、その屋敷に気まぐれで竜帝が訪れた。
竜帝はドラゴンの一族で、長命でこの世界のトップに君臨していた。シーディーのような奉公人は、一生目にする機会もない人物だった。
竜帝は黒髪で金の瞳、端正な顔立ちでシーディーは一目見ただけで魅了された。
するとなんの気まぐれか、竜帝の目にシーディーが止まった。竜帝はシーディーを指差すと微笑み言った。
「あの者を私の褥へ」
信じられないことにシーディーは竜帝の寵姫となった。
「シーディー、お前は何も考えずに私に抱かれていれば良い」
シーディーは竜帝のその言葉に従い、毎日竜帝が来ることだけを待つ日々を送った。シーディーは竜帝を心から愛した。
今まで生きてきて、自分を求めてくれた人などただの一人もいなかったからだ。
竜帝には何人もの寵姫がいたが、シーディーはそんなことはどうでも良かった。
時折、自分を思い出し通ってくれればいい。私の存在意義はそれだけしかない、そう思った。
ある日、自分の体調に変化があることに気づいた。シーディーはそれを無視し、隠して過ごしていたが侍医に見抜かれてしまった。
「シーディー様、このまま治療を怠れば命に関わります」
そう言われたが、ちょうどそのころ竜帝の婚約が決まりそうな時期だったため、シーディーはそれを神の采配だととらえた。
「治療は必要ありません。これは竜帝のご意志でもあります」
そう言って治療を断った。竜帝もシーディーに飽きたのか、シーディーの元に来る回数が減っていた。
弱っている姿を見せてはいけなかったので、シーディーは安堵した。
そうしていよいよとなったとき、シーディーは竜帝に追い出される前に竜帝のもとを去った。
行く場所もなかったが、昔一度だけ竜帝に連れていってもらった、思い出の丘へ向かった。
そこに着くと、静かに体を横たえた。見上げると降りそうなほどの星空が見えた。
シーディーは星をつかもうと手を伸ばした。伸ばされた手はむなしく空をつかんだ。
私はずっと届かない星をつかもうとして手を伸ばしていたんだわ、つかめるはずもないのに。そう思いながら静かに眼を閉じた。
「シーディー、もう手伝いはいいから、お昼ご飯にしましょう」
母親に声をかけられ、シーディーは笑顔で応じた。
シーディーはあの思い出の丘の上で人生を閉じた。だが、その後記憶を持ったまま生まれ変わっていた。
今は片田舎で貧しくともシーディーを愛してくれる両親の元、穏やかに過ごしていた。
ある日、竜帝がこの村に来ることがわかった。シーディーの心は激しく揺さぶられる。
大丈夫、私はもう関係ない。私は大丈夫。そう自分に言い聞かせた。
それでも、竜帝に関わることのないように細心の注意をはらった。
村長の屋敷で竜帝をおもてなしするとのことだったので、近づかないようにした。
「シーディー、もう水瓶に水がないみたい」
母親にそう言われたシーディーは、水を汲みに外に出た。
わき水のある場所は、村長の屋敷とは反対方向なので問題なかった。
沢に降り、水を汲むため屈むと横からその手を捕まれる。シーディーは慌てて見上げる。
そこには竜帝がいた。
シーディーは慌ててそこに土下座する。
「いらっしゃるとは知りませんでした。申し訳ございません」
竜帝はそんなシーディーを無理やり立たせる。
「シーディーか?」
「はい、シーディーと申します」
すると竜帝はシーディーの両肩を掴む。
「そうではない、お前は私のシーディーか?」
シーディーは、竜帝がシーディーが生まれ変わっているのを知っているのだと気づき咄嗟に答える。
「申し訳ございません、なんのことかわかりません、お許しください」
竜帝はきっと、寵姫であったあのシーディーだと気づいたら、同情し何かしらの温情をかけるに違いないと思った。
死んでなお、竜帝に迷惑をかけるわけにはいかなかった。
竜帝は、しばらくシーディーを見つめて言った。
「本当に私のシーディーではないのだな?」
「申し訳ありません、仰る意味がわかりません」
そう答えると竜帝は諦めたのか、シーディーを放した。
そうして無言で竜帝はシーディーに背を向けると歩きだした。
シーディーはその背中に一礼して言った。
「ユン様、お気をつけてお戻りください」
そう言って、シーディーも踵を返す。家で水を必要としているだろう両親が待っている。
それに一刻も早くこの場を去らなければ。
そう思った瞬間、後ろから思い切り抱きしめられる。
「やはり君は私のシーディーだったのだな」
シーディーはどうしてばれてしまったのかわからず、混乱する。
「君は知らなかったようだが、ユンと呼ぶのはシーディー、君だけだ。やっと会えた。丘の上で君の亡骸を見つけ、私は失意のどん底にいた。その後、君が生まれ変わったと星見のお告げがあってから今日まで、どれだけ君を探し求めてきたことか」
シーディーは驚いた。まさか竜帝が自分の亡骸を見つけているとは思いもしなかった。
竜帝は自分の方へシーディーを向かせる。
「君はなぜ、自分が必要のない人間だと思ったんだ。なぜ、病気だと言わなかった。なぜ、一人であんなところで……」
そう言うと、シーディーの前に両膝をつき涙をこぼしながらシーディーに抱きついた。
「愛してた。今でも愛してる。お願いだから私のそばにいてくれ」
シーディーは竜帝の頭を優しく撫でると言った。
「私はあのとき、それが最善だと思っていました。ユン様は私のことを愛してはいないのだと……」
竜帝は立ち上がり、シーディーを強く抱きしめる。そして、シーディーの顔を両手で挟み顔を近づける。
「君に出会ってから、君を愛さなかったことはない。ちゃんと伝えずに申し訳なかった。だが、私たちはまたこうして会うことができた。今度こそ君を一生大切にする。幸せにする、共に歩んでくれるね?」
「はい」
竜帝はシーディーに深く口づけると、思い切り抱きしめた。
その後、シーディーは両親と共に帝都に連れていかれ、盛大な式を挙げると文字通り死が二人を別つまで幸せにくらしたのだった。
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